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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ016

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 バシッ。
 叩かれた頬を抑え、司が唇を抑えるとわずかに歯が触れた部分に血が滲んでいた。
 それを無表情に眺め、つくしへと視線を移してニヤリと嗤う。
 パンッ。
 おそらく手加減はしたのだろう。
 けれど大きな手で打たれた衝撃に、一瞬、世界がグラリと傾く。
 が…。
 ギッと睨み付けるつくしの意気地は砕けない。
 そんなつくしを見下ろす司の目は楽しそうだった。
 「俺に手を上げる奴なんて、お前が初めてだぜ」
 クツクツ嗤う男からは怒りは感じなかった。
 けれど、司の纏う昏い腐臭にも似た堕落の気配に、つくしは我知らず嫌悪で顔を顰める。 
 「……俺のものになれよ」
 「は?」
 だから、何を言いだしたのか、一瞬わからなかった。
 「俺の女になれって言ってんだよ、まさか意味わかんねぇとか言わねえよな」
 長い優美な指先が、自分が叩いて切れた彼女の唇の端の血を拭う。
 そのまま唇を辿っていた指先を口の中に押し込まれそうになり、つくしは噛み切ってやろうかと口を開ける。
 しかし、その思惑は読まれて、瞬時に引っ込めれてしまった。
 「怖ぇな」
 「…気安く触れないで」
 「お前にとっても悪くない話だと思うぜ?」
 人を人とも思わない言い草に、ムカつきが抑えられない。
 司の物言いの中には、自分が拒否されることなどまったく思いもしないのだろう傲慢さが透けて見えた。
 「どきなさいよ」
 体勢は悪かったが、場合によっては再び急所を狙ってねじ伏せるつもりでもいた。
 けれど、こちらを警戒してもいる司に勝てるものだろうか。
 また、その胴体を覆う白い包帯を見てしまっては、とてもじゃないが、そこへ向かって拳を振るうことなどつくしにはもうできそうになかった。
 …どうしよう、こいつに力じゃ勝てない。
 つくしは内心、司の動向に怯えながらも、視線は決して逸らさない。
 だが、力づくでどうこうするつもりはないのか、案に相違して司はあっさりと退く。
 ソロリ、ソロリと、司を警戒しながらも、なんとか立ち上がった。
 しかし身動きした際に、背中と床についた掌に鋭い痛みが走る。
 たぶん割れた瓶の破片でどこか切ったのだろう。
 大騒ぎするほどではなかったが、痛みに顔を顰めた。
 「…あんたも立ちなさいよ」
 迷ったものの、一応声をかける。
 「どこか、体調でも悪いの?」
 つくしへの狼藉を考えればそうは思えなかったが、それでもさきほどの司が床に蹲っていた姿を思えば、多少なりとも心配になる。
 そう思って観察してみれば、わずかに顔色も悪い気がした。
 元々血色が悪い司の顔が、なおのこと青白い気もする。
 …高校生の時はもっと健康的だったのに。
 結局何かにつけて、過去の彼を思いだし、比べられずにいられない自分に気が付き、つくしは苦笑した。
 泣き笑いのような変な顔で自分を見下ろす女を感慨もなく見つめて、けれど、一呼吸で司がなんなく立ち上がる。
 「…ちょっと、片頭痛だ」
 「片頭痛?」
 「ああ、たまに頭がカチ割れるほど痛むことがあって、…ここんとこそんな発作もなかったんだがな」
 「…そう」
 何か持病でも抱えてるのだろうか。
 もしそうなら、体調が落ち着いたら本人に…素直に答えないようなら後で西田にでも確認する必要があるだろう。
 「で、返事は?」
 「へ?」 
 うっかり申し出を忘れていたつくしが、虚をつかれて司をキョトンと見返した。
 洗面化粧台に寄りかかった男が、面白そうにつくしを見下ろす。
 25cm下にあるつむじの位置まで、好みであることを認識して、笑い出したくなった。
 …おもしれぇ。
 むしゃぶりつきたくなる。
 そんな自分の感覚さえもが興味深く、楽しい。
 別に特に造形的に美しいと言うわけでもない女なのに、この程度の容貌の女など司の周りには履いて捨てるほどにいた。
 それなのに、この女の何がそんな自分の琴線に触れて、欲しいと思うのか。
 そう…欲望。
 司の中で自分の欲求が確かな形を作る。
 舌先に触れる鉄の味さえも、よけいに原始的な彼の欲求を呼び覚まし、興奮させた。
 肉食獣の雄には、いわゆる狩猟本能がある。
 司には子孫繁栄などという本能は昔から希薄だったが、そうした嗜虐性は旺盛だった。
 目の前の獲物に喰らいつきたい。
 貪り、引き裂き、思うままに破壊したい。
 今まではその本能を仕事にぶつけてきた。
 女に感じる初めての欲望。
 そんな激しい欲望に潤ませた目が、つくしを誘惑しようと濃厚なフェロモンを放ちだす。
 あてられたつくしの喉が、ゴクリと音を立てて唾を嚥下する。
 魅入られはじめた彼女を目だけで引き留め、声音にも誘惑をのせた。
 「なんでも望みは叶えてやる」
 「…望み?」
 「そう。ドレスでも宝石でも、金でもなんでもだ」
 司の予想通りというか、あまりに意外性のない提案をつくしは鼻で笑う。
 いかにもバカ坊ちゃん、傲慢で愚かな盛りのついた犬の言いそうなことだと笑い飛ばしてやりたかった。
 けれど、胸の奥底に走った苦い痛みに言葉が出ない。
 こみ上げる何かに喉が詰まった。
 「…バカじゃないの」
 それでも絞り出した声は、つくしの本音だった。
 片眉を跳ね上げた司は、まだそれがつくしの本意だとは思っていないようだった。
 「じゃあ、地位か?名誉か」
 「だから、バカじゃないのって言ってるの。あたしをお金や地位で買える女だと思ってるならお門違いよ」
 「じゃあ、なんだよ?なんでも言え。俺に叶えられないものなんか、この世のどこにもねぇんだからな。素直になれ。俺の気が向いた時に相手をすれば、それだけで望みのものがなんでも手に入るだぜ?」
 「ぷっ」 
 あまりに自信満々に言い募られるので、つくしはおかしくなってしまった。
 …元々日本語が弱い奴だと思っていたけど。
 「頭悪すぎ」
 「ああ?」
 さすがに司の眉間に険が走り、声音が低くなる。
 「あんたなんかに、あたしの本当に欲しいものをくれることができるものかつーの」
 「なんだと?」
 「そもそも、あたしが何を欲しいか、あんたにわかるわけがない。…今のあんたがくれるものなんて何も欲しくない。あたしの望みは、あんたを無事に日本から送り出す、ただ、それだけ」






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