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あの橋を渡って…8話完

あの橋を渡って…07

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 「あれ?牧野さん、そんな雑誌読むんだ?」
 ひょいっと覗き込んだ同僚が、興味津々に雑誌の表紙を覗き込む。
 なんとなくそれが疎ましくて、つくしは同僚に気がつかれないように席を立った。
 「あたし、そろそろ帰るね」
 「あ、うん。真柴君、営業二課でしょ?さっき会議してたから、もう少し時間かかるんじゃないの?」
 いつの間にかつくしと真柴の交際は公に知ることとなっていた。
 待っていたのは図星だったが、それを指摘されると困ってつくしは曖昧に首を傾げる。
 「…ん、別に待ち合わせしてるってわけじゃないし」
 「え~、牧野さん、待っててって、ねだられてたじゃない」
 別の同僚が通りすがりしなよけいなことを言って、みんなに囃し立てられる。
 社内恋愛は禁じられていなかった。
 それどころか、社員の半数は社内結婚だったから、認められれば社内は祝福モードで和やかで、彼女が知っている恋愛とはまるで真逆だった。
 …だからこそ、いまこの平和を乱したくはなかった。
 それなのに、通りかかった書店の雑誌を購入してしまったのは、衝動だったのだ。
 「ふぅん、その表紙の人ってF4の花沢類でしょ?王子様も結婚か~。いいなあ、相手の人」
 「ホント、ホント。でも、王子様に相応しいのはやっぱりお姫様なんだよね。いかにもお金持ちの御嬢様って感じ。上品で美人だよね」
 「…じゃ、帰るから」
 「あ、うん。またね、真柴君によろしく」
 口々に挨拶してくる同僚たちに、会釈と微笑みで返し、つくしは廊下の窓から暮れはじめた外の景色をぼんやりと見下ろした。





 営業二課を訪れると、やはり真柴はまだ会議中だった。
 つくしに気が付いた真柴の同僚たちに、次々と冷やかされてしまう。
 悪意はないものの、そんな冷やかしがわずかに煩わしい。
 真柴はそんなに時間はかからないはずだからと、あらかじめ頼んできていたが、とてもその場で真柴を待つ気持ちにはなれなかった。
 「あの、真柴君が戻ってきたら、牧野が先に帰ったって伝えてもらえますか?」
 「ええっ、待ってあげないの?」
 「ええ、まあ。無理に一緒に帰らなくても、明日もまた仕事で会えますし」
 つくしのドライな言い方に、相手が困った様に微笑み返す。
 「いやあ、牧野さんは淡泊なんだね」
 「…淡泊ですか?」
 思わぬことを言われ、ドキリと胸が音を立てた。
 「ま、真柴がかなり強引なアプロ―チしたっていうのは有名だしね」
 「……」
 「牧野さんって、恋愛体質って感じじゃないから、そういうふうにクールなのかな」
 クール。
 恋愛体質ではなのはそのとおりだったけれど、クールという形容詞はいままでのつくしからはもっとも遠い言葉だった。
 ツンデレや、意地っ張りだとはさんざん周囲にも言われてきたものだったけれど。
 それでも、…少しでも恋人と一緒にいたい。
 短い時間でも顔を見て、話しをしたい、そんなことを思った時も、過去にはもちろんあった。
 …あたし、真柴さんに冷たすぎるのかな。
 罪悪感がこみ上げる。
 真柴のことはもちろん好きだし、遊びで付き合うつもりなど毛頭ありはしなかった。
 けれど…。
 時々、真柴の好意が重たく、周囲の目に雁字搦めに囚われる錯覚が息苦しい。
 気が付けば、会社の門を抜け出していた。
 疎らに帰宅する社員たちの間をすり抜け、バス停留所へと足を運ぶ。
 「……」
 無言で通り過ぎかけて、彼に気が付いた。
 どうして、こんな近くに来るまで気が付くことができなかったのか、不思議なくらいに周囲の人々の注目を浴びて、なお平然と佇んでいる。
 「類」
 「…やっと来た。けっこう待たされたから、俺、疲れちゃった」
 薄闇に白く浮かび上がるような秀麗な美貌が、つくしの声に俯けていた顔を上げて、にっこりと微笑む。
 「って、なにしてるのよ、あんた、こんなところでいったい」
 何をしてる…と問いかけられ、手に持った本をつくしへと差出し、小首を傾げる様さえもが美しい。
 …じゃなくって。
 「いや、本読んでるのはわかってるわよ、そりゃ、あたしだってね。そうでなく、なんで、あんたがこんなところでガードレールなんかに腰を下ろしてるのかって、あたしは聞きたいのよ」
 「あんたを待ってた」
 「…何のために」
 肩から掛けた大振りのバッグの中の雑誌が急に重さを増したようで、肩が痛い。
 「ね、牧野、これから遊園地行かない?」
 「遊園地ぃ?」
 …いきなり何を言いだすんだ、いったい、こいつは~~。
 昔から、類はつくしには理解しがたかった。
 そして、類もつくしのことを『あんたって、変わってるね。変な女』と称した。
 互いが互いを理解できないことも多かったのに、それなのに心の奥底で繋がってるなんて不思議な感覚は、彼以外には誰にも感じたことがなかった。
 まるで…二つに分かれた魂の半身のように。
 「無理だよ。あたし、明日も会社だもん。あんただって、そうなんじゃないの?」
 むしろ、類の方が忙しいだろう。
 いつも寝てばかりいる印象の男だったが、常に激務に追われて、本来だったらこんなところで佇んでるような人間じゃないはずなのだ。
 「…バス乗るの?」
 「乗るよ。いつも、これに乗って帰ってるんだもん」
 ふと、これとは違うシチュエーションだったが、バス停には不似合の男の存在に、過去の一コマを思い出す。
 …橋を渡ったことがあった。
 目に見えない橋。
 向こう側が司や…類たちがいるつくしには馴染みのない世界。
 そして、境界のこちら側がつくしの本来の世界で。
 一度はその橋を渡って、恋に殉じようと足を踏み出したこともある。
 けれど…。
 夢は破れて、やはり今自分がいるのは境界のこちら側で。
 近くに見えても、類がいる場所とは遠く隔たっているのだろう。
 そして、その距離は永遠に縮まることが決してないに違いない。
 「…昔さ、司があんたが乗ったバスを追いかけて停めたことがあるんだって?」 
 なぜ、それを見ていなかったはずの、彼が言うのだろう。
 まるで、つくしが考えていたことを読み取ったかのように、今この時、彼女にそれを言う?
 「憶えてない?バスの話は司から聞いたんだけど」
 「…ああ」
 それはありえるだろう。
 何かと友人たちには筒抜けな男だった。
 総二郎のように口が軽いわけではないのに、気が置けない友人たちにはつくしとの交際をかなり詳細に報告していたらしい。
 …恥ずかしいつーの。
 けれど、つくしだとて優紀には話していたのだから、司のことを責められない。
 「あんたも…」
 「え?」
 「俺に何度か、橋の話をしてくれたよね」
 「……」
 「俺とあんたの間には、渡れない橋があるんだっけ?」
 「…類」 
 「俺はさ、司みたいなマネはできないよ。バスを追いかけて走るなんて俺のキャラじゃないもん」





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