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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて273

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 「…あたしさ、ホント、ダメな女なの」 
 「……」
 自嘲するつくしの顔は陰って、いつもの逞しさが嘘のようだ。
 けれど、総二郎が知らなかっただけで、元々つくしはそういう女だったのかもしれない。
 雑草のように逞しく真っ直ぐな強さとは裏腹な弱さも内包していたのだ。
 だから、司の母親に脅され逃げ出した。
 しなやかな柳のような女だと思っていたが、実は違っていた。
 「いくつになっても、高校生の時のまま…類に夢を見ていたのかもしれない。ガラでないって西門さんには思われちゃうだろうけど、類を王子様みたいに思って幻想を押し付けちゃってたんだよね、きっと」
 意外…なのだろうか。
 いや、総二郎にとっては意外ではなかった。
 彼女を夢見がちな女だと思ったことはなかったけれど、たいていの女たちは彼らF4に夢を見ていたものだし、つくしの場合はまた事情も異なる。
 司にたてついて学校中を敵に回した。
 えげつない司の苛めにあって相当に精神的にもキツかっただろう。
 そんな彼女を唯一味方したのが類だったのだ。
 長年付き合いの総二郎にして驚愕ものだったが、他人に全く興味がなかった類がつくしを救い庇った過去を思う。
 「…今はどうなんだよ?もう幻想は抱いてないんだろ?」
 「わからない。…西門さんには変なところも見られちゃってるから言うけど、あたしたち普通の関係じゃないの。その…肉体関係だけの話じゃなくっててことだけど」
 「…だろうな」

 総二郎とてダテに女性との経験を積んでいるわけではない。
 ましてや、類やつくしのことはよく知っていた。
 「類に惚れてるのか?」
 「…うん」
 躊躇なく肯定するつくしの横顔は自嘲的で、見るに堪えない。
 …こんな顔する女じゃないだろ、お前は。
 そう思う端から、こんな顔をさせる類に憤らずにはいられない。
 本来のつくしは照れ屋で、人に問われて自分の気持ちを素直に認められるような女ではないのだ。
 類に惚れてはいても、隠せないにしろ堂々と肯定して、それに負い目を感じるなんて似合わなすぎた。
 「類は?」
 類の性格からして、気持ちをストレートにつくしへと伝えているとは考えずらいが、彼女の認識はどうなのだろうか?
 「……わからない」
 「あ?」
 「わからないの。…類の考えてることも気持ちも、理解できない」





