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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて253

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 「…牧野さん、来週、専務とパーティに出席して?」
 第一秘書の三田村に命じられれば、つくしは嫌とは言えない。
 現在、婚約者との間が微妙で、独身の類には決まったパートナーがいない。
 そうとなれば、パートナー同伴を必須とするパーティでは、女性の秘書が同伴者となるのは当然のことで、それを拒絶できる立場ではないのは確かだった。
 …パーティか。
 正直、つくし的には類との関係がなくてもパーティが嫌いだった。
 過去を振り返ると、それだけで気持ちが滅入る。
 道明寺家の面々に出くわす心配は今のところないだろうが、この先…桜子の情報が正しいとすれば、司も日本に戻ってくるのだろう。
 類の秘書をしている以上、いずれはどこかで彼と出くわさないでいることはできない。
 それでも、さすがにどんな顔で会えば良いのかつくしにはわからなかった。
 かつてのように未練があるわけじゃない。
 また、今更守るべき意地があるわけでもない。
 でも…。
 とりあえずは、目先のことだと気持ちを切り替える。
 秘書の立場としては類に同伴するのもおかしなことではなかったけれど、つくしの個人的立場として彼の同伴者となるのはいかがなものか。
 …非常識もいいところだよね。
 認めたくはないが、いまのつくしは『愛人』と見なされる立場にある。
 それが微妙になっているとはいえ、婚約者のいる男とパーティで連れ立つのだ。
 もちろん、誰もが知っている事実なわけではなかった。
 むしろ、世間的には知られてはいない。
 それでも、類の父や母はどう思うだろう。
 美也子は悲しむだろうと思うと、とてもじゃないが平然としていることなどとてもできるものではなかった。
 しかし、そうとはいえ、さすがに、会社で類と個人的な会話をするのは憚られる。
 また、秘書として彼のパートナーを断る正当な理由も思いつかなかった。
 現在、類の秘書はつくしを含めて4人。
 第一秘書の三田村を始め、つくしを覗いて全員が男性。
 つくし以外の適任者がいない。
 …他にめぼしい女友達とかいないのだろうか。
 しかし、類の性格ではあまり期待できそうもなく、溜息をついた。
 鬱々とコーヒーを入れながら、ついグルグル考え込んでしまう。
 「…牧野」
 突然呼びかけられて、ハッと我に返る。
 「わっ、あわわわわ」
 気が付けば、カップのコーヒーがなみなみと注がれ、これでは微塵もミルクや砂糖を入れることができそうもない。
 …てか、持ち運べないよ~これじゃあ。
 「すごいたっぷりだね」
 類にクスリと笑われ、赤面する。
 …誰のせいだと思ってるのよ。
 マンションでは言えても、会社では人目もあって口に出せない。
 「すいません、いま、入れ直しますので」
 「いいよ」
 スッと伸ばされた手が、食器棚に置かれたカップを手に取り、なみなみと注がれた方のカップを素早く持ち上げ、空のカップへと半分ほど移してしまう。
 「…ちょっと零しちゃった」
 「あ…いや」
 なんて言っていいのかわからない。
 自分でもやるだろうが、いかにもセレブ然とした男がやるには子供じみていた。
 「牧野は砂糖もミルクもたっぷりだよね」
 頷く間もなく、さっさと類が入れてしまう。
 「じゃ、こっち、牧野飲んでね」
 「…はあ、ありがとうございます」
 …いいのか、あたし。
 よりにもよって上司…しかも会社の次期トップにコーヒーを入れさせ?ミルクや砂糖の世話までさせて、自分はいったい何様なのだと思う。
 「それ飲んだら、外出するからついてきて」
 「…はい」
 チラッと目の端で覗いた時計は、すでに就業時間間際だった。
 …はあ、今日は残業か。
 もちろん、言われれば否やはない。
 それでも類の秘書としての仕事は不慣れなことばかりで、肩が凝った。
 この時間からの外出となると、打ち合わせか、どこかの会社の重役との会食だろうか。
 第一秘書の三田村ではなく自分が指名されたのだから、それほど重要なものではないとは思う。
 だが、打ち合わせであれば夕食がいつになるかわからずひもじいし、会食であれば食事は出るものの緊張で食べた気がしないのでなお憂鬱だった。
 「じゃ、20分後、下の駐車場で」
 「…はい」






 身支度を整え、化粧を直し、気が付けば言いつけられた時間はあと残すところ5分だった。
 …ま、まずい。
 社会人に遅刻などありえないし、多忙な類を待たせるなど言語道断。
 急ぎ足で到着した地下駐車場に、類と三田村が待ち受けていた。
 つくしを待っている間に、三田村が明日のスケジュールや諸々を口頭で確認していた。
 「…OK、じゃあ、明日はそっちに車回して」
 「かしこまりました」
 ふと顔を上げた類が、つくしに気が付き優しく微笑みかける。
 「待ち人が来たみたい。じゃあ、後頼むよ」
 一礼した三田村に片手をあげ、類がつくしへと歩み寄る。
 「…遅れてすいません」
 頭を下げるつくしの言葉に、腕時計を確認する。
 そして小首を傾げて、
 「遅れてないよ、まだ、2分あるじゃない」
 そして、そのままつくしの肩へと腕を回し、目の前の車ではなく別の車の方へと誘導する。
 「え?あの…」
 戸惑う彼女を無視して、類は真っ白なスポーツカーの前へと誘導した。
 「はい、乗って?」
 「え?…ええっと?」
 振り返れば三田村がいつものリムジンへと乗り込むところだった。
 …ええ?三田村さん、別行動なの?
 三田村の姿を見た時点で、てっきり同伴なのだと思っていた。
 類がいなくても、重要書類やその他荷物を三田村が預かっているので、そのまま類の車を使用するのは不思議ではなかった。
 が…。
 「いいから、早く。時間は有限だよ?」
 「…はあ」
 暇さえあればいつも寝てばかりいる類に言われるのも片腹痛いが、上司の命令に疑問を挟む余地はない。
 いつもは運転手が開けてくれるドアを、類自身がわざわざ開けてくれる。
 相手は類だと言うのに、会社だからだろうか。
 妙に緊張して鯱張ってしまう。
 そんなつくしに、類が再び笑みを洩らした。
 「変なの。もう、俺と二人っきりだから、いつもどおりでいいよ?」
 運転席に座ってハンドルを握る類が、見慣れなくってつくしは何度も目を瞬かせた。
 「……でも、まだ仕事中ですから」
 「今日はもうおしまい」
 「は?」
 「もうアフターファイブじゃん。時間的にはアフターシックスって感じだけどね。デートしよ?」





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