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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ009

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 なんだかんだと、終業時間を1時間オーバーしていた。
 各所に散らばる警備拠点を案内され、それぞれの担当者と打ち合わせる。
 そのたびに思うのが…。
 …さすがは道明寺ホールディングス。
 下手をすると、なまじの小国の政府なみの警備システムだった。
 …アメリカの本社じゃ、もしかして重火器装備してたりして。
 いったいなんに対する備えなのかと穿ちたくもなったが、今回のような場合にはすこぶる頼りになる。
 場合によっては、自分のような一介の警護官一人ではなく、それこそ軍隊でも出動するべきなのではないかと思い悩まないでもない…。
 …あの道明寺が、国家レベルの重要人物だなんてね。
 まあ、本人がことが大きくなるのを厭っているのと、いまのところ道明寺財閥にあてた誘拐予告の存在そのものが株価下落を怖れた当の財閥から否定され、政府に対して圧力をかけているから、公にはなっていないのだ。
 そして財閥内部の者の中でも、このことを知る人間はごく一部。
 つくしをはじめとする司直属のボディガードたちはある程度知らされてはいたが、それでも国家的テロを示唆されているのはホンの数人のこと。
 「じゃあ、あたしは今日のところはこれで。ありがとうございました」
 西田に代わって案内役を務めていた津島に頭を下げて、つくしは踵を返した。
 「待てよ、牧野」
 「え?はい?」
 「明日か、明後日、非番の時に一緒に飲みに行こうぜ」
 「あ~」
 あまりつれなく断るのも憚られて、つくしが曖昧に首を傾げる。
 けれどつくしの困った顔を見れば、鈍感ではない人間なら、その表情の意味することくらい容易にわかろうと言うものだ。
 「なんだよ、お前にも非番の日くらいあるんだろ?」
 どうなのだろうか。
 聞かれて考えてみる。
 だが、どう考えても今の状況では無理そうだ。
 つくしの他にも銃器帯刀を許された警護官が派遣されていればそれも可能だっただろうが、情報の流出を怖れて、いまのところ財閥側が受け入れたのはつくし一人。
 そうであれば、彼女的には司の傍を離れたくなかった。
 もちろん、警護する対象と警護官として、だ。
 「…ん、非番というか、この社屋に代表がつめている時は、休ませてもらえるのかも」
 その答えは予想していたのだろう、津島も元刑事だった男だ。

 「さすがは、非人間的な勤務状況だな」
 「まあ、仕方ないですよ。それが役目だし、津島さんも昔はそうだったでしょ?」
 言われて津島は肩を竦める。
 一見すると、優男なその風貌はとても巨躯巨漢をねじ伏せる実力を持つ、武道の有段者には見えなかった。
 …そういえば、ちょっとだけ、津島さんて類に雰囲気が似てるかも。
 社内で女子社員たちの視線が痛かったのは、まだ知られていない司の傍つきへの嫉妬や羨望などではなく、案外津島と連れ立っていたことが理由だったのかもしれなかった。
 「そのせいで、女房に逃げられたようなものだし?」
 「えー、あ~、すいません」
 なんと言っていいのやら、言葉に詰まる。
 困った顔のつくしに、苦笑で返して、津島がつくしの肩をポンポンと優しく叩いた。
 「相変わらずなんでも真に受けて、真面目だな、牧野は」
 「ええ?嘘だったんですか?」
 「いや、ホント」
 「……」
 「でもま、そのおかげで、あの非人間的な毎日とオサラバして、新しい環境に向かうきっかけにはなったよ」
 「…そうですか」
 「今は気楽気楽~。ただでさえ警備厳重なのに、天下の道明寺ホールディングスにケンカ売るような猛者もコソ泥もいるわけないしな」
 「……」
 今まさに、そのために呼ばれたつくしは曖昧に微笑むしかない。
 「…お前は、あれだろ?要人護衛の研修を兼て、総監のご機嫌取り派遣か?」
 「いやあ」
 そういうことになっているのなら、何とも言えず。
 「良かったな」
 「……津島さん?」
 「お前、夢だっただろ?」
 警察学校時代のつくしを知っている津島には、隠し事ができない。
 「…はい、ありがとうございます」
 だが、高校時代…司と出会うまでは、警察官になるなど露とも思いついたことがない彼女が、なぜ警察官…それも体格的にも見合わないつくしが要人警護官を目指したかなど知る由もなかっただろう。
 「気を付けろよ、牧野」
 「…はい?」
 かつての担当教官としては、つくしを頼りなく思うのだろうか。
 本気で不安げな顔をする彼女の顔を見下ろす津島は、困った顔でポリポリと顎の下をかく。
 「津島さん?」
 「その…なんだ。道明寺代表は、あの通りの色男だからな」
 「はあ」
 …何が言いたいんだろ。
 突然変わった?話題に、つくしの頭に???が浮かんだ。
 「噂だと、そっちの方も派手らしいし、…その、気に入った女は秘書でもなんでも、次から次に食っちまうらしいぞ」





