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「アネモネ…全171話完+α」
第一章 Change the World①

アネモネ003

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 「…え?代表がNYからこちらに来られるのは、明後日じゃなかったけ?」
 交わされる会話は、もうつくしの耳には届いていなかった。
 時間が凝縮して、まるでつくしとその視線の先以外の全てが止まってしまっているような錯覚に陥る。
 …どんなに人の波に埋もれていようとも、あたしはあいつを見つけられる―――。
 デ・ジャブ?
 違う、確かにあった過去の日の光景だ。
 あれは、司がつくしと別れる決意をし、一時的にNYから日本へ帰国した日。
 人ごみの中、司がガードレールに座っているのを、遥か遠くから見つけることができたのだ。
 つくしが見守る先、エントランスの自動ドアが開いて、黒づくめのスーツの一団が現れる。
 そんな彼女の背後、ロビーの奥から何人もの人間たちが現れて、慌てて出迎えへと立ち並ぶ。
 そして、他、その場に居合わせた社員たちが、黒づくめの一団へと一斉に礼を取り、頭を伏せた。
 人々の壁と壁の間から、頭一つ分飛び出た長身の頭。
 クルクルに巻いている特徴的な髪型は、十数年前とすんぷも変わらない。
 モデルのような八頭身のスタイルと、彫像のような完璧な美貌。
 冷たいその横顔に、少年の日の面影を探してつくしは目を細めた。
 …見て。
 …あたしを見て。
 無意識の願い。
 もしかしたら、口に出してしまっていたのかもしれなかった。
 一瞬の邂逅…。
 何事かを告げる秘書らしき人物の言葉に耳を傾け、ただ目の前だけを見ていた男の視線が、つくしへ…。
 確かに、その眼はつくしの目と合ったのに。
 愛しさも、懐かしさも…十数年前に彼女にブツけた苛立ちさえもなく。
 ただただ冷たい無関心がつくしの上を撫でて、そのままあっという間に反らされてゆく。
 目が合った瞬間、つくしの中にだけは確かな磁力が発生したと言うのに、何事もなかったかのように去ってゆく逞しいその背には何の感情もなかった。
 「…バカみたい」
 「はい?」
 気が付けば、目の前の受付嬢がつくしを怪訝に見つめていた。
 それに力なく頭を振り、なんでもないと答える。
 「…いえ、なんでも」
 「そうですか。西田から、52階の応接の方にご案内するようにと、申し付かりました」
 受付嬢に促され後をついて歩きながら、つくしはいま消えた白昼夢を追うように、もう一度だけ振り返った。





 通された応接で待ち構えていた男性は、確かに過去、つくしと家族が住まう安アパートに現れた楓の秘書で。
 わずかに白いものが混じり始めていたが、いまだ若い頃の怜悧な印象そのままに、丁寧だが沈着な物言いが、彼の辣腕ぶりを知らしめていた。
 「初めまして…、警視庁警備部警護課・警護第3係、牧野つくしです」
 「お久しぶりです。道明寺HD代表道明寺司の第一秘書・西田でございます」
 …お久しぶり、と言ったか。
 初めましてではなく、十数年前の会談を匂わせる西田に、つくしの眉根が寄った。
 「…私のことを憶えてらっしゃるのですね」
 「それもありますが、警視総監より今回のお話があったおりに、牧野さまに関する履歴書及び身上書をいただいております」
 「…そうですか」
 それもそうだろう。
 こちらが警護する相手に関する資料をもらっているのと同様に、ある程度の履歴くらいは相手にも知らされる。
 ただ…それが知り合いだったというだけのことで。
 そして、それを見た司がどう思ったか、とチラっと思ったものの、先ほど合った無関心な目に、自分の未練がましさを心の中で自嘲する。
 …別に何の期待もしていなかったのに。
 そう思う端から、先ほどの落胆とも哀しみともつかぬ想いが湧き上がってしまう。
 けれど今は仕事中だと気持ちを切り替えて、つくしは促がされるままにソファへと腰を下ろした。
 「今回のことについての詳細は…?」
 西田に問い掛けられ、自分に与えらえた情報を呼び起こす。
 「ある程度は聞いていますが、詳しくはこちらに来てから事情の説明を受けよ、と命じられています」
 「そうですか」
 一つ頷き、手元から西田が資料を差し出す。
 「事の始まりは、半年前、一通の脅迫文を受け取った時に遡ります」





 武装テロ国家E国。
 つい先ごろから世間を賑わせ、西欧諸国との対立を深めているアラブ系の新興国。
 国連はこれを国家とは認めてはいなかったが、厳然たる支配体制を整えている。
 公務員とはいえ、遠い日本にいては身近なことには感じられなかったが、それでも海外に出ている日本人たちにはその影が忍び寄っていた。
 「…道明寺財閥に対して、アメリカ政府へのテロ対策支援を辞めろと言ってきたのです」
 「道明寺財閥は…」 
 「E国に関わらず、テロリズム撲滅を目指すアメリカおよび西欧諸国にはできるだけの支援を行ってきました」
 あの道明寺楓や、司が人道主義を謳っているとも思えなかったから、おそらくそこにも企業的イメージなど他、道明寺HDなりの実利があるのだろう。
 けれど、もちろんその社内の中枢をよく知る秘書は、それを口にすることもなかった。
 「そして、道明寺家の一族の命の身代金として、300億ドルを要求しました」
 「…えっと、300億ドルというと、確か、今日の円相場が1ドル=110円だったから」
 ひいふうみいと空で暗算しだしたつくしに、西田がサラっと表情も変えずに答える。
 「およそ日本円で3兆3000億円です」
 「さっ!?」
 驚愕に、口をあんぐり空けたまま、つくしは西田を茫然と見てしまった。
 確かに、世界でも名だたる大財閥・道明寺家の身代金としてはありなのかもしれなかったが、一庶民にすぎないつくしにしてみれば、青天の霹靂もいいところだ。
 そんなつくしの驚愕に西田が一つ頷く。
 「そうです。日本の国家予算がおよそ2兆0250億ドル(172兆1250億円)…ですが、30位に位置するギリシャでさえ1087億ドル。つまり、30位のギリシャの国家予算の1/3あまりの巨額で、総帥一族の命を購えと要求されたわけです」





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