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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて255

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 戸惑うつくしに対して、楽しそうな類に、つくしが憮然として唇を尖らせる。
 チュッ。
 「だから!」
 「…大声出さない方がいいんじゃないの?」
 ギョッと周囲を見回せば、通りすがる人々が興味津々、つくしたちを見ている。
 …くそ、ただでさえ目立つ男と一緒なのに。
 言いたいことも言えずに、ますますつくしの顔が子供っぽくフクれて、類が楽しくなってしょうがない。
 が…。
 「どうせなら、もっと楽しそうな顔してよ?」
 「…こんないきなりわけわからない行動とられて、なにをどう楽しめばいいって言うわけ?」
 再び車の前に連れて来られて、つくしが蒼褪める。
 若い身空で天国を見るのも御免だったが、よりにもよって婚約者つき!の有名人の男と心中ではシャレにならない。
 そんなつくしの心の声は、もう見え見えで。
 ときおり、口からも思っていることが丸聞こえなつくしに、類も苦笑する。
 「大丈夫、今日はもう、俺は運転しないから」
 「…今日は、って、あたし的にはもう二度と運転しない方がいいと思うんですけど」
 何気に歯に衣着せぬ物言いに遠慮の欠片もなくなってしまっている。
 「はは、俺はけっこう好きなんだけどな。三田村にも止められてるから、滅多に運転できないのが残念なことなのに」
 「……なんで、今日に限って止めてくれなかったのよ、三田村さん」
 恨みがましいのは仕方ないことだろう。
 危うく、明日の朝刊に類と二人で載ってしまうところだったのだ。
 「おおげさ」
 「…え?」
 「さっきから、何気に牧野、失礼だよね」
 「な、な、なにが…むがっ」
 唇を類につままれ、タコよろしく引っ張られる。
 「くっ!くくくく、あんた、その顔」
 「むぐっ、離しなさいよッ!あんたは、ガキか!?」
 車を通り過ぎ、歩く道行きはとても楽しい。
 …類と歩く道はいつも楽しかった。
 最初のうちは緊張して、ドキドキしたけど、ドキドキはそのままに、回を重ねるごとに二人の距離は近づいた。
 …でも、こんな風に二人で歩くなんて本当はいけないことなのに。
 どこにどんな目があり、どのようなスキャンダルが持ち上がらないとも限らない。
 「俺、隠すつもりないし」
 「……」
 「必要もないよ」
 あっさりという類の顔には、本当に何の気負いも見受けられない。
 「そんなわけにはいかないよ」
 「…足、痛くない?」
 「え?」
 唐突に話題を変えられ、つくしは戸惑う。
 けれど、
 「どう?」
 もう一度問いかけられ、いったんは矛を収めて、足を確認する。
 「…ん、大丈夫。こんなフォーマルな格好のわりに、靴はわりとベタ足を選んでくれたから」
 どこへ行くつもりか知らないが、最初から歩かせるつもりだったのだろう。
 華奢なつくりではあるが、ほとんどヒールのないとても履き心地の良いパンプスを履かされていた。
 「またヒールが折れて、おんぶさせられるんじゃ、俺がたまったものじゃないでしょ?」
 「ああ、はは…そうだね」
 思い起こせば、靴のヒールが折れて、類におんぶされたこともあったと思い起こす。
 気が付けば、本当にたくさんの時をこの美貌の青年と過ごしてきた。
 高校生の時の憧れだった人が、恐怖の具現者にかわり、脅迫者へ。
 そして現在、つくしにとって彼は何者なのだろう。
 …彼にとってのつくしは。
 だが、今、類がつくしに何を望んでいようと、告白しようと、結局のところ、類はいまだつくしの脅迫者で、そうである以上この先いくら共に歩もうと平行線のまま、交わることはないのかもしれない。
 やがて、時が来て、この関係が解消された時、彼女に残されているのはなんなのだろう。
 司の時のように、長い時忘れることができないだろうことは今からもうわかっていた。
 けれど、いずれはやはり、類のこともまた思い出の一つとなり、遠く懐かしく思うことができるようになるのだろうか。
 つくしは小さくクスリと苦笑する。
 思い出も何も、当の類は目の前にいるというのに。
 それでも別れを予感し、確信し、そうしなければならないという決意は常にある。
 ならば、やはりこのいま、この時もつくしの悪夢の一環なのかもしれない。
 甘く切なく、優しい…哀しい夢。
 「…いいよ」
 「え?」
 何か聞き逃したのかと、つくしが類を見返す。
 「何度でもおんぶしてあげる。あんたがこの靴を履いて逃げてしまっても、俺は諦めない。必ず探し出すよ。だから、あんたはこの靴が連れて行ってくれる良いところで待ってて」
 「…逃げるのに、待ってるの?」
 「待たないの?」
 問い返されて、困ってしまう。
 「…ほら、見てごらん?」
 「なに?」
 類に指さされた方向へと目を向ける。
 「うわあ」
 満開の桜。
 桜。
 桜。
 桜。
 公園の入り口に見える桜が、まるで夜目に浮かび上がるよう凄艶な美を咲き誇っている。
 見惚れて口を開けたまま花を仰ぎ見ているつくしの口の中に、飴玉でも入れてやりたい誘惑に耐えて、彼女の手を引き公園の入り口へと歩み進む。
 「え?なに、公園入るの?」
 「散歩しようよ、あんた、こういうの好きでしょ?」
 「…うん」
 夜とはいえ、まだ宵の口。
 カップルたちで賑わい、木々の向こうに遠く夜景の明かりがロマンティックに眩い。
 つくしより体温の低い大きな手に引かれて歩く道は、どこかふわふわとして非現実的だ。





 開けた先に、人々のざわめきが聞こえる。
 金曜日の夜とはいえ、ずいぶんな賑わいで、ふと気が付けば、どうやら列をなしているようにも思えた。
 「…類?」
 「知り合いが、新しく旅行会社を設立したんだ」
 公園を抜け、埠頭に足を踏み入れれば、それぞれに着飾った男女が船の前に佇み、入船を待っている。
 「ちょっとリッチな階層をターゲットにしたナイトクルージングツアーだって。時期としてはクリスマスやバレンタインデイには及ばないけど、今なら花見を兼ねてけっこう人気らしいよ」
 「…えっと、もしかして、これ乗るために来たの?」
 「そう。たまにはいいでしょ?」
 言われて、改めて目の前の巨大な船舶を仰ぎ見る。
 正直、クルーザーにはあまりいい思い出がなかった。
 と、いうか、なぜか人も羨むF4という超絶美形セレブ集団の青年たちと関わっているのというのに、彼らとの思い出は楽しいこともあったがたいてい迷惑をかけられたことが大半で。
 「う~ん」
 「ぷっ、ホント、あんたって面白い。女はこういうの好きなものでしょ?」
 悩むつくしに、類が噴出して笑う。
 つくしといる時、類は本当によく笑うようになった。
 表情自体が豊かになってきているのかもしれない。
 そんな類につい見惚れてしまった自分を自覚し、軽く咳払いで誤魔化す。
 「…しょうがないでしょ。あんたたちのせいであたしの人生は何かと波瀾万丈だったんだから」
 「まあ、ね。それに反論の余地はないかもしれないか。じゃあ、今日は俺と楽しい思い出に変えようよ」





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