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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて266

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 つくしが目を覚ますと、バーのテーブルにいたはずだったのになぜかベッドで眠っていた。
 寝ぼけ眼なままに温もりを探して、探し出せずにいやいや目を覚ます。
 とっさに自分がどこにいるのかわからなかった。
 けれど、昨夜のことが蘇り飛び起きたところで、二日酔いの頭痛がぐわんときて頭を抑えて呻く。
 うんうん唸ってベッドの上、体育座りの格好で頭を抱えて蹲っていると、ドアがノックされて類が入ってきた。
 「…おはよ、早いね」
 「入っていいって、あたし言ってないけど…」
 言うだけ無駄だと思いつつ一言。
 けれどやはり、
 「うん、でも、ここ俺の部屋でもあるから」
 わかっていたけど、船の中だと言うのに豪奢で大きなベッドには、自分の他にももう一人分、寝た跡がある。
 「もう少しゆっくり寝かせておいてあげたいけど、下船の時間もあるし」
 時間を見ればもう10時近く。
 いつもの起床時間から考えればずいぶんの寝坊だったが、週末で疲れが溜まっているところへ昨日の深酒だった。
 つきたくはないのに、ここのところ習慣になっている溜息をつく。
 「どうする?昼食もスキップするなら、もう少しゆっくりしていてもいいけど?」
 「ううん、起きるよ。お昼ご飯食べたい」
 自覚してみれば、お腹がペコペコだった。
 「…えっと、今日って?」
 類を伺い見れば、昨日言ってた通り今日はどうやらオフのようでいつものようなスーツ姿ではなかった。
 「うん、どうしたい?」
 「……どうしたいって、言われても」
 ニッコリ笑って、ベッドサイドに近づいてくる。
 ベッドの端に座った類が伸ばした手に、思わず体を引いて苦笑される。
 手はつくしの乱れた髪をすき、頭を撫でてくれた。
 その感触が思わぬほど気持ちが良くって、逃げるのも忘れて目を細める。
 「牧野、神戸って来たことあるんだっけ?」
 「ううん、」
 「一時期は震災でずいぶん被害を受けて昔日の影もなかったらしいけど、今では完全復活を遂げて、震災前よりさらに発展してるってことだね」
 「へえ?」
 「牧野さえ良かったら、観光でもする?」
 類の口から出るとは思えない台詞に、意外すぎてつくしの頭が上手く働かない。
 観光?
 …それってあたしの為だよね?
 もちろん、そうだ。
 世界中を子供の頃から飛び回っている類が、いまさら関西に来たからと言って物珍しいはずもない。
 じんわりと胸に湧き上がる喜びと高揚を押し留め、涙ぐんでしまいそうな自分を叱咤する。
 突き放したと思うと寄り添い、苛んでは優しくすることを繰り返す目の前の男は本当に性悪だった。
 悪魔…そんな存在が本当にいるのだとすれば、きっと目の前の青年の姿をしている…つくしはそう思って自嘲した。





 突然の神戸デート?から2日。
 つくしの日常はおおむね平和を取り戻していた。
 薄氷を踏むような危うさはあったとしても、秘書としての毎日にもやりがいを見出していたし、企業人としての類は尊敬すべきところも多い逸材だった。
 「…つくしちゃん、なんだかすっごいリフレッシュしたようなすっきりしたイイ顔してるね?」
 「え?そ、そう?」
 
 給湯室で出くわした高階常務秘書の眞子から指摘されて、思わず両頬に手を当てる。
 類と過ごした週末の3日間は、初日を除けば順調で、神戸観光も楽しかったし、その夜宿泊したホテルでも特に体を求められることもなく、柔らかな時間を過ごすことができた。
 実のところ、酔いつぶれてベッドに連れ込まれたのならともかく、一夜明けたとはいえ改めて類と寝るのには躊躇していた。
 けれど、サクサクとまるで何事もなかったかのように、ベッドに入って寝ようとする彼に、迷って迷って…隣室で眠ったところ…朝が来たらそちらに類も潜り込んでいた。
 結局抱き込まれて寝ていたのは、以前と同じ状態だったのだ。
 以来…諦めて一緒に寝ている。
 体を求められた時はどうするか…という問題はあったものの、それとてピルを服用しているのだから、後はつくしの気持ちの問題。
 自分に契約だからと言い訳してきた。
 けれど『妊娠』がありえないのなら、類が彼女をどう抱こうと彼の自由なのだ。
 下手につくしに類への対する気持ちがあるから、こだわりやわだかまりがあるだけのこと。
 あまり深く考えると気分が暗くなってくる。
 せっかく眞子が、イイ顔をしていると言ってくれたのだから、気分を損ないたくない。 気持ちを切り替え、 今日は何を飲もうかと、持ち寄っている紅茶の缶を物色する。
 「…そういえばさ」
 「え?うん」
 片手間に眞子に頷いていると、これこれ、と美容院でよく見る雑誌を差し出された。
 「さっき、三浦さんに渡されたんだけどね」
 三浦さん…というのは、つくしもよく知っている高階の秘書の一人だ。
 確か子供もいる既婚者の女性で、花沢物産内でも数少ないつくしに反感を持っていない女性の一人。
 年齢的なものもあるだろう。
 「花沢専務、今の婚約者と婚約解消したんだね…」
 婚約解消…破棄ではないことに、驚いて思わず目の前の雑誌を受け取り、開くことを躊躇する。
 破棄ではない…ということは、円満な解消だったのだろうか。
 あの美也子の様子からして、類に執着していることは間違いない。
 けれど、類の言う、『高坂美也子の子供は自分の子供ではない』が本当なのだとしたら、確かにそのまま結婚というわけにもいかなかっただろう。
 一度受け取ったものの、開けずにそのまま返す。
 眞子も素直に受け取って、無理強いはしなかったが、つくしと並んでお茶を入れながら、小首を傾げて自分の手の中の雑誌に視線を落とす。
 「大きな企業には企業の事情ってものがあるんだろうけど、やっぱり個人の幸せって大事だよね」
 「えっと、それって?」
 いったい何を言いだすのだろうか。
 ジッと自分を見る眞子の視線の意味を捉えることができず、つくしは戸惑う。
 「専務も婚約者だった女性にもそれぞれ好きない人がいたらしいよ。政略で婚約ってことになっちゃってたけど、お互いに諦めきれなかったんだって。それで双方話し合いの末に、婚約解消。これで、専務も…専務の好きな人も心おきなく幸せになれるね」
 眞子の慈愛に満ちた眼差しを受け止めきれない。
 「『世紀の政略結婚報道の影に泣いた二つのラブ・ストーリー』、感動しちゃった。秘書課でもそうだけど、他の課でも女の子たちがすっごい騒いでるよ」





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