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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ012

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 「ま、俺は自分からコナかけたことなんかねぇけどよ」
 自慢するでもなくサラッと言い捨て、司は背後で呆然としている女にはもう一別もくれない。
 秘書課の人間はすでに帰宅済だったが、まだ社内にはそこかしこに残業の明かりが残っていたし、夜遅いというほどの時間でもない。
 気の毒な女を気にしつつも、つくしにはつくしの課せられた役目がある。
 「…あの、数時間前って、もしかして、そういう…行きずりの人と関係を持たれることがあるんですか?」
 天下の道明寺ホールディングス。
 よもや身元が不確かな人間を雇っているとも思えなかったが、それが本当ならば由々しき自体だ。
 「気が向けばな」
 「……」
 …こいつ、本当はバカなんじゃないだろうか。
 正直な感想を抱いてしまった。
 昔は確かにバカと頻繁に思っていたが、それでも社会に出て、世間にも評価が高く、経済誌にも大々的にとりあげられるような男なのだ。
 私生活はともかく、ずいぶん成長したのだと、噂に聞くばかりだが感心もしていた。
 それが、こうして身近に接すると、高校時代とはまた別種のバカへと変化していたようで、軽蔑とも呆れともつかない、なんともいえない哀愁に黙り込んでしまう。
 それをどう誤解したのか。
 笑い含んだ男が、突然手を伸ばして顎を掴んできた。
 「なっ!?」 
 「…なんだよ、刺激が強すぎたか」
 覗き込んできた男の目がイタズラっぽく煌き、甘く囁く。
 大人の司には高校生の時にはなかった濃厚なセックスアピールがある。
 不用意に触れれば火傷するとわかっているのに、肉食獣の持つ一種危険と隣り合わせの魅惑が、女の本能を刺激し誘蛾灯のように惹きつけるのだ。
 「ぷっ」
 だが、あくまでも司にとっては、タチの悪いジョーク。
 つくしをカラかって遊んでいるだけなのだろう、自分の所業に振り回されてクルクル変わるつくしの顔色を嗤い、なぶる男のいやらしさにつくしの頬に朱が走る。
 「自惚れないで…」
 「あ?」
 「誰でも自分に靡くと思って、イヤラシイ顔を近づけないでよッ」
 言われた言葉がわからなかったのか、司が怪訝に目を瞬かせ、だがすぐにニヤリと笑って再度顔を近づけてくる。
 しかし、傾けた顔がつくしに近づく前に、顎下に入れられた拳に制され、間一髪、ピタリと止まった。
 気がつけば、先ほど狙われて回避した横っ腹にも拳があてられている。
 自信家な司が、小さな女の威圧に動けなくなっていた。
 「なんのつもりだ」
 「あたしに不埒なマネをしようとしたら、ただじゃ済まさないわよ」
 低い恫喝には本気が伺えて、この女の実力は先ほど思い知ったばかりだ。
 さすがに、万全の司だったら女の細腕など強引にねじ伏せることができた。
 けれど、姑息にも急所を巧みに狙う、訓練された女には気軽に手出しすることができない。
 「チッ」
 舌打ちする司に、つくしがひんやりと嗤う。
 「…情けないわね。自分の身は自分で守れると豪語したくせに、もう失点二つじゃない」
 「ふん、実戦だったら殴らせる前に、沈めてるさ」
 負け惜しみを言いつつ、本格的に彼女と争う気がないのだろう。
 両手を挙げ、一歩下がって戦意喪失を表明する。 
 警戒しつつも、つくしにしてみても、守る対象をノすのは本意ではない。
 実際に、いまのところは我を張ってはいないが、意地にならせては司は確かに厄介な相手だ。
 …こいつなら、多少の痛み無視してもかかってくるわね。
 そうなっては、紙一重の勝利などあっという間に、逆転されてしまう。
 「…とりあえず、帰りましょう」
 「そうだな。…警視総監もずいぶん凶暴な女を寄越したもんだぜ」
 ボヤく司をつくしがギッと睨む。
 …どっちがよ!
 よほどそう怒鳴ってやりたかった。
 けれど、もうさっさと背を向けた司は、話を切り上げたまま、もうつくしを無視して歩き出していた。





 「「「「「お帰りなさいませ」」」」」
 使用人たちが両脇に控え、仰々しく主を出迎え頭を下げる。
 当然、司は傲然と顔を上げて、それに頷くことさえしない。
 まるで、彫像の間を潜り抜ける様に冷然と数人のボディガードを従え、使用人たちのアーチを潜り抜ける。
 大柄の司と黒服たちの間に、小柄な女の姿が見え隠れして、使用人たちの間にざわめきが走った。
 いつもは使用人たちの動向など気にする司ではない。
 だが、そもそも、主の前で、動揺や感情の波などあらわさないよう躾けられている使用人たちの騒めき事態が、この道明寺邸ではありないことなのだ。
 「……?」
 なんだ?というように、司が周囲を見回し睥睨する。
 その視線を受け止める度量のない使用人たちは、騒めく口を噤み、怯えて顔を伏せた。
 だが、それでも、かき消しきれないざわめきに、ふと思い当たった司が、半歩後ろを歩く、肩下にある頭を見下ろし、首を傾げる。
 「…おい」
 「……」
 「おい?」
 最初、自分が話しかけられているのだとは、つくしは気が付いていなかった。
 それよりも、懐かしいともほろ苦いともつかぬ思いを噛みしめ、周囲を見回していたのだが、司の再三の呼びかけにハッと顔をあげ、男が自分を怪訝にジッと見下ろしていたことに気が付く。
 「おいッ」
 「え?あ、はい。なんでしょう?」
 「………さんざん、ため口きいてやがった癖に、いまさら敬語かよ」
 「ハ?」
 呟きは小さすぎてつくしの耳には届かなかった。
 「いや、なんでもねぇ。なんか、うちの連中がざわついてんが、お前なんか心あたりあんのか?」
 「え…」
 どう答えたものか、つくしが悩んで口ごもる。
 が…。
 「…これはこれは、坊ちゃん、ずいぶんお見限りだと思ってましたが、やっとお家を思い出されましたか」
 しわがれた老婆の声が聞こえて、つくしがビクリと肩を震わせるが、司は声に気を取られてそれに気が付かない。
 「タマ、まだ生きてやがったか」




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