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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて269

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 ブーブー、ブーブー。
 ポケットで鳴った音に、類が無言で電源を落として、ポイッとベッドの上に投げ捨ててしまう。
 「…まずいんじゃないの?」
 「別にいいよ、もう業務外」
 大企業の専務の立場にいるものが、それでいいはずがないだろうと眉を顰めるが、つくしが何を言ったって聞くような男じゃなかった。
 「せめて、用件だけでも聞いた方がいいんじゃない?」
 それでも言わずにはいれなくって、控えめに訴えてみる。
 「やだ」 
 「…子供か、あんたは」
 「明後日のパーティ、何着ていくか決めた?」
 何気にスルーされて、再び溜息をつく。
 「それ、本当にあたしがパートナーで出席しないとダメなの?」
 「うん、三田村がちゃんとそう言ったと思うけど、どうして?」
 「どうしてって…秘書としてはそうだろうけどさ。考えてみてよ、あたしの立場でそんな晴れやかな場所へ顔出すなんて、とんでもないことだと思ったりしないわけ?」
 「なんで?」
 「…なんでって」
 言わなくてもわかるだろうに。
 気が付けば、類のお得意のどうして、なんで、が始まっている。
 こういう時、彼が聞く耳をもたないのは経験済みだ。
 きっと、この調子でつくしが疲れて諦めるまで続けられて、言い負かされてしまうのがオチなのだ。
 実際、職務を逸脱しているわけじゃない。
 願わくば、事情を知ってる人や知人に会いませんようにと願うしかない。
 RRRRRRRRR、RRRRRRRRR。
 と、今度はドレッサーの上に置いてあった携帯が鳴って、思わず類の顔を伺う。
 「…誰?」
 問われて確認すると、桜子からだった。
 「えっと、桜子なんだけど、出てもいい?」
 少し考えるように黙り込んで、肩を竦める。
 そのままドライヤーのスイッチを切ると、つくしの頭のてっぺんにキスを落として立ち上がった。
 「いいよ、どうぞ。俺は居間に戻ってるから。電話終わったら、なんか一緒に飲もうよ。あとで来て?」
 「…うん」
 進とは対して飲んではいなかったが、明日は平日だ。
 酒類は勘弁してほしいと思いつつ、携帯の受信表示をタップする。
 「…はい」
 『先輩!大変です』
 いつもは冷静な桜子が珍しく動揺をあらわに意気込んでいる。
 「え?どうしたの?もしかして…おばあさまに何か?」
 桜子の祖母に何かあったのではないかと青ざめかけ、桜子の言葉に絶句する。
 『高坂美也子が、自殺を図って病院に運ばれたそうです!』





 居間に戻ると類がテレビを見ていた。
 大の大人の男だと言うのに、ソファの上に膝を抱えて座る姿はまるで子供のようだ。
 元々類という男は稚気があるわけでもないのに、その地位や能力とは裏腹にそうした姿が妙に似合う。
 「…電話、終わったの?」
 テレビに夢中になっているのかと思ったら、つくしに気が付いていたらしく声をかけてきた。
 どうやら黙って見ていたのも気が付かれていたようだ。
 「どうしたの?さっきから俺をジッと見て…」
 「…あ、うん」
 「横、座れば?適当に並べておいたから、好きなの飲みなよ」
 さきほど桜子に告げられた事実に一杯一杯で、テーブルに置いてある缶ジュースに気が付かなかった。
 「ジュースなんだ」
 単なる言葉の接ぎ穂にすぎなかった。
 「お酒がいい?」
 「…ううん、いい。明日も仕事だし」
 「と、言うと思ってジュースにしておいた。炭酸苦手だったよね?」
 「……うん」
 もう一度、類の隣のソファをポンポンと叩かれて、腰を下ろす。
 三人掛けの椅子の真ん中を空けて。
 チラッと見たつくしを流し見た目はつまらなそうだったけど、特には何も言わなかった。
 バラエティ番組の出演者たちの笑い声が妙に空々しい。
 それがテレビのせいなどではなく、類との間に流れる緊張感のせいだと、ふと気が付いた。
 いや…緊張しているのは自分だけなのかもしれない。
 類はいつものように自然体だ。
 むしろ不自然なほどに。
 さきほど桜子から聞いた情報が真実なのだとしたら、当事者でもあるこの男がそのことを知らないはずがない。
 そう思い立った途端、胸の奥に詰まったような何かがこみ上げて、震える唇を両手で抑えて俯く
 知っていて、どうして平然としていられる。
 どうして、いつもと何も変わらないのだ。
 「また、よけいなことをあんたに吹き込んだようだね」
 「…え?」
 「三条でしょ?あいつ、けっこう情報通だよね」
 …その情報、あんただけでなくどこら辺にまで流してるのか。
 そんな類の小さな独白は、つくしの耳に入ってこない。
 「知ってるんでしょ?」
 「なにが?」
 「み、美也子さんッ、自殺未遂したって。長野の病院に搬送されて、今も危篤状態なんでしょ?」

 動揺も顕わなつくしに対して、類は冷静だった。
 小さく肩を竦めて伸びをしている。
 「類ッ!?」
 「なんで、あんたがそんなに動揺してるのさ?」
 「なんでって…」
 「彼女は俺にもあんたにも関係ない人じゃない。…それどころか、むしろあんたを殺そうとした加害者だよ?どうみても、あんたの顔色はざまあみろ、って感じじゃないよね?」
 ざまあみろ…よくもそんなことが言える。
 このタイミングでの美也子の自殺未遂が類…と自分に関係ないはずがないではないか。
 『…先輩、週末、花沢さんと神戸に行かれたんですか?』
 桜子の問いかけが、ふいに蘇る。
 美也子の自殺未遂の一報で動転していたが、桜子の問いかけの意味をもっと考えてみるべきだったのだ。
 まさか…。
 まさか…と、思う。
 鈍感だと言われるつくしにしては、鋭いほどの直感で。
 船上で知った破局報道記事。
 会社で教えられた、類と美也子のそれぞれの熱愛記事の存在。
 どうして、類とつくしの神戸でのデートを桜子が知っている?
 あの客船は、類クラスの知人友人が利用するようなステータスのものではないと彼は言っていたではないか。
 それなのに…。
 どこから、そんな情報が洩れるのだと? 
 「あんたが…あんたが仕組んだことなの?」





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コメント返信>12/7~3/20まで

こんにちは。いつも応援ありがとうございますm_ _m
下記に、これまでのコメントに対するお礼をしたためました。

こ茶子の日常的呟き
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