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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ004

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 気を取り直すために、息を一つ吐いて肩の力を抜く。
 真っ直ぐにつくしを見返す西田の顔は無表情だったが、彼が今この状況を憂えているのは十分に伺えた。
 「…日本では3ヶ月の滞在だとか」
 「ええ。どうしても、こちらでこなさなければならない重要案件がありまして。ですが、問題はそんなことではないのです」
 目を伏せた西田の顔は思わし気だった。
 「…一介の犯罪者たちの犯行予告とは異なります。こういう状況であるのなら、むしろ危機管理能力の低い日本にいるよりも、アメリカで政府の保護を受けるべきだと説得したのですが…」
 道明寺財閥の為にならば、アメリカ政府もその警護に腐心するのを厭わないであろうし、なまじ銃器不携帯のお国柄、同じ軍隊や警察を有していても、その警護に対する姿勢そのものが日本ではどうしても劣ってしまう。
 「自分の命を危険に晒しても、道明寺…いえ、代表自らが来日しなければならないほどのことだったんですか?」
 「確かに重要ではありますが…。むしろ代表の場合、ご自分の命を質に、スリルを味わっていらっしゃるようなのです。つまり、危険自体を、退屈を紛らわすスパイスだと」
 「は?」
 …スリル?なんだそりゃ。
 「牧野さまなら、ご存じだと思われますが、高校生の頃のあの方は、生きる実感を得るために、むやみやたらに暴力に明け暮れられた…」
 「……」
 つくしもその当時、司の心の闇を真に理解していたわけではなかった。
 けれど、その苛立ちを他人にぶつけて傷つけること、暴れることで紛らわせ、それでいっそう自分の中の荒廃を深めていたのは知っている。
 「とりあえず、E国からの脅迫は、半年以内に財閥の最重要人物を誘拐するというもので、…その期限が、ちょうど代表の日本滞在期間と重なるのです」
 財閥の最重要人物といえば、現在、道明寺ホールディングスのCEO(※最高経営責任者)である道明寺司をおいて他にいないだろう。
 国連に認められてはいないとはいえ、E国にも国家としてのメンツがある。
 どんなに無法で無茶な言い分であろうと、国家として宣言した以上、守れなければ権威の失墜にもつながるのだ。
 ましてや、恐怖と衝撃で政権を維持している国であったから、なおさら、その期限や公約を破ることなどできないだろう。
 「つまり、その半年…道明寺代表が日本を発つその時まで、何事もなく無事に守ることができれば…」
 「はい。…おそらく、もはやE国の脅迫は効力を持たない物になるでしょうし、よしんば諦めてくれなかったとしても、アメリカへ帰国できれば日本に滞在しているよりも格段に危険度は下がります」
 「……」
 「……」
 「…ハアッ」

 思わずつくしは溜息をつく。
 「馬鹿げてますね」
 「ええ」
 「アメリカにいれば安全だとわかっているのに、わざわざ自分から危険を侵すなんて」
 「それでも、代表が今この時期、日本滞在を見送れば、道明寺HD的にも未来への躍進がかなり後退せざる得ないのも事実ではあるのです」
 つくしにしてみれば、会社の躍進が命に代えられることだとも思えない。
 確かに企業には企業の論理があるのだろうが、結局命は誰にでも平等にたった一つしかないのだ。
 そう…天下の道明寺財閥次期総帥・道明寺司様であったとしても。
 そして、それでも、つくしがそのことに関して何か言える立場ではないことも確かなことで。
 「…守るしかないってことですよね」
 「はい、お願いします。牧野様が、いらしてくださったのも何かの運命なのかもしれません」
 …運命。
 そんなものが本当にあるのだろうか。
 むしろ、この道明寺HDという巨大な企業に君臨する女神の差し金ではないかと疑いつつも、目の前の忠実なしもべが答えてくれるとはとても思えない。
 それならば、聞いても無駄なことは聞かない。
 「とりあえず、西田さん、その様っていうのはやめてくださいませんか?」
 「…いけないでしょうか?」
 「私は様呼ばわりされるほどの大人物ではありませんし」
 クスリと笑われたのは気のせいだったかもしれない?
 その主以上に鉄面皮な印象の秘書の小さな笑顔に、つくしが目を瞬かせる。
 「お変わりになりませんね」
 「え?そうでしょうか」
 首を傾げるつくしにもう一度だけ柔らかな笑みを返し、西田は改めて居住まいを正す。
 「…これはオフレコなのですが」
 「はい?」
 つくしもそんな秘書に合わせて居住まいを正した。
 「実は、代表の日本来日は、明後日の予定でした」
 エントランスの受付の傍でも、どこかの誰かがそんなことを言っていたのを思い起こす。
 「ですが、アメリカを出て、途中滞在したフィリピンのホテルで爆発物での襲撃を受けました」
 「ええッ」
 それは聞いてない。
 いかにも形だけの警護になりそうだと伝えてきた、警視総監の認識と危機感との齟齬に、つくしは眉根を寄せて西田を見返した。
 「おそらく示威行為の一環だったのでしょう。殺傷能力の低い武器で、人を介して持ち込まれてしまったのですが、代表もその爆発物を結果的に持ち込むことになってしまった女性も幸い命に別状はありませんでした」
 「怪我をしたのですか?」
 横を通った司の様子は、怪我をしているようには見えなかった。
 けれど、過去、ろっ骨を折っても平気で歩いていたような男だった。
 …犬並の回復力だったしね。
 「代表は脇腹と脹脛に、飛んできた破片を受けられて、裂傷と打撲を」
 「…そうですか」
 何もなかったのならば、それこそ総監の言う通り形ばかりの警護でも構わないのかもしれない。
 なにより、司には道明寺家個人で雇入れている、元軍人や警察官あがりのボディガードが何人もついている。
 それこそ、つくしが所属している元警視庁警備部警護課・警護第3係…つまり外国要人・機動警護担当の者たちもいるはずだった。
 だが、ここ日本にあっては私的な護衛である彼らには、銃器を保持することはできないし、何かと制約も多い。
 どこまでを正当防衛とできるのかが難しいのだ。
 …爆発物か。
 郵便物は調べるにしても…。
 「ん?持ち込んだ?送られてきたんじゃないんですか?」
 「………」
 理路整然としていた西田が、一瞬言葉に詰まった様に見えたのは気のせいだったのだろうか。
 疑問符を浮かべるつくしの目を真っ直ぐに見た鉄面皮な秘書の目に、多少の動揺が見える。
 が…。
 「…実は、そのこともあって、牧野さまを。女性の要人警護官の派遣を願ったのですよ」
 「はい?」
 「つまり、夜の警護。女性でなければ担当できない類のシチュエーションでの担当をお願いしたいのです」
 「…それってつまり」





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