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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執②

昏い夜を抜けて254

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 「…ちょっと、待ってよ。仕事…終わりって」
 「だから、デート」
 車を運転しているのに、にっこりつくしを見て微笑む類の向こうに天国を見た気がした。
 あまりに美しいから…ではなく、
 「やだ!よそ見しないでッ」
 キキーッと音をたてて、急ブレーキに「ぐえっ」と食い込んだシートベルトを抑える。
 「…赤だね」
 「赤だね…じゃないでしょ!急ブレーキなんかして、突っ込まれたらどうするの―――ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃ」
 もう悲鳴が止らない。
 急ブレーキを踏んだと思えば急発進、急ハンドル、蛇行運転の嵐だった。





 ブッブ――――――――ッ。
 キキキキキキキッ~~~~ッ。
 「バカ野郎ッ!どこ見てんだッ!!」
 今日何度目かわからないクラクションと罵声に、つくしはグッタリと項垂れる。
 優雅な見た目とは裏腹な類の運転は破壊的だった。
 やっと到着してくれた目的地。
 駐車場に類が車を入れた時には、すでに意識は朦朧としていた。
 「牧野、ついたよ~」
 「……ついた、よ、じゃないでしょ。うぷ」
 こみあげそうになった吐き気に、ゲッソリと口を抑えた。
 「平気?車に酔った?」
 …そりゃ、酔いもするわよッ。
 とんでもない。
 今まで運転手つきの車に乗っていたから、類のこの運転を知らなかった。
 知ってたら、絶対に乗ったりしなかった。
 運転させなかった。
 ペーパードライバーのつくしが運転した方がまだマシだったとさえ思う。
 「…あんた、いつ免許とったの?」
 つーか、とれたの?
 まさか、高校生の子供でもあるまいに、無免許運転なのではないだろうな、とわずかに胸が動悸打つ。
 よほど胡乱な目で見ていたのか、類が苦笑した。
 「免許、持ってるよ。あっちの大学時代に、ちゃんと教習所の教官呼んでとったから」
 「…なんか、日本語がおかしい気がするけど、じゃあ、一応試験受かってるんだ?」
 「一応が引っかかるけど、そこは安心していいよ?」
 逆に、運転免許取得試験に疑惑が生まれる。
 よもやそんなものにまで、花沢家の権威か金かが影響を及ぼしているのではあるまい。
 「て、ことで、お姫様。顔色悪いけど、動ける?」
 「……ん、平気。少し吐き気するけど、外の空気吸えばね」
 若い頃には遊園地のジェットコースターでならした三半規管だ。
 その自分を押して車酔いにするとは、大したものだとも思うが、とりあえず、車から出たい。
 類にエスコートされて車を降りると、通りすがる男女の視線が集まる。
 慣れっこではあるはずなのだが、ここのところ類と二人ででかけることがなかったから居た堪れなかった。
 引き寄せられた腰をもぎ離すようにして、離れようとするもガッチリと抑えられて引き剥がせない。
 「…いいよ、こんなところでエスコートしてくれなくって」
 「だって、気持ち悪いんでしょ?」
 「平気」
 「…それは良かった」
 「ちょっと!平気だって言ってるじゃないのよッ」
 アッサリ頷いたくせに密着したままの男を、つくしがねめつける。
 「だって、触っていたいんだもん」
 「……」
 絶句した彼女に甘く微笑み、店へと入店する。
 「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
 いかにも店の責任者らしい三つ揃えの紳士を筆頭に、店員が総出で出迎える。
 誰もが知るブランドブティックでも、類の知名度は音に聞こえているようで、店内の客が小さく歓声を上げた。
 中には、
 「F4」
 「…花沢の」
 という小声も聞こえる。
 さすがに殺到されるようなことはなかったが、つくしは居心地が悪くて顔を俯けた。
 「見繕っておいてくれた?」
 「…はい、奥のお部屋にご用意が」
 鷹揚に頷いた類に従い、煌びやかな店の奥へと足を踏み入れ目を見張った。





 白地に淡いピンクの花が開いた襟ぐりを飾る清楚なシフォンサテンドレス。
 つくしだったら決して選ばないような色味と、デザイン。
 可愛らしいデザインなのに、シックに前髪をすべて結い上げた髪形が童顔のつくしをむしろコケティッシュに見せて、よく似合っていた。
 「どう?」
 「…なんだか、あたしじゃないみたいだけど」
 「ふふ、そうだね。…あんまり牧野のことを知らない人が見たら別人に見えるかも」
 照れてドレスの裾をつまんだり落ち着かない彼女に、類がにっこり微笑み、
 「…後ろ、上手く結べていないよ」
と、自らバックリボンを器用に結んでくれた。
 そしてドギマギと恥じらっている首筋へと唇を寄せ、チュッ。
 小さな音を立てた濡れた感触に、つくしがビクッと驚いて振り返る。
 「る、類ッ!?」
 ちょうど、背中に顔を寄せていた類の上目遣いと目が合い、一気に茹蛸ってしまう。
 つくしが焦って周囲を見回すと、店員たちが生温い笑みを浮かべて二人を見守っていた。
 そのうちの若い女性店員の何人かは、類の美貌に当たられ、まるで自分がキスを受けたかのように顔を赤らめている。
 …あ、ありえないっ!
 いくら一般客(それでも、お金持ちなのだろうけれど)とは隔たった個室だとはいえ、何人もの店員がいる衆人環視の中だ。
 突然、店に連れて来られたと思ったら何着ものドレスを試着させられ、簡単にとはいえ美容院ばりに髪やらメイクやら弄られて半ばパニックだった。
 今は人の目があるので、つくしも我慢していたというのに。
 何が何やら。
 …まるでこれじゃあ、昔道明寺に連れまわされてた頃そのまんまじゃない!
 「すごく、綺麗。良く似合ってるよ」
 素直に褒められ、これ以上赤面しようもないと思っていたのにさらに熱が上がりそうで眩暈を覚える。
 「…どういうことなのよ」
 手に持った毛皮のボレロをつくしへと類自ら着せかけてくれるために身を寄せたところへ、小さな声で抗議する。
 「ん?デートって言ったじゃん」
 言われた?
 言われたかもしれない。
 「…それにしたって、こんな、あたし、着せ替え人形じゃない!」
 「こんな可愛い着せかえ人形だったら、いつもポケットに入れて持ち歩いてもいいかもしれないね」
 「………は?」
 「昔、静によく付き合わされたよ。別に俺も嫌いじゃないけど、とりあえずは遊ぶ時間もなくなるし、店出ようか」
 「花沢類ッ!」





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