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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ015

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 激しく物が割れる音に、つくしはハッと我に返った。
 溜息をつきつつ、床に散らばる司の衣類を拾い集めていた最中に、バスルームから聞こえる尋常ではない物音。
 平時だったら、他人の入っている洗面室を開けるのに躊躇しただろう。
 けれど、先ほど見た司の胴に巻かれた白い包帯が、赤い悪夢…そして現在の状況が、つくしの逡巡を忘れさせる。
 「道明寺ッ!?」
 開かないかと思ったのに鍵は開いていた。
 バンッ!!
 勢いよく開けた先、先ほどまでピンピンしていたはずの司が、蹲り、頭を抑えて呻いている。
 一瞬の既視感。
 けれど、立ち尽くしている場合ではないのは明らかだ。
 「ど、どうしたのっ!?」
 急いで駆け寄る。
 けれど、足元に散らばるビンの破片が要塞となって、つくしと司の間に立ちはだかっていた。
 おそらく司が倒れる時に薙ぎ倒したのだろう、コロンやら化粧水の瓶だったが、噎せるほどに臭いたち、その光景と共につくしに吐き気を催させる。
 けれど、今は苦しげな司を優先させるべきだった。
 注意深く足元の破片をよけて、司の体に手をかける。
 「ねえ、だ……ッ!?」
 瞬間…凄まじい怪力に引き寄せられ、床へと押し倒された。
 「あ…ッ、痛ッ」
 背中に走った衝撃と、突き刺さるような鋭い痛み、わずかに匂った血の臭いにつくしの体が強張り、顔を歪める。
 「何を…すっ」 
 だが、抗議の声は押し付けられた唇の中に呑み込まれた。
 熱い唇が押し当られ、まるで噛みつくようなキスに、つくしが目を見開く。
 「んぅ………うっ!!?」
 覆いかぶさってくる大きな体の重みが、足の間にねじ込まれた膝の強さが、そして何より貪り喰らうような唇の熱さが、つくしの抵抗を奪い、身動きを赦さない。
 仕草は乱暴なのに、食い殺されそうに息もつけないほどに貪ってくるキスが、縋りつくようで、切なくなる。
 けれど、抑えつけられた息苦しさに、つくしは抗議の声をあげようと口を開けた。
 とたん、司の舌が彼女の口内を侵略し、這い回り始める。
 濡れた舌先が、驚いて逃げ回るつくしの舌を捉えて、巻き付き、ヌルリと纏わりつく。
 「ん――ッ!!!んんんッ!!?」
 激しすぎる行為に驚きとショックで、身体を硬直させつつも、さすがに許容できず抵抗しようとするも、完全に抑え込まれた体は身動き一つできずに、ただ受け止めることしかできない。
 司から送り込まれる濃い煙草の味のする唾液と、自分の唾液が混じりあい…口内に溢れて、否応なく呑み込まされる。
 「ウッ…」
 それでも、呑み込み切れず溢れた唾液が唇の端から溢れて、頬を伝って、流れ落ちる感触につくしはゾクリと体を震わせた。
 やがてはほとんど物理的な酸欠によって、朦朧としてきたつくしから力が抜け抵抗を辞めると、口内奥深くに入り込んでいた司の舌が、柔らかく巻き付いていたつくしの舌を撫で、口蓋や歯列の隅々まで舐めさすり、ゆっくりと合わさった唇から離れてゆく。
 荒く息を吐き、目を瞑って体を小さく震わせるつくしの頭を撫でる仕草は優しくて、まるで時が甦ったかのようにつくしの目から熱い涙を溢れさせた。
 錯覚だ。
 錯覚だ、と。
 それは勘違いにすぎないとわかっているのに、彼女を愛してくれた司が戻ってきてくれたような錯覚に、つくしの胸に軋るような痛みと寂しさ…哀しみが襲ってきて、彼女の眦から流れ落ちた涙が、冷たい床にいくつもの水たまりを作る。
 現実を見よ…と、内なる声に叱咤され、瞼を上げると、不思議な色合いをした司の目に出くわし、また涙が溢れた。
 怪訝な顔はつくしの目に、不安そうで…ジッと見下ろす彼女の目の中に何かを探そうとしているようにさえ見える。
 12年前だったのなら…『思い出して…』と、うちなる想いを告げて縋りつけたかもしれなかった。
 けれど、12年。
 あまりにも長い月日がたった。
 時に、なんて遠くまで来たのだろう、…愛した男と隔たった時を過ごしてきたのだろうと振り返ることもあったけれど、つくしにはこれまで生きてきた過去の自分を否定することはできない。
 …これは過ぎ去った青春に対する郷愁なんだ。
 青春というにはあまりに苦く、濃すぎる時の連続だったのだが。
 そう思ったらなおさら苦しくなって、つくしはソッと眼を閉じる。
 再び溢れた涙が眦を伝った。
 そんな彼女に何を思ったのか、再び司の唇が降ってきて、薄く開いたつくしの中へと再び舌を潜り込ませる。
 先ほどの貪り喰らわれるようなキスが嘘のような、柔らかくゆったりとした優しい愛撫に、また涙が溢れて、もう抵抗する気になれない。
 今度はつくしの舌が司の口内へと招き入れられ、ゆっくりとしゃぶられ吸い付かれて、何度も角度を変えて唇を合わせ直さられるたびに、糸状になった唾液が互いの舌先を繋ぎ続づける。
 やがて…一瞬の激情が過ぎ去ると、司は侵入していたつくしの口内から退き、彼女の小刻みに震えている瞼と体の衝撃を落ち着かせるように、何度も彼女の上唇を柔らかく挟んで舐めたり、下唇を咬んで啄んだり、唇の端に小さくキスを落とす。
 野獣みたいな男だと言うのに、この男のキスは昔から優しかった。
 羽のような柔らかな愛撫に、つくしの体の緊張が緩んだのを感じたのか。
 休んでいた司の手が、ゆっくりとつくしの首筋や服の上から意図的な動きを始めて、ぼんやりとしていた彼女の理性が少しづつ蘇ってきた。
 …どんなに愛撫が優しかろうと、懐かしくても。
 いま彼女の目の前にいるのは、つくしが愛して彼女を愛してくれた男ではなかった。
 流されてしまいたい女の欲望と、司への哀切が混じりあって理性の警告を無視したがる本能を必死で抑え込む。
 つくしのシャツの襟ぐりを探っていた長い指先が、器用にボタンを外して素肌に侵入しようとしていたのを、とっさに掴み押し留める。
 もう受け入れられたものと、油断してつくしの拘束を緩めていた男の顔が怪訝に歪み、ムッとする。
 「…なんだよ」
 男の手を掴んだまま、つくしは肘で体をズラして上半身を起こす。
 その仕草で、背中にあたっていたガラス片が再び背に刺さったのだろうか。
 小さな痛みが、わずかに燻っていた欲望の名残を振り払って、我に返らせてくれた。
 「手を離して…」
 凍えるような冷たいつくしの声音に、司の顔が憮然と不機嫌になった。
 「…無粋な女だな」
 「無粋でもなんでも、あたしはあんたみたいな節操のない男とは違うの」
 「俺のキスでうっとりしてやがった癖にか?」
 「うっとりなんかしてないッ!」
 たとえ図星でも指摘されたくはなかった。
 カッと顔を赤らめたつくしに、司が嫌味な形に唇を歪めて楽しげに笑う。
 「意地張んなよ。本当は俺に抱かれたいんだろ?俺のをあの秘書が咥えてんのを見て、興奮したんじゃね?」





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