 知らない…ではなく、理解できない。
 「お前に何も言ってないわけじゃないわけだ。それでも…」
 つくしは迷いつつも小さく頷く。
 隠しても今更だと思っているのか。
 それとももう、一人で悩むことに倦んでしまっているだけなのか。
 「……でも、他人を簡単に見捨てたり、切り捨てたりできるあの人が怖いの。あまりにあたしが知ってると思っていた彼と違いすぎて…自信がない」
 「自信?なんの自信だよ」
 口にしたつくし自身もわからないのか、ただ首を振るだけ。
 「あたしのせいでまた、他人を傷つけてしまった…」 
 陰にこもって、ぼんやりするつくしは本当に苦しそうだった。
 「まさか、お前、類の婚約者が自殺未遂をしでかしたのは、自分のせいだとか思ってるわけじゃないだろうな?」
 「……」
 無言なのが肯定だった。
 バカバカしい…そう言えればいいのに。
 まったく見当違いだとも言えないのに、ムカついて、総二郎は溜息を呑み込む。
 「…結局、お前が割り食うんだな」 
 「……」
 「類の場合も、司の時も」
 「…そうかな?」
 「ああ。まあ、俺でもきっとそうしちまうんだろうな。…好きな女一人守れない。天下のF4が笑っちまうぜ」
 自嘲的な総二郎の声音には実感がこもっていて、ついて出た言葉は無意識だった。
 「だから、西門さんは真剣な恋をしないの?…恋をしてその人と生きようとするんじゃなくって、友達のあたしなの?」
 無言で目を瞬かせる総二郎に、ジッと視線をあてる。
 「好きな人を守れないから…傷つけるのが怖いから、遊ぶの?でも、それじゃあ、西門さんが好きな人も、救われないよ」
 「…牧野」
 「……」
 「牧野、俺」
 「お待たせしました。西門さん、つくし、ごめんなさい」
 家元夫人の用を済ませ、優紀が現れたことで、二人の間に流れていた微妙な空気が霧散する。
 「あ…あ、優紀ちゃん、お帰り。家元夫人に無理難題言われなかったか?」
 「いえ、今度のお休みに関西の友人宅で泊まらせてもらうんですけど、そのおりにお師匠様に会う話をしたら、お届け物を頼まれただけです」
 ニッコリ笑う手に、袱紗が握られていた。
 家元夫人の持ち物に相応しい、趣味のよい上品な柄の布地。
 「そっか、悪いな」
 「いえ、ついでですから。つくし?」
 「え?」
 「どうしたの?なんか元気ないみたいだけど…」
 心配そうに首を傾げる優紀に、緩く首を振る。
 「ううん、ちょっとここのところ忙しくって疲れちゃったかな。お師匠様も何気にかなり厳しいし…」
 「当り前だ。お前でも俺の弟子には違いないんだからな。下手な所作を仕込んで、恥をかくのは俺なんだ。甘やかせるかよ」
 「…はは」
 いつもの気安い空気が戻ってきていた。
 「できる限りの努力をさせていただきます」
 鯱ばってお辞儀するつくしに、総二郎が苦笑する。
 「ふざけんな、バカ」 
 「バカはよけい」
 顔を見合わせて、思わず噴き出す。
 総二郎の気取らなさが気楽だった。
 時には際どいことも言われて居た堪れないことも度々だし、からかわれて憤慨することもしばしばあったが、それでもそんな総二郎との時間に心を和まされる。
 怒って笑って、拗ねて…。
 恋愛感情を伴わない関係は、居心地が良かった。
 …西門さんじゃないけど、恋愛は一瞬、信頼は永遠、っていうのは本当かも。
 寂しい考え方だとも思ったが、つくしも納得し得る。
 安易かもしれなかったが、総二郎と生きる道もまた一つの選択肢なのかもしれない。
 …まあ、西門さんが何言ったって、この家が認めてくれるはずないよ。
 むしろ、司や類などより格式や歴史から考えれば、なおつくしが認められるはずもなかった。
 「じゃ、二人とも送らせるから、車に乗れよ」 
 「うん、ありがとう。じゃあ、また」
 「お邪魔しました」
 それぞれ総二郎と挨拶を交わして運転手が開けてくれた車へと乗り込む。
 見送る総二郎に手を振り、車が発進すると、さっきまで見送る総二郎を見ていたはずの優紀が車の窓に映ったつくしの顔をジッと見ていたことに気が付いた。
 「…優紀?」
 「え?」
 声をかけると、驚いたように振り返る。
 「なに?」
 「ええ?なにが?」
 「いま、あたしの顔見てなかった?」
 「見てないよ?」
 戸惑ってるような顔には、嘘は見られない。 
 「…さっき、もしかして、二人の話を邪魔しちゃったかな?」
 「ああ…、ううん、大丈夫」
 総二郎も何かを言いかけていたが、別に今日でなくてもかまわないだろう。
 「そっかぁ、それならよかった。なんか深刻そうな顔で話してたから、声かけてよかったのかな、って申し訳なく思ってたの」
 「うん、気にしないで」
 否定するつくしに、優紀が安堵の表情を浮かべる。
 けれど、再び車の窓を覗いた優紀の目は、もう姿の見えない総二郎を探しているようにも思えた。
 寂しそうな横顔にはどこか諦めが浮かんでいて…。
 「…西門さん、つくしといるとすごく素敵な顔で笑えるんだね」





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