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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ021

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 「…別に何を期待してるとか、そういうじゃないわよ」
 つくしの応答はよどみがなかった。
 その顔には、表情豊かな彼女にしてはなんの感情も浮かんでおらず、それが類の胸を苦しくさせる。
 彼女の笑顔が好きだった。
 たとえ自分ではなく、他の男を想って輝く笑顔であっても、それで彼女が幸せなら、類もそれで十分幸せだったのだ。
 それなのに…。
 「たださ、後悔だけはしたくないの」
 「後悔?」
 「うん、そんなのこの12年さんざんやりつくしたからさ」
 つくしにどんな後悔があったというのだろうか。
 魂と魂が繋がってると思えるほどの友情を育んできた二人だったけれど、時々、ひどく彼女が遠い時があった。
 夜空を見上げて溜息をつく彼女に。
 小柄な体に青あざをこさえても、懸命に走り続ける彼女の思いつめた横顔に。
 「…ね、結婚しよ?」
 「……は?」
 どういう脈絡だ。
 思いに沈もうとしていた彼女に、いきなりの類のプロポーズ。
 怪訝に顔を見上げれば、またも悪戯な目に出会うのかと思っていたのに、そこには柔らかい慈愛と切なさがある。
 「結婚しよう。牧野が…気が済むまで突っ走れたら」
 「類…」
 「司を守ってやりたいんでしょ?あの時の後悔を贖うために」
 贖い…。
 つくしには罪はなかった。
 けれど、愛する者を目の前で守ることも出来ず、逃げ出して類の言う『汚濁』の中に置き捨てきてしまった過去を想う。
 「やれるだけやりな。気が済むまで」
 「……うん」
 「それで傷ついても、俺が癒してあげる」 
 類の腕が、柔らかくつくしを囲う。
 いつでも彼がそうしてくれたように、優しい抱擁がつくしの体と心を包み込み、慰める。
 「だから…考えておいて」 
 「…でも、それは」 
 迷うつくしに、その言葉の先を押し留めようと、類は彼女の唇に羽のような優しいキスで塞いでしまう。
 淡い温もりに、つくしの頬に屈辱ではない…羞恥の朱が上り、唇を手で抑えて絶句する。
 「もう30才だよ?三条あたりが言うところの、女の花盛りは短いんだから、俺で我慢しておきなよ」
 「まだ、29才よ!」
 「そんなのすぐでしょ?」
 「もうっ!」
 「いてっ!」
 いきなり現実的な悪態に、つくしが類の背中を張り飛ばした。
 痛いと言いながら笑顔の類に、つくしまでもつられて笑う。
 こんな風に、この12年…いや、司が記憶を失う前からだから13年近くともに過ごしてきた。
 「考えておいてくれるね?」
 「……うん」
 類の真摯な眼差しに負け、つくしが小さく頷く。
 それに嬉しそうに笑って、類がもう一度つくしの唇にキスを落とす。
 「類ッ!!」
 「いいじゃん、約束のキス。あ、さっきのは消毒ね」





 類が外へ出た後の気まずい空気に、あきらが気を使い、新しい話題を提供する。
 「そういえば、福岡の○×建設の内紛の件だけど、あれ、結局社長の弟が後見になって17才の息子が跡取ることになったんだろ?」
 「あそこも複雑だよな。立派に成人した長男いるのに、未成年の三男かよ」
 総二郎も話に乗るが、黙り込んだ司のノリは当然悪い。
 横目で見ながら、だんだん機嫌取りも面倒になってくる。
 …なんで俺らが、いつもこいつらの尻拭いして機嫌とらなきゃなんねぇんだよ。
 そのうちアホらしくなって、勝手に黙らせておくことにした。
 「へえ?じゃあ、お前、あそこの奥方と不倫してたことあんのか」
 「昔だけどな。イイ女だったぜ」
 当然この二人が集まれば、女談義だ。
 けれど、それが佳境に差し掛かる前に、無言だった司が、突然前振りもなく席を立つ。
 「…おいっ、司、どこいくつもりだ」
 「便所」
 呼び止めた総二郎にチラッとだけ視線を移して、さっさと部屋を出る。
 「……まさか、あいつ類を追っていったわけじゃねぇだろうな」
 「ないんじゃね?あいつ、ホント、ずいぶん変わったよな」
 「大人になったってやつ?」
 『大人』…その言葉のなんと便利なことか。
 「たぶん、鉄の女や財閥的には、見事な成長ってやつなんだろうな」
 そういう総二郎の口調にはほろ苦いものが含まれている。
 「けど、あいつの目、昔よりひでぇな」
 「ああ、死んでる」 
 一時期、司の目が生き生きとして、輝く笑顔を浮かべていた時を知っているだけに遣る瀬無い。 
 「…あいつ、マジかな?」
 「牧野のことか?」
 「ああ、愛人なんて、冗談じゃねぇぞ」 
 類の威勢に度肝を抜かれて釘を刺すのを忘れていた。
 彼ら二人にとってもつくしは大切な友人だった。
 「ま、よしんば司のやつがよけいなチョッカイかけることがあっても、唯々諾々と言いなりになるような女じゃねぇだろ?」
 「…まあ、立場もあるから無理もしねぇとは思うしな」
 それにしては、司のつくしを見る目が気になった。
 かなりNYでも遊んでいたのは風聞で聞いている。
 けれど、誰にも入れ込まず、長続きせず。
 むしろ、今の婚約者と結婚まで秒読み段階だというのが驚きなくらいだった。
 「どちらにせよ、もう司はダメだ」
 「……」
 「昔のあいつじゃねぇ、牧野もわかってるといいんだが」
 ともに、つくしと司…そして類を想う。
 三人とも大切な友人だった。
 「…わかってるだろうよ。わかってて」
 その続きをあきらは言わない。
 そして総二郎もあきらが何を言いたいのかわかる気がした。
 「どちらにせよ、もうガキじゃねぇんだ。司の奴が無茶しだしたら、俺らが力を貸せばいい。類も黙ってやしねぇだろ」





 「チッ」
 唇の端に走った痛みに顔を顰める。
 おそらく類も本気で殴ったわけではないだろうが、油断していた。
 もちろん、わざと類を挑発して女にキスをした。
 類と女が交し合った、彼の知らない交流が無性にカンに触ったからだ。
 けれど、それで熱くなるほどあの類が真剣などとは、予想だにしていなかった。 
 先日、つくしに殴られたことを考えると、ここ数日で二回目だ。
 司に手を上げられる人間など、そうそういはしない。
 少年の日はそれでも殴り合うことなど日常茶飯事だったけれど、それでも顔を殴らせることなど滅多になかった。
 好みのタイプだとはいえ、女相手に入れ込むなど愚かしくて、司にとってありえざることだ。
 長年の親友の激情に蔑む気持ちさえ湧き上がる。
 …ま、あいつは静にも異様に執着していたような奴だからな。
 総二郎やあきらのような遊びならともかく、一人の女…それもあの程度の女に入れ込んで、今や道明寺財閥の実権を握る彼に歯向かうなど、どうかしているとしか思えなかった。
 ふと、通りかかった先、小さな声が聞こえる。
 「…結婚しよう」
 …こんなところで、プロポーズってか?
 呆れた気分で顔を向ける。
 「類…あの女」





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