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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ011

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 ガチャリ。
 気が付けば、もう言われた15分を過ぎていたのか。
 ただ耐える時間は、長いようにも短いようにも思えた。
 つくしは背を預けていた壁から離れ、一歩身を引き、部屋の主が出て来るのを待った。
 部屋を出てきた司は、すでに着崩れていた衣類もキッチリと直し、高級ブランドのスーツはつかの間の粗雑な扱いにも皺ひとつ残していない。
 冷然とした様は、先ほどまで部下の女子社員に手をだし、厳然と職務を遂行すべき社内で、許されざるべき行為に耽っていた好色家には見えない。
 ただチラッとつくしに視線を流し、通り過ぎた司から香る、彼自身のものではない香水の移り香が鼻に臭って、つくしはわずかに鼻の頭に皺を寄せた。
 「…あ、あのッ」
 「……」
 無言で見返された目は、それでも欲情の名残かわずかに色めいたものを残している。
 そんな男の濃厚な色気にあてられそうで、つくしは内心ドキマギと視線を彷徨わせてしまいそうな自分を叱咤した。
 「その、先ほどの女性は?」
 名前も知らないので、どう言えばいいのかわからない。
 だが、司と篭った執務室から出てこない女をどう考えればいいのかと、つくしは迷った。
 「女?秘書だろ?」 
 「…え、あ…まあ、そうなんでしょうけど。その…この後の、え~、予定というか」
 西田には仕事を適当に切り上げさせるようにとの指示は受けていたが、デートの予定については聞いていなかった。
 警備的には、あまり必要以上の外出は望ましいくはない。
 だが、3ヶ月にも及ぶ長期の持久戦だ。
 若く、まだ血気盛んな男を、身に危険が及ぶからと言ってあまりにガチガチに拘束することなど不可能だろう。
 ましてや、司は唯我独尊。
 自分のやりたいことをやりたいようにやるのがデフォルトの男だ。
 危険だから…、その方が安全だからと言って、とてもではないが、行動規制することなどできるとも思えない。
 「邸に帰る。…どうせ、明日も早ぇし、さすがの俺も、さっきの今、日本に来たばっかで疲れた」
 …そりゃそうでしょうねぇ。
 つくしはそう思った。
 と、同時に、
 …疲れてるくせに、さっきの今で、女と不埒なことを社内で悪びれもせずやってのけるなよ。
 とも。
 まあ、つくしにとんでもないところを見られても平然としていたのも、今になって思えば、彼女をはじめとする他人を人間とも思っていないのだろう、司の傲慢さを思えばさもあらん。
 元々、司には自分の大切に思う人間以外の人間を、人間とも思っていない冷淡なところがあったのだ。
 誰よりもつくしを大事にしてくれた男だったが、出会った最初の頃の司は酷かった。
 そして、いま現在、その頃を彷彿とさせる司を見て、切なく思う自分の方が可笑しいのだろうと自嘲する。
 「じゃあ、えっと、秘書さん。代表のこ、恋人の方もご一緒にお邸に戻られますか?
 「恋人?」
 一度は呼び止められ立ち止まっていた司が、つくしの言葉に怪訝に眉根を寄せて、首を傾げる。
 ガチャッ。 
 ちょうど噂をしているところへ、焦った顔の当の噂の主が慌てて出てきた。
 「お、お待たせしましたッ!」
 急いで身支度を整えたらしく、やはり女秘書の方も完全な身支度だったが、わずかに直した化粧が滲んでいた。
 「…別に待ってねぇよ」 
 「え?」
 思わず見合わせたつくしと女の目が合って、途端に女の目がキツくなる。
 わずかに赤らんだ頬が、さすがに司ほど女の方は厚顔無恥ではなかった証だったようで、プイッと反らされた顔がわずかに震えていて、彼女の羞恥を伝えてきた。
 それでも、もう一度司を見ていた顔が陶然と綻び、誇らしさを隠せない。
 人も羨む男に選ばれた喜び。
 これから過ごすであろう、甘くロマンティックな夜への期待が透けて見えた。
 …こういう時って、あたし、完全にお邪魔虫よね。
 そうは思うものの、これも仕事だ。
 見ざる聞かざる言わざる…いや、どちらかといえば、壁に同化しようと、つくしは必死に気配を消そうと努力する。
 「あのぅ~、代表ぉ~、私…これからどうしたら?」 
 甘え声で上目使いで見上げる目元が、色っぽい。
 つくしを見たキツい目が嘘のように、司に媚びている。
 「どうしたも、こうしたも。勝手に帰れよ」
 「「えっ!?」」
 今度こそ、司の冷たい態度の意味に気が付いた女秘書の顔が青ざめる。
 驚いたのはつくしも同じことで…。
 てっきり、これから二人で甘い夜を過ごすことだろうと思っていたのに。
 「…行くぞ」
 声をかけたのはつくしにだけだった。
 けれど、つくしは司の後ろを追うのをわずかに躊躇する。
 ギッと彼女を睨んだ女秘書の怨嗟は逆恨みだった。
 けれど、わずかに涙ぐんで歪んだ顔が、彼女の傷つけられた心情とプライドが顕わで動けなかったのだ。
 「待ってくださいッ!代表」
 取りすがろうと、司の腕をとろうとした女の手が振り払われ、勢い余った女の体がヨロめく。
 「…何勘違いしてんだよ」
 「え…」
 「お前が勝手にリラックスさせてやる、とか言って乗っかってきたんだろ?俺がお前に何か期待させることでも言ったか?」
 「そ、そんな…」
 両手で口を押えた女の顔がショックに歪んで、後退る。
 その顔を嘲弄し、司がクッと笑う。
 「ま、15分で頑張ったにしては、大した『仕事』だったぜ。実際の仕事でもそれだけの働きをしてくれれば大したもんだけどよ。また『仕事』してぇんだったら、気が向けば相手してやんよ」
 あからさまな侮蔑に、聞いているつくしの方が青ざめる思いだった。
 けれど、当然、嘲られた女の方はそんなつくしの同情など欲しくもないだろう。
 あとは振り向きもせず、踵を返す司の後を追いかけるしかない。
 「…ううぅ、酷い…そんな、…うっぅ」
 後ろから女の悲痛な嗚咽が追いかけて来るようで、つくしは堪らなかった。
 あんな場面を見てしまえば、女の嘆きもゆえないことだとは思えない
 …そりゃ、会社でアレはやりすぎだとは思うけど。
 「…恋人なんじゃないですか?」
 単なる一警護官としては出過ぎだと思いつつ、言わずにはおれない。
 返事をしないかと思った司だったが、一応はつくしが声をかければ返事をするらしい。
 「…なにが?」
 「なにが…って。今の女性です。そ、そりゃあ、神聖な職場でえっと、ああいう…その破廉恥じゃなくって…えっと、その…ああ、いうことするのは、そのぉ、何だとは思いましたけど」
 言ってるうちに顔が赤らんでくるのを自覚する。
 思い出したくないのに、喋っているうちにあれやこれやが思い浮かんでくるからだ。
 それを嗤う男が腹立たしい。
 「恋人に…ああいうこと言うなんて…」
 「だから、誰が恋人なんだよ」
 「え?でも…」
 喧嘩でもしたのだろうか、と25cm斜め上の顔を見上げる。
 肩を竦めた司が驚愕の一言。
 「今日、初めて会ったんだぞ。しかも、数時間前。いくら遊ぶにしろ、そこまでソッコーでコナかけっかよ」




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