FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて256

 ←昏い夜を抜けて255 →昏い夜を抜けて257
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 カレの買ってくれた素敵なドレスに靴やバッグ。
 買い与えられた高価な貴金属を身に着け、いつもとは違うヘアやメイクでまるで魔法にかかったシンデレラのような大変身。
 高級車でのドライブ…は、諸事上により遠慮させてもらったが、ドレスアップした姿で夜のクルージングを楽しんで、雰囲気のある船上レストランから夜桜や夜景を望んでの美味しい食事。
 目の前にはうっとりするほど美しい王子様。
 怖いくらいに、セオリーなデートコース。
 カチンと小さく打ち合わせて口に含んだワインに、つくしの頬がほんのりと赤く染まった。
 「……何企んでるの?」
 「すごい言われようだね」
 困ってる顔は嘘をついていたり、なにか企んでいるようには見えなかったけれど、そうして信じた事例が今ここにいる。
 「だって、なんで…デートだなんて」
 「別にデートしたの初めてじゃないじゃん」
 「…そりゃそうだけど」
 基本的に類はいまだに三年寝太郎で、家に引きこもるのが好きな男だ。
 高校生の時もよく寝る人だとは思っていたが、大人になって再会して一緒にいることが多くなるにつけ、つくしが彼に王子様の幻想を抱くことは少なくなっていた。
 それは裏切られたからとか、騙されたからとか、そういうことだけではなくって、類の生活や性格そのものがいわゆる『王子様』のイメージとはかけ離れたものだったから。
 やはり幻想は幻想。
 夢の世界(妄想か?)の住人と、実在の人間とは違うのだと、再会して早々類はつくしの夢をうち砕いた。
 そもそも、女性たちの憧れを一身に受けていたF4の男性たちの中で、その女性たちの夢を具現している男など一人もいなかったではなかったか。
 (今を知らないけれど)暴力男で子供みたいだった司。
 女と見ればその尻を追い掛け回す節操なしの女タラシの総二郎。
 あきらでさえ、かつては不倫にいそしむとんでもない青少年だったのだ。
 そして長らく幻想を抱いてた類といえば…。
 テレビっ子で、バラエティ番組が大好きな引き籠り。
 別に美形がバラエティ番組を好んでいたからと言って咎められる筋合いはなかったが、かなりお下劣な番組も好んで見ていて、意外にもアニメもそれなりに通じている。
 花沢物産の専務という立場上、なんだかんだと激務なので体裁は保っているが、たぶん仕事がなければ学生時代同様テレビを見るくらいで、ほとんど一日中寝ていているのではないかというくらいの残念さだった。
 むしろ、現在、毎日6時間程度の睡眠時間で我慢していることの方が驚きだ。
 その分、数少ないオフは睡眠にあてられ、必然一時期一緒に寝ていたつくしも付き合わされることも少なくなかった。
 つくしは早寝早起き、3食はキッチリとる方なのである。
 けれど、人肌は意外なほどに気持ちがいいもので、しかも抱きしめる…というよりしがみ付かれて抱き枕状態では抜け出すのは難しい。
 だが…最近わかってきたサイクルなのだが、類は使用人がマンションに掃除に入る時だけは家に居たがらない。
 たいていは昼食は外食で、その間に使用人が入る。
 だからそういう時はつくしを散歩に連れ出してくれることもあり、それがデートといえばデートと言えなくもなかった。
 「…さっき紹介した、オーナーの田野倉さん」
 「え?うん」
 この船を所有している旅行会社の社長は、意外にもつくしや類とも年の近い青年で、入船する時にすでに紹介されていた。
 中々のハンサムでいわゆるハイスペックな男性だというのに、すでに既婚者だと聞き驚いたものだった。
 …やっぱ、若くてお金持ってるからと言って、誰も彼も浮かれてるわけじゃないわよね。
 若干ジト目で、目の前の男を見てしまっていたかもしれなかった。
 「彼、名の知れた大きな会社を経営している資産家一族の2世。実家はいまだに羽振りもいいから名刺、なくさないで」
