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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて260

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 「…なんでこうなるかな」
 呟いた類が、つくしから視線を反らし、片手で顔を覆ってしまう。
 唐突にぶった切られた緊迫感に、つくしは肩透かしされ、気が付けばおろそかになっていた手元に気が付き、つけっぱなしだったドライヤーのスイッチを切る。
 類の髪も、いつの間にかすでに乾いていて、つくしが話に夢中で類の髪形を整えることにおざなりになっていた結果が、彼の頭頂部でチョンと立ってしまった寝癖に出てしまっていた。
 …真っ直ぐに見えて、クセあるんだ。
 癖が付きにくい髪質のつくしの髪は、滅多に寝癖が付かない。
 不思議に間抜けな寝癖も、類の場合には、整いすぎて冷たくなりがちの彼の美貌を愛嬌あるものに見せてくれる。
 人はF4を見て、あまりに完璧すぎる外観であるがゆえに、偶像視しすぎて彼らもまた一人一人の生身の人間であることを忘れがちだった。
 けれど、彼らもまた傷つけられれば血を流し、哀しみ涙することさえあるのだ。
 それを知っているからと言って、つくしにとっても類は扱い難く、太刀打できない相手でもあった。
 「…脅したいわけじゃない」
 「手を回したんでしょ?」
 「だって、あんた逃げるつもりだったんじゃないの?」
 部屋を探そう、転職しよう、そう思った時念頭にあったのは類の結婚、そして彼と交わした契約の満了であって、たとえ不当に交わされた契約であっても、類を裏切るようなマネをするつもりは微塵もなかったのだ。
 「逃げないよ」
 顔から手を離した類の顔は、それでもつくしを信じた風ではなかった。
 その顔には…。
 …どうせ、また裏切るつもりでしょ?
 そんな声が聞こえてきそうで、つくしは内心溜息をつく。
 「ね、あたし、もう寝てもいい?」
 いつまでも平行線の会話は疲れる。
 これ以上話していても、類の主張は変わりそうにもなかったし、おそらくつくしの海外留学に変更はないのだろう。
 …今日は楽しかった。
 素直にそう思う。
 だから、これ以上不毛な会話を繰り返して、嫌な気分で眠りたくなどない。
 …船じゃあ、逃げられないし。
 正直、そんなところだ。
 感情の伺えない目でジッとつくしを見上げる類は、返事を返してくれず、居心地の悪い気分を味わう。
 「…えっと」
 「……」
 「そ、そうだ!…あんた、片頭痛とかない?」
 「ない」
 …そりゃそうか、そんなそぶり見たことないものね。
 しかし、つくしとしてはお愛想でも、「疲れた時には、あるかも」とか、「どうして?」くらいは言ってほしかったと思う。
 けれど、類にそんなお愛想を求める自体が無理なことは考えてみなくてももっともなことで。
 「…まあ、それでも、日頃過労してるんだろうから、頭、揉んであげるよ」
 「揉む?頭を?」
 「うん」
 話題を変える場持たせ的に提案してみたものの、口に出してみればそれがいかにも良い考えな気がして、いささか強引にことを進める。
 不審そうだった類も、諦めたように素直に目を閉じ、体の力を抜いた。
 柔らかな髪の中に指を入れわずかに力を籠める。
 強弱をつけて揉みこむと、類の顔が気持ちよさそうに和む。
 …なんだか満腹の猫みたい。
 類もたいがいつくしを動物に例えることがある。
 けれど、こうしていると類の方こそ猫そのままで、微笑ましい気持ちになる。
 互いに無言で、穏やかな時間が過ぎ…一心不乱に類のあまたをマッサージしていたつくしだったが、いつの間にか類の目が自分を見ていることにやっと気が付いた。
 視線と視線が合わさり、目を反らすことができない。
 磁力。

 猫みたいだった青年の雰囲気が、甘く濃く蠱惑に満ちて、途端に男に変わる。
 濃厚なフェロモンに、喉が渇き、絞り出した声の語尾が掠れた。
 「…あ、も、もう、やめる?」
 震える自分の声が、つくしに自分の中の惧れを自覚させる。
 真面目なままの類の目がふとそれて、ドッと肩から力が抜けた。 
 けれど、その安堵も一瞬のことで…。
 類の頭に潜り込んだままだった両手をとられて、両方の指先に口づけを落とされる。
 チュ、チュ、チュ。
 軽いリップ音と柔らかな接触が、ひどく恥ずかしい。
 もう類の前では秘密など何一つないほど、もっとすごいこともしてきたのに、ただそれだけのことが、今、つくしには身悶えするほどに恥ずかしくて、戸惑い、どうしていいのかわからなくないほどに動揺させられてしまう。
 「…る、類?」
 柔らかな求愛。
 手の甲へのキスが、指先にかわり、類の柔らかな唇の感触にカッと頬に朱が上る。
 「…っ!?」
 ねっとりと含まれた類の口の中の熱さ。
 濡れた感触。
 欲望を宿した眼差しが、つくしの体に熾火のようなジワジワとした熱を生む。
 いつの間にか、つくしの膝の上から体を起こしていた類が、片肘を立て伸び上がる。
 そして、ゆるく拘束したつくしの露出した手首や腕をキスしながら這い登り、彼の見かけとは裏腹に大きく逞しい手が、彼女のバスローブの裾を割って素肌に触れた。
 だが、膝に触れる手は時々、気紛れに太腿を這い登って撫でるだけで、それ以上には進もうとはしない。
 それがジレったくて、それ以上の快楽を知るつくしの下腹を鈍く刺激する。
 ギュッと瞑った頬が熱い。
 類がどんな顔をして自分を見ているのか、それが怖かった。
 さぞ淫蕩な女だと思っているだろう。
 ホンの少し触られただけで欲情している。
 そう、それは確かに類への欲情だった。
 以前に言われたことがある。
 『少し前まで処女だったなんて信じられないくらい、いやらしい女になった』と。
 けれど、つくしは女だった。
 心はどんなに高潔に保とうとしようとも、好きな男に触れられれば欲情するし、馴らされた体は欲望に燃えたつ。
 もう子供じゃない。
 幼かった少女ではない。
 今のつくしは、女としてのそんな自分の性を否定しようとは思わなかった。
 「…してもいい?」
 「……」
 「あんたを抱きたい」 
 初めて問われた問いに、つくしは意味も分からず瞼を開ける。
 底が知れないと思った昏い目が、熱い何かを宿してつくしをジッと見つめていた。
 それは『愛』なのだろうか?
 類の言う束縛の意味は、つくしを惑わし抑えても抑えきれなかった期待と不安との間を振り子のように揺さぶった。
 「あんたがダメだって言うならしない。でも、俺はあんたと寝たい、セックスしたいんだ。あんたは、牧野?」
 問われて心のうちを探る。
 類の身重の婚約者が。
 類の家が。
 彼の気持ちが。
 さまざまな現実が。
 つくしは、それらすべてに今は目を塞ぎ、耳を塞ぎ、
 「…いいよ。あたしも…寝たい。あんたとセ、…ックスッ…したい」
 燃える体の疼きのままに答えた。





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