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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて250

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 「どうして?」
 つくしには類の冷酷さが信じられない。
 類と美也子の関係があくまでも政略的なもので、互いの感情がそこに含まれていなかったこともある程度わかっているつもりだった。
 けれど、そこになにがしかの感情が生まれてもおかしくはない。
 つくしへの憎悪が。
 悲しみを含んだ眼差しが…美也子もまた一人の人間であり、類を愛している女なのだとつくしへと知らせた。
 色の薄いつくしを熱く見つめるその眼差しさえも、むしろ空恐ろしいものに思える。
 …昔、道明寺の目が蛇みたいだと嫌いだった。
 けれど、彼を知るうちに彼の哀しみや、彼の柔らかな心の真心を知り彼を愛した。
 それとは逆に、類を知れば知るだけ、恐ろしさがこみ上げる。
 類に対して抱いた恋心は幼さの見せた夢幻でしかなかったのだろうか。
 …いや、そんなことはないはずだ。
 そう思いたい。
 当時の類につくしを助ける理由などなかった。
 それでも、助けてくれた彼を冷酷な人だとは思いたくなかった。
 人は弱い生き物だ。
 そして、知らないものを他人に分け与えることなどできやしない。
 「…美也子さんはあんたを愛してる」
 「また、それなの?なんで、こだわるの?」
 …つくしとて聖人君子ではない。
 始まりがどうであったのだろうと、類に「あんたといる」と言われて、ときめかないはずがない。
 嬉しくないはずがなかった。
 けれど…。
 「美也子さんのお腹の子供があんたの子なのだとしたら、あんたには責任がある」
 堕胎すればいい…それを口にすればつくしが彼を見限ることは類にもわかる。
 さすがに類にも、つくしがどういう女かもうわかっていたし、そうであればそうした言動が禁句であることを理解していた。
 …彼女が欲しい。
 ただ肉体が欲しいわけではなかった。
 もう温もりのある抱き枕やぬいぐるみでは満足できない。
 彼女の柔らかな優しさや、きらめく眼差し、明るい笑顔を向けられたかった。
 それなのに、上手い言葉が見つからない。
 この胸の内を切り裂いて見せられるのなら簡単であるのに、類にはどうすればいいのかわからない。
 「高坂美也子には、俺の他にも付き合ったる男がいたと言ったら?」
 「……」
 驚くつくしの純真さが愚かしくも、愛しく、こんな時だと言うのに笑みを誘われる。
 「とりあえず、父親のめぼしもついている」
 「…でも」
 つくしが何を疑ってるかわかっている。
 そして、類もそれを誤魔化すつもりはない。
 「うん、俺ともセックスしてたね。彼女を抱いた」
 息を呑むつくしの動揺に、『怖れ』を抱く。
 …それが静に対して抱いていた怖れだと自覚して、ほろ苦く自嘲する。
 自分はなんて成長していないのか。
 欲しい女が変わっても結局同じ怖れに苛まれ、疑わずにはいられない。
