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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて264

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 類と高坂美也子のスキャンダル記事。
 『熱愛』ではなく、それぞれの奔放な異性遍歴に一つの意図が見えると思うのはつくしの穿ちすぎだろうか。
 美也子を一方的に悪役にするわけではなく、類の女性関係にも触れられていることから、これが花沢家からのリークだとは一見思えないが、それにしては『類と同棲しているらしい女性』についても詳しくは言及されてはおらず、むしろフランス時代の女性関係や、学生時代に恋い焦がれた女性…おそらく静のことについてのみクローズアップされているところが不審だった。
 静とは幼馴染みで、学生時代も二人の関係は公然としたものだった。
 むしろ今更感が強い。
 いくらでも美化できる話で、今は静が一般人なためにあえて写真や名前は公開されていないが、静自身過去にモデルをしていたり、名家の令嬢でありながらたびたび雑誌にも登場する有名人だった。
 F4通を自認する人物や上流階級に属する人々ならば知らない人間はいないだろう。
 テーブルで開いて繰っていた雑誌を閉じ、つくしはその上に顔を伏せて突っ伏す。
 さっきまで明るくポップな曲を演奏していたオーケストラは、いつの間にかムーディなピアノのソロ演奏へと変わっていた。
 それに合わせて薄暗く落とされた照明の仄明るい灯が柔らかく、心地いい。
 今は真っ暗な闇も、昼間とも見まがう強烈な光も居心地が悪かった。
 ふと、その薄闇の中でも影が差して、顔を上げる。
 「…隣、座っていい?」
 「よそいって」
 どの道、尋ねたのは単なる声をかけるきっかけを探していただけなのだろう。
 ケンモホロロな断り文句も無視をして、類がつくしの座っている椅子の隣へと腰を下ろす。
 「…いつまでも戻ってこないから、心配したよ」
 「船なんだから、どこにも逃げたりなんかできるはずないじゃない」
 再びテーブルに突っ伏し、類へは視線を向けない。
 それでも、自分が彼を無視できないことはわかっていたし、そこに彼がいることに馴染んでしまっていることが悔しかった。
 憎まれ口を叩いても、彼を嫌いになれない。
 逃げたい…とすら、今となっては本当にそう思っているのか自分でも疑わしかった。
 「あんたのことだから、海から落ちた…とか、そんなこともありえそうでしょ?」
 「……」
 「なに?反論してこないってことは、自認してるんだ?」
 「……」
 挑発に乗らないつくしに、類が小さく溜息をつく。
 「……怒ってる?」
 「……」
 それでも返事を返さない彼女に、類は体を抱き込む様に腕を回してきた。
 そして彼女の頭に手を置き、自分もテーブルに突っ伏してつくしの顔を覗き込んでくる。
 目を見開いて驚く彼女に、してやったりと小さく笑う。
 「やっと、顔を見れた」
 その言葉につくしが慌てて身を起そうとするも、今度は男の力で抑えつけらていて、容易には体を起こせない。
 「…離して!」
 「離したら、どこか行っちゃうだろ?」 
 「こ、こんなところで!誰かに見られたらッ」
 「今更じゃない?」
 さっきまでと今では事情が違う。
 「こ、これ!これ見て」
 テーブルに伏せた状態のまま、自分の顔の下にある雑誌を指さす。
 「…ゴシップなんて、牧野読むんだ?」
 「読まないわよ!…まあ、美容院で暇つぶしに読むくらい、じゃなくって、あんたのことが載ってるの!」
 けれど、薄く笑って類はつくしを離そうとしない。
 そして、指し示された雑誌に興味を示すでもなく、なおさら身を寄せ、額に額をぶつけてくる。
 …近い。
 薄闇の中でも、これだけ接近していれば、お互いの表情も見える。
 けれど、つくしは今類の顔を見たくなかった。
 自分の顔も見られたくない。
 「どうすればいいの?」
 「え?」
 目だけで類を見ると、その顔はいつものつくしをからかうものでも、誘惑するようなものでも…怜悧な物でもなく。
 ただ真摯に、不安そうな顔をするばかりで。
 …ずるいよ、そんな顔するなんて。
 ひどいのは類の方なのに、まるで自分が彼を苛めているような気分にさえさせられる。
 「…その記事、俺が流した」
 「っ!」
 「ホントのことだよ。婚約破棄はもう決まってる。高坂美也子の父親も納得していて、後は体裁だけだ」
 「……美也子さんは?」
 つくしを突き飛ばした時の、美也子の燃えるような目と悲痛な声が脳裏に蘇る。
 「さあ?さすがに、折れるでしょ?て、いうか、もう本人の承諾は関係ないよ。あとは両家と会社の問題」
 そう言い切られてしまえば、つくしに口を挟む余地はない。
 そして、…おそらく美也子のことに関しても、つくしが気にすることこそおこがましいに違いない。
 「あたしには関係ないよ」
 「…うん、関係ないね」 
 けれど、あっさり肯定されてしまえば、それが寂しいなんて自分はどこまで天邪鬼なのか。 
 「あんたに関係あるのは、俺とあんたとの間のことだけだ」
 「…あたしとは関係なんて」
 「あるよ。少なくても、俺はある。何が不満なの?どうして欲しいの?」
 チュッとつくしの額にキスを落とし、類が体を起こす。
 やっと解放されて、つくしもソロソロと体を起こした。
 けれど、まだ真っ直ぐに彼を見返すことができない。
 いま、類を見てしまえばただ恋しさに、すべてに目を瞑り唯々諾々と受け入れてしまいそうで怖かった。
 「あんたが何を拘ってるのかわからない」
 わからない。
 本当になぜなのだろう。
 ただ、胸の奥に、心の奥深くで、何かがわだかまって…。
 俯いたまま答えないつくしに、類が再び溜息をついて促す。
 「…そろそろ、部屋に戻ろう」
 「あたしは、ここにいる」
 立ち上がりかけて、つくしの言葉に類が再び椅子へと腰を下ろす。
 「…じゃあ、俺もここにいるよ」
 「あたしは、部屋に戻らないから」
 困った様に笑んで、類が傍を通ったバーテンダーを呼び寄せる。
 「いいよ、じゃあ、ここで夜明かししようか。なんか、飲もう?…俺はドライマティーニ、こちらの女性には…アプリコットフィズ(※)を」



※酒言葉…振り向いてください





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