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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ007

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 「てめっ、怪我してる足をッ!」
 西田が茫然としている秘書を押し出し、部屋を出るかでないうちに、つくしは踵で司の脹脛を狙って蹴りあげた。
 無理な姿勢で真後ろは無理だったが、運よくフィリピンでの爆破事件での負傷場所にヒットしたようで、さすがの大男も耐え切れずにつくしの体を解放する。
 が、つくしはそのまま手を緩めず、あえてもう一か所…受傷したと言う横っ腹を狙って拳を繰り出す。
 「きたねぇぞッ」
 さすがに身をよじった司によけられたが、怪我をしているためか、ほとんど自分自身がボディガードを勤めていてもおかしくないくらいの格闘術を身に着けている男だというのに防戦一方で逃げ回っている。
 汚いも何も、いくら警察官としての武術体術を会得しているとはいえ、体格においても、元々の経験値に置いても、司とつくしでは勝負にもならない。
 そのハンディを乗り越えて勝とうと思ったら、卑怯も承知、相手の弱点をつくのがセオリーなのだ。
 繰り出した拳が、鳩尾にヒットして、司が蹲る。
 そのまま振り上げた足を、つくしが司の首筋に叩き落とす寸前…。
 「マイッた!」
 司が根をあげた。
 ピタリと止まる足は、ちょうど司の首の皮手前1mm。
 「はあ、はあ、はあ」
 「ゴホッ、ゴホ。……っ、ふぅ…ふ、うっ」
 互いにしばらくは、荒いだ息を整えるのに腐心する。
 けれど、やはり無傷のつくしの方が立ち直るのは早かった。
 「ず、ずいぶん、往生際がいいんじゃ、な…いのっ?」
 「バ、バカ言え、現役離れて、どれだけだと思ってんだ。勝てない勝負に、意地張って女にノされる方が、よっぽどカッコ悪ぃだろう」
 言葉じりに苦痛を滲ませながらも、平静を装う司の余裕がムカつく。
 …それでも昔のあんただったら、そんなにアッサリ勝負を捨てたりしないわよ。
 勝ったと言うのに、釈然としない思いにわだかまる。
 なんだかんだ、余力を残しているのがありありな司は、そのまま鳩尾を抑えたまま床へと大の字にゴロリと転がった。
 「…ちょっと、そんなところで寝ないでよ」 
 「ふざけろ…、これが寝ねぇでいられっかよ。クソッ」
 悪態をついた司が、体の向きをかえ、うつ伏せにまるで胎児のように丸まって蹲る。
 さすがに怪我人を相手にやりすぎたかと、心配したつくしが司の傍らに膝をつこうと屈みこんだ。 
 「大丈夫…ッ!?…なッ!?」