 「……」
 「不満そうだね?」 
 つくしの不快な気持ちが伝わったのだろう、類が小首を傾げて確認してきた。
 「…別にそういうわけじゃないけど」
 「前にも言ったけど、人脈は力だ」
 「……」
 「どこでどう自分のプラスになるかわからないから、チャンスは逃さない方がいい」
 さっきまでの美味しい食事や(認めたくはないが)浮かれた気持ちが、シュンと萎んでなんだか味気ない気がして、つくしはしょんぼりとフォークとナイフを置いた。
 「これって、やっぱり仕事だったの?」
 自分で口にして、この落胆した気持ちの理由に思い当たって、つくしは羞恥に唇を噛みしめた。
 「傷つくよ」
 唇を指先でなぞられ、思わずのけぞる。
 けれど、困ったように小さく微笑みかけられ、再び視線を反らせた。
 「…あたし、本当にあんたがわからない」
 「仕事じゃないよ」
 「倉敷会長の時もそうだけど、どうして誰彼となく、あたしに有力者と接触させようとするの?」
 前々から疑問に思っていたことだった。
 類は、そのたびに人脈は力だと言った。
 実際、どの人も類が紹介する人は世間的にも名の知れた人たちだと言うだけでなく、つくしを色眼鏡で見ない稀有な人たちだった。
 人脈は力…まさに類が言う通り、つくしがその気なら彼らを足掛かりに仕事に役立てることができるだろう。
 類はそれを狙っているのだろうか?
 愛人としてだけでなく、仕事でも役にたてと?
 つくしの暗い顔に、類が大きく息を吐く。
 「俺の行動って、あんたが思うほど複雑じゃないんだけどな」
 「…あんたは複雑だよ、わけがわからない」
 「あんたに何かしたいって、ただそれだけだと思わないの?」
 素直に彼を信じるにはあまりにいろいろなことがありすぎた。
 つくしは緩く首を振り、再びフォークとナイフを手に料理に向かい合う。
 「どう思えっていうの?…あたしに酷いことをして脅したと思ったら、優しくしたり。あたしのこと嫌ってたのに、急に結婚してもいいとかわけのわからないこととか言いだしたりするんだもん」
 嫌い…。
 類はぼんやりとその言葉の意味を考える。
 「俺…あんたのこと、嫌いって言ったっけ?」
 「…だって、道明寺を捨てたからあたしのことが憎かったんでしょ?静さんを重ねて」 
 自分で言ってて哀しくなった。
 好きだとかそういう感情がない相手にだって、嫌われることは辛い。
 ましてや、目の前の美しい青年にそう思われていることを自覚するのは、さらに苦しかった。
 ぼんやりと滲んでしまいそうな視界を瞬きで堪えて、冷め始めたエビを口に運ぶ。
 「そうだね、ムカついてたのは事実だよ」
 「…そう」
 肯定されて、ショックを受けるなんてホント、バカみたいだ。
 「でも、あんたを嫌ったことは一度もないよ」
 「……」 
 「嫌いな人間と俺は飯食ったり、一緒に寝たりなんて絶対できない。好きだって言っただろ?」
 「……言われてないよ」
 少なくても、つくしに覚えがない。
 類が言ったのは、『つくしが類のものになるなら、好きだと言ってもいい』。
 それが、類の言う『好きだと言った』にあたるのだろうか。
 小学生でもその意味の違いなど、わかりそうなものだろうに。
 「あんたはベベみたいなものなのかもしれない。…手放したくない」
 もう二度と…捨てられたくない。
 類の言葉はいつも言葉足らずで、鈍感なつくしにわかる言葉で上手く話すことができなかった。
 「…ベベか」
 「ダメ?」
 「……」
 もちろん、ダメに決まってる。
 つくしはただ愛玩されていればいいペットなどではないのだから。





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【昏い夜を抜けて255】へ
  • 【昏い夜を抜けて257】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【昏い夜を抜けて255】へ
  • 【昏い夜を抜けて257】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク