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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて268

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 「姉ちゃんが謝ることじゃないだろ?」
 怒ったような困ったような、複雑な進の顔が大人びている。
 「俺の親でもあるんだから、昔みたいに一人でしょい込んでムチャして突っ走るなよ」
 「それは今回のあんたでしょ?」
 つくしに両親の事情を内緒にして、無理をし過ぎて倒れた弟をねめつける。
 「……それは悪かったって」
 そうは言っても、兄弟そろってその性質はお互いさまで、頼りない両親を持つだけに二人助け合い、庇いあい、時には無理しあって突っ張ってきた自覚があった。
 でも結局は、それが空回る結果になって互いにロクなことにならなかったのは経験済なのに、それでも突っ張らなければならない事情がいつも盛り沢山だったのだ。
 「父さんたちのことは、とりあえずは心配しなくていいから」
 「…うん。借金の方もあんたと二人で返してるから目途が立ってるしね」
 一時期は、怪しげな消費者金融からも金を借りていて、すわ一家心中でもしなければならいのではないかと危惧していたが、進の先輩の知り合いだとかいう弁護士のおかげで、順当な返済計画を立てることができてとりあえずは事なきを得ていた。
 …夜逃げとかして踏み倒したことがあったから、普通のところでは借りられなかったのはわかるけど。
 だからと言って、赦せることではなかった。
 両親がこれ以上勝手に金を借りることができないよう、弁護士に手続してもらったことをよいことに、つくしはここのところずっと彼らと連絡をとっていなかった。
 さんざん学生時代も迷惑をかけられ、就職後も金銭的援助他迷惑をかけられどおしだったと言うのにまたもこれ。
 さすがのつくしも堪忍袋の緒が切れたのだ。
 それどころではなかった…というのもある。
 つくし自身も自分のことだけで目一杯だった。
 「あんたは、パパたちと連絡とってるの?」
 「…まあ、あれでも親だし」
 見捨てられないよ…その言葉に、自分よりもずっと大人な弟に、つくしは自省した。
 …そうだよね、親なんだもん。
 甚だ頼りない親ではあったが、それでも『親』だった。
 「そうだね、ごめん」
 「なんだよ、謝るなよ。姉ちゃんが、父さんたちを見限りたくなるのも、俺わかるよ。たださ、以前はそれでも姉ちゃんが頑張ってたからさ。姉ちゃんが頑張った分くらいは俺も頑張ろうかなって…さ」
 「…進」
 「ま、これ以上、迷惑かけられるようならもう縁を切るつもりだって宣言してあるし、父さんも今度こそ真面目に働く、上手い話には耳を貸さないって堅く誓ってたから」
 「…うん」
 それもどこまで信用できるかわかったものではなかったけれど、それでも、母さえもが次があったら離婚すると宣言しているらしい。
 先日聞いた時には驚いたものの、そこまでの覚悟を見せられてはさすがの父も性根を入れ替えるだろう。
 「それに、津久井先生が定期的に様子を見てくれてるし」
 津久井…というのは、進の先輩の知人だとかいう弁護士の名前だ。
 簡単に進から聞いたところによると、さる大企業の顧問弁護士を務めている有能な弁護士だということだったが、そんな多忙な人物の厚意になどいつまでも甘えていていいものだろうか。
 「進、そのことなんだけど、弁護士費用とかどうなってるの?」
 自分と進が依頼人なのだから、べらぼうに高いということはないだろう。
 そして、費用に関して、以前進はお茶を濁していた。
 その時は、いろいろなことに頭がいっぱいで、追及しなかったがどうなっているのか。
 「…えっと、そのぉ」
 気まずそうな進が視線をキョドらせる。
 「いくら先輩の紹介だからって、まさかタダってことはないよね?」
 「うー、その…あっちこちに顔が効いて、ついでだからって」
 「は?」
 要領を得ない進の言い分に、つくしの眉根が次第に険しく寄ってゆく。 
 「ま、ま、まあ、姉ちゃんは気しない…」 
 ガンッ。
 ビクッ。
 つくしがテーブルに拳を叩きつけ、進の心拍数が激しく跳ね上がる。
 にっこり笑った姉の顔が怖い。
 こめかみに浮かぶ青筋は気のせいじゃないだろう。
 「そこんとこ、キビキビと話しなさい。…誤魔化したら、進、あんた、わかってんでしょうね?」
 わかりません…そう答えることができたら。
 …こ、怖い、姉ちゃんの顔、母さんそっくりだよ。





 『お帰り』
 つくしがマンションに帰りつくと、すでに類が帰宅していた。
 電話中のようで、口パクで出迎えてくれる挨拶に会釈で返す。
 そのまま、類が座っているソファを通り抜け部屋へと戻ろとして…、
 「ふぅん、で、報道陣は?そうなんだ。まあ、うちにも取材来るだろうけど、とりあえずは知らぬ存ぜぬ、驚いた…ってところだろ?病院?…行かないよ」
 何やら深刻な感じに、溜息をついて部屋へ戻る。
 食べ物の臭いが付いた気がして、飲んだ後だけれど…とシャワーへと向かった。
 『類さんが、紹介してくれたんだよ』
 シャワーのコックをひねりながら進の言葉を反芻する。
 類には両親の借金のことを知られていないつもりだった。
 それが、進が入院していた当初…ほとんど話の初めから類が噛んでいたことに驚き…憤り…、脱力した。
 すべて知られていた。 
 類の掌の上だったのだ。
 今思えば、進の先輩の知人の弁護士が…などとあまりに上手い話過ぎた。
 これでは上手い話に弱い両親を笑えやしない。
 類からしたらはした金の保証人になって、つくしたちを助け、その掌握の根源である両親の面倒を看る人間…花沢物産の顧問弁護士まで派遣してくれていたわけだ。
 あくまでも類の世話になりたくない自分の為に、進の口まで封じて。
 その目的は…と考えればきりはない。
 けれど、それが純粋な類の厚意だったら?
 彼が言う『あんたの為に、何かしたかっただけだ』という言葉の本意なのだとしたら?
 バカなことだ。
 何度騙されても自分は…という思いと、類の好意だと信じたい自分の間で揺れ動いて。
 パジャマを着て、ドレッサーに座る。
 髪を乾かしながら、心を静め、これから類と相対する前に気持ちを落ち着けたい。
 トントン。
 いつものように、ノックは形だけで。
 つくしの返事も待たずに類が入ってくる。
 それに振り向かず、鏡越しに見つめ合って…。
 「…俺がやってあげるのに、貸して?」
 一々ドライヤーをかけてもらわなければならないほど幼くも、物臭でもないというのに。
 「あのね…」
 「いいじゃん、俺、牧野の世話するの好きなんだもん」
 ペットのように愛玩されて、何も悩まず、ただ甘えてられる性分だったらどんなにか楽だっただろうか。





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