 つこうとした手を思いっきり引っ張られ、踏みとどまろうにも髪をわし掴まれては堪らない。
 踏みとどまれず、体勢を崩したところで、司の大きな体の下へと組み敷かれてしまった。
 「なにをっ!」 
 慌てて起き上がろうとするが、完全に手足の上に体重をかけられれ、寝技をかけられては身動きが取れない。
 しかも、つくしの長い髪が仇になって、髪の毛ごと抑えつけられればもう頭さえ動かせなかった。
 「あんた!卑怯じゃないのッ!?」
 「どっちがだよ」
 戦っている時には、爛々と獣のような危険な光を浮かべていた目が、不思議に和んで目尻に皺が寄った。
 …あ、こいつ、目尻に皺なんてできてる。
 そんな場合じゃないというのに、新たに発見した司の顔の皺に、つくしは目を奪われた。
 首筋にかかる熱い吐息。
 そして、温かく湿った感触が、耳たぶを食んで、つくしはビクッと体を震わせる。
 「な、なにすんのよッ!」
 「…やられっ放しつーのは、俺の流儀じゃねぇんだよな」
 拘束されてなお、陸に上げられた魚のように体をはねるつくしの両手を片手で抑えて、司が楽しげに含み笑う。
 長い指先が、つくしのスーツの上を滑って、布ごしの柔らかな丘にたどり着いて、怪しく蠢いた。 
 「こ、このっ!離せッ」
 「…いいざまだよな。いくら強くても、こうなったら女は男の力には勝てねぇんだよ」
 耳元で囁かれる艶めいた低い声音に、つくしのどこかがゾクリと震えた。
 それは、けっして不快なものではなく…。
 それならば何かというと。
 「…やっ!」
 「…現代のマタハリ(※世界で最も有名な女スパイの代名詞的存在)でも気取るつもりかよ」
 「何言って…」 
 「どうせ、警視総監あたりがおれんちの動向を探ろうと、寄越した手合いなんだろ?」
 「違うッ…」
 「そうは問屋が下ろさねぇ。そっちがその気なら…、お前を取り込むのも一興ってもんじゃね?」
 含み笑う息が、つくしの素肌に鳥肌を立てる。
 「…各支店にはテレビ会議の招集をかけ、そろそろ予定時刻が差し迫っております」
 怜悧な声に、ハッと司とつくしは、振り返った先に、先ほど退出したはずの西田を見出した。
 「そろそろ、お遊びは切り上げていただけませんと」
 「チッ」
 「あ、遊び?!」
 割り入ったその冷静な声に、司が舌打ちをし、つくしが心外だと声を上げる。
 だが、一時の狼狽は幻であったとでも言うように、あくまでも怜悧な視線で、とんでもない体勢で絡まっている二人を見下ろす西田に、つくしの頭は一気に冷え込んだ。
 …ひえぇ~ッ!、こ、この体勢って、もしかして、思いっきり誤解されてる?
 おりしも、先ほど司の情人まがいの働きを期待されたばかりのところだったのだ。
 司が肩を竦めて、存外素直につくしの上から退く。
 「あ、あんた、怪我…」 
 「…さすがにまだ痛みは残ってっけど、救急車送りになるほどじゃねぇな。…たく、とんでもねぇ、女だぜ」
 ブツブツ言いつつも起き上がり、司が彼女へと手を差し伸べる。
 「え?」
 「…立てよ」
 でも、その手の意図に戸惑って、つくしが目を泳がせると、顔を顰めた男に、強引に腕をとられて立ち上がらされた。
 「床に寝てるのが趣味なのかつーの」
 「…そんなわけないでしょ」
 「仕方ねぇ、この勝負は俺の負けだ」
 「……え、じゃあ?」 
 「とりあえずは置いてやんよ」
 その言葉に内心大きく安堵の息をつく。
 部屋を出ようとする司の後を慌てて追ってきたつくしをチラッと見て、司は傍にいた秘書らしい女子社員に視線をくれる。
 「おい」
 「は、ハイッ」
 裏返った声が、どこか弾んでいる。
 よくよく見れば、先ほど司とつくしが顔を寄せ合い睨みあってるところへと、お茶のトレイを落とした女性だった。
 「皺になっちまったこいつのスーツの替えを用意して、俺の仮眠室に案内してやれ」
 「…い、いや、そんな着替えだなんて、大丈夫よ」
 「そんないかにも何かありました…みたいな恰好で俺の後をついてくるつもりかよ?」
 「あー」
 そういえば、そうだった。
 髪はグチャグチャ、着崩れたスーツはしわくちゃ、化粧も汗と埃にまみれてさぞや酷いことになっていることだろう。
 そんな風体で、さすがに道明寺HD代表の後をついて回るわけにもいくまい。
 「俺も着替えてくる。お前も身だしなみを何とかしておけ」
 帰れと言われないだけ、進歩なのかもしれなかった。
 司の意を受けた女秘書が、つくしへと頭を下げる。
 ある意味、つくしの窮地を救った救世主だとも言える女性だったが、一瞬つくしを流し見た視線は敵意に満ちていた。
 ハァ~、まったく、…またなの?
 慣れ親しんだその敵意に、過去のアレコレの記憶が甦る。
 司は自分を忘れたと言うのに、この男に関わると巻き起こる周囲との摩擦は相変わらず健在だった。





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