 さすがに、そっちってどっち?などというボケをかますことなく、つくしは忠告をありがたくいただき、津島と別れた。
 …あっちも派手。
 先ほど言われた言葉が、妙にしこりとなって胸にわだかまっていた。
 …あいつの女遊びが派手だって言うのは、かなり有名な話だし。
 長年NYに本拠地を置いて、確かアメリカ国籍だったが、それでも彼の噂は日本でも事欠かなかった。
 それだけ有名な男だと言えたし、注目度が高い。
 巨大財閥の経営者であるという以外にも、あの芸能人顔負けの容貌が常に人々の関心を集めていたのだ。
 …別に関係ない。
 そう思うのに。
 さっきから、つまらないことばかり思い浮かんで、溜息が止まらない。
 雑誌の中で見る司は、まるで異世界の人間のようで、かつて自分と熱烈に恋愛していた男だとはとても思えなかった。
 …実際に別人みたいなものなんだろうな、と思う。
 数日前までつくしを見て優しい顔で微笑んでくれていた恋人が、一瞬で見も知らない他人に変わった。
 だが、こうして間近で顔を合わせ、言葉を交わすと…意図も容易くつくしの中だけでは、時が過去へと回帰してしまう。
 …昔のあいつは、あたしをあんな目で見たりは絶対にしないのに。
 無関心で冷たい…心の奥底が凍えるような眼差し。
 考え事をしながら歩いていたら、いつの間にか司の執務室のドアの外に到着していた。
 今日は邸に戻るらしいが、西田が所用で直帰したために、つくしが送迎役だった。
 そうでなくても、司の寝泊りする場所へつくしもつめることになるので、どちらにせよ同伴することに変わりはなかったのだけれど。
 「…まさか、先に帰ったなんてことないでしょうね。天下の道明寺HDの代表なんだから、ノー残業DAYなんてものはないよね」
 トントン。
 「………………………………」
 しばらく返答を待つも、中からは応答がない。
 ふと、視線を感じて、左右前後に目を向けると、いつの間にか秘書課の社員たちが全身を視線にして注目しているのがわかった。
 さりげなさを装っているが、目が合うと慌てて反らされる。
 ここの人たちにとってつくしは異邦人なのだから、致し方ないことだろうが、なんとなく空気が微妙に変だった。
 …なんだろ?仕事の邪魔しちゃってるってことかな?
 だが、西田からは、今日はあまり根を詰めさせないでくれと言いつかっていたから、特に重要な仕事をしているはずはなかった。
 トントン。
 「………………………………」
 やはり、返答がない。
 …もしかして、トイレに行ってるのかな?でも、トイレくらい室内にありそうだよね。
 まあ、トイレに篭っていても返事はないだろうが、寝ているのかもしれないとか、いろいろ考え、
 …まあ、いっか。
 「入りますよ」
 一声かけて、ドアを開いた。
 「っ!?」





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