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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて276

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 静のはずがなかった。
 儚げに微笑む美貌は確かに静によく似ていた。
 けれど、類や高階のような相似とは異なり、雰囲気が全く異なっていた。
 「どうぞ、ごゆっくり」
 つくしの驚愕にも動じず、女性が丁寧にお茶や茶菓子を配膳すると、綺麗に礼をとって席を外した。
 「そういえば、牧野さんも静さんをご存じでしたのね」
 驚きで固まったまま、女性が出て行った方向を茫然と見ていたつくしがハッと我に返った。
 「…はい。その」
 何と言ったらいいのだろうか?
 静も英徳出身で広義で言えば先輩後輩の間柄だともいえたが、つくしが在学中にはすでに静は高等部を卒業し、大学も外部へと留学していた。
 そして、あの出家騒動だ。
 二人を繋ぐ間柄は一口には説明しがたい。
 類の引き合わせだと言えば簡単だったが、自分の中の疚しさが、類の実母を前にして彼の名前を言いだしがたくする。
 「類の高校時代の後輩でいらしたから、その縁で静さんともお付きあいなさってたのかしらね?」
 だが、志保子の方が事情を察して口にしたことでホッと安堵した。
 「はい。当時にも何かとお世話になって…その今の女性は」
 「藤堂まり子さんとおっしゃってね、静さんの父方の従妹にあたる方ですのよ」
 「…ああ」
 やはり静の血縁らしい。
 高階といい、親族とはいえよく似た人がいるものだった。
 それとも美形は全人類の平均的な特徴の集大成だというから、美しい人は皆似ているのだろうか?
 …いやいや、類と道明寺じゃあ、似ても似つかないって。
 比較対象が極端すぎた。
 「あまり牧野さんをお引止めすると、類が探してしまうから単刀直入に話させていただきますわね」
 そういえば、類に何も言ってこなかったと今更ながらに気が付く。
 類の母親に突然出くわし、動転していたのだ。
 ここで待ってて…と言われた場所で待っていなければ、当然類だって探すだろう。
 ただでさえ仕事で来ているというのに、類の足を引っ張るわけにはいかない。
 「はい、よろしくお願いします」
 それでも、冷え冷えとした気配を纏っている志保子が怖ろしかった。
 口調は柔らかく優しいのに、その眼が笑っていないのに、ある種の予感がつくしにあった。
 「あなたと類のことは、私も花沢も承知しています」
 「……」
 「あなたの貴重な時間とお気持ちを無駄にしてしまったことは、息子に代わって謝りますわ。…類と別れてください。あの子の将来の為です」





 静かに見つめ合う類と総二郎の間に静かな火花が散る。
 いつかのように、互いの間にあるのは一人の女の存在。
 けれど、先に視線を反らせたのは総二郎の方だった。
 「…アホらしい。女のことでお前と争うのはごめんだぜ」
 「牧野から手を引いてくれる?」
 あきらはともかく、総二郎がつくしに本気になるとは思えない。
 長年の友の性質を熟知していてそうは思うのに、あるいはと思わずにはいられない。
 時折総二郎の目によぎる真摯な光が、類には気に入らなかった。
 …まさかね。
 けれど、つくしはあの司を虜にし、あきらをも惹きつけた女なのだ。
 見た目、全然普通のくせに、いつの間にかつくしの周囲に人が集まるのは、人タラシの才能とでも言えばいいのだろうか。
 「まさか、俺と本当に争うとかいうつもりじゃないよね?」
 「…どうだかな」 
 「アホらしいんだろ?」
 「牧野じゃなかったら…だ」
 和やかな口調とは裏腹に、類の目にも冷たい光が帯びる。
 「ダチだ」
 「…友達だから何?所詮は男と女のことは、当事者で…って言うのが、お前の持論じゃなかった?」
 「牧野が納得してお前との間を続けてるっていうんなら、口は出さないさ」
 「なに?牧野がお前に何か泣きつきでもしたって?」
 互いにどこか歯に物を挟んだような物言いに、総二郎の方が先に倦んだ。
 「いいかげんにしろよ、類」
 「なにがだよ」
 「牧野がお前に惚れてるにしろ、惚れてないにしろ、あんな顔をさせるのはやめておけ」
 ガンッと蹴りつけたソファの音に、周囲の人間がギョッと二人を振り向くが、表面上、二人は何食わぬ顔をしていて、皆気のせいだったかとざわつきながらも自分たちの話へと戻ってゆく。
 「やめてくれない?こんなところで騒ぎ起こすの」
 「平気だろ?…俺らがなにしたって、たいていのことは大目に見てくれるさ」
 「ハアッ。じゃあ、どうしろって言うわけ?」
 「いったん牧野から手を引け」
 「は?」
 サラッと言われた言葉に、類が目を瞬かせる。
 「それ、本気で言ってる?」
 「ああ。お前、まともな手段であいつと付き合ってないだろ?」
 「……それ」
 「牧野からは詳しいことは聞いてないさ」
 「……」
 類自身もボロボロと真実の破片を暴いて見ろとばかりに口にしてきた自覚がある。
 「お前は俺の幼馴染みだ」
 言わずもがななことを言いだす総二郎に呆れて、類は肩を竦めた。
 「お前がどういうつもりかはともかく、お前という人間は知っている」
 「…だから?」
 「牧野が本当に欲しいなら、一度手を離せ。リセットしろよ」
 「……」
 挑発的だった総二郎の目に、類への心配と同情があるのを感じて類も息を吐き肩から力を抜く。
 たとえ意見や利害が食い違うことがあったとしても、この幼馴染みが本当の意味で自分と敵対することがないのはよく知っていた。
 けれど…。
 「司が帰ってくる」
 「……そうだな」
 「俺があいつを怖がってるって言ったら、お前、信じる?」





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