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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて252 

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 「悪い話じゃないでしょ?会社の経費でスキルアップになる」
 「…それはそうだけど、どうしてあたしなの?」
 類の言う通り、普通ならありがたい話で、文句を言う話ではないのだろう。
 なぜ、自分が選ばれたのか…はともかく、なぜ類がゴリ押ししてまで自分をフランスに追いやろうとするのか。
 これはやはり、厄介払いなのだろうか。
 類が結婚すれば、別れる約束だとはいえ、醜聞になりかねない女を自分の傍に置くのは不安なのだと言うことなのかもしれない。
 憤然と帰って来た時の勢いが、ふしゅ~っと抜けてゆく。
 類のわけのわからない告白を真に受けているつもりはなかったけれど、さりとて邪魔者扱いされるのは身に応えた。
 「なんで、そんな暗い顔になるの?」
 さわりと前髪をかき上げられて、邪険に叩き落とす。
 わずかに紅潮した頬を見られたくなくって、顔を背けた。
 それでも、不思議そうな類の様子に勇気づけられて、真っ直ぐ向き合った途端、頬にチュッと軽いキスを落とされる。
 驚いてキスされた頬に手をあて、つくしは今度こそ真っ赤に赤面した。
 「ちょっと!なにするのよっ」
 「…ぷっ、あんた変な女だね」
 何がおかしいのかケラケラ笑う男を、殺しかねない視線で睨みつける。
 「さんざん俺とイロイロやってきて、頬っぺたへのキスで照れて赤面とか面白すぎ~」
 「せ、照れてるじゃないわよ!怒ってるの、あたしはっ」
 たとえ見え見えだろうが、言い当てられたくはなかった。 
 デリカシーの欠片もない男だとはわかってはいたが、腹立たしくて恥ずかしすぎる。
 「…フランスに行くの、そんなに嫌だった?」
 「イヤって言うか、理由がわからない」
 「一つには、まあ、純粋に勉強してきたらあんたのスキルアップに繋がるんじゃないかなって思ったんだけど」
 小首を傾げた顔に嘘は見られなかった。
 「……でも」
 「それに、俺も来期からたぶんヨーロッパだし」
 「え?」
 「親父がこっちに戻って来るから、その入れ替わりかな」
 「そ、そうなんだ」
 「まあ、もしかしたら、アフリカとかもありえるけど」
 「ええ?」
 その場合は栄転じゃなくって、左遷というやつで、後継者の地位から転げ落ちた場合の島流しというやつだろう。
 それはとりあえず、口にせず胸の内にとどめておく。
 もちろん、そうなったらつくしもアフリカの空だ。
 ニッコリ笑った類の心中などつくしには測り得るはずもなかったが、なんとなく背筋に寒気が走る。
 「…と、いうことで、あんたは来週から俺の秘書」
 うっかり聞き逃してしまいそうになり、次には聞き間違いかと類を見る。
 ニコニコと笑う顔に邪気はない。
 けれど、その天使の美貌の中には悪魔の尻尾が隠れているのを、つくしは誰よりも熟知していた。
 「どういうことよ!」
 「…そういうこと」
 強引に引き寄せられて唇へとキスを落とされそうになって、両手でそれを阻む。
 類はクスリと笑って、彼女の手の甲にキスを落とす。
 逃れようとしたところを抑え込まれ、ベッドに沈められてしまった。
 ドサッ。
 「や!…やだっ」
 思わず上げた悲鳴に、上から覗き込む類が目を瞬かせる。
 そのキョトンとした顔は本当に不思議そうで、少しも疚しさを感じさせないのはどうしてだろう。
 類にはなぜかそう言った雰囲気があった。
 男としての色香も魅力もないわけではないのに、時々性別を感じさせない。
 他人が彼に天使を感じさせるのは、おそらく彼の欲望があくまでも原始的なもので、人としての臭いが希薄な所以なのかもしれなかった。
 特につくしへの複雑な八つ当たり的逆恨みを捨て去った類はシンプルだった。
 ただ、つくしを傍に置きたいから傍に置く。
 キスしたいからキスをして、抱きしめたいから抱きしめる。
 ジッと見下ろす類のつくしの心の奥底まで見透かすような視線を嫌がって、つくしは顔を背けて体を堅くする。
 けれど、逃れようと抗わないのはいまだ類への契約を忘れてはいないからなのだろう。
 怒りにか羞恥にか、ほんのりと色づいた彼女の頬にそっと手を触れ、体を密着させて首筋に顔を埋める。
 観念したつくしは、そっと目を閉じた。
 「…眠い」 
 「…………は?」
 わずかにズれてくれているせいで、重みはそれほど感じない。
 つくしよりはかなり体温の低い類だったが、そうして密着しているとすごく温かい。
 つくしが戸惑っている隙に類がゴロリと彼女を抱えたまま体を反転させ。自分の体の上へと乗せてしまう。
 「もう、寝よ」
 体をもぎ離そうにもガッチリと両腕で抱きしめられ身動きが取れない。
 そうでなくても、急な展開につくしに頭はフリーズしていて、類の思考についてゆけない。
 気が付けば、小さな寝息が類から聞こえ…。
 「…って、あたし、夕飯食べてないんですけどぉおおおおおおおおっ!!!」
 絶叫したつくしに同意するように、彼女のお腹が小さく音を立てる。
 ぐううぅぅぅぅ。
 どうやら、今晩のつくしはひもじい思いを耐え、強制的ダイエットとなるようだった。





 気が付けば、類と再会した季節に少しづつ近づいているようにも思える。
 車に乗って行けという類を宥めて、駅からの通勤路。
 気が付けば、桜が咲き始め、柔らかな風がつくしの素肌をくすぐって通り過ぎてゆく。
 「…おはよう!つくしちゃん」
 「あ、おはよう、江島さん」
 つくしを庇って怪我をした眞子も、すっかり全快し、つくしに代わる高階の秘書へと転属していた。
 同じフロアの同じ秘書課、給湯室も同じ場所を使うこともあって、いまでは友人と言ってもいい関係を築いていた。
 聞いてみれば、眞子はつくしより4才年上の28才。
 つくし以上に童顔で、てっきり同い年か1、2才程度の年の差かと思っていたのに、驚きだった。
 詳しく聞いてみると、実は警察学校出身で、一時期は婦警も務めていたらしい。
 それなのになぜ一流企業とはいえ一般の会社員に?と、つくしが聞くと、曖昧に困ったような顔でそれでも答えてくれた。
 『父と同じ道を進むことに、この年で疑問が湧いて、ね』
 それが、今度は秘書だというのだから、大した変遷だった。
 つくしもたいがい波瀾万丈な人生だが、眞子も負けていない。
 どちらにせよ、気安い友人が一人増えたことや、類の秘書となったことで些末な嫌がらせや陰口から解放されて、つくしもホッと息をつけるようになった。
 それでも、同フロアにはかつてつくしにヤキを入れて返り討ちになった秘書などもいて、多少の摩擦はなくはない。
 それでも、常務の高階よりもさらに上、次代の花沢ジュニアの直属という立場は、何よりもつくしを守る護符として有効なものだった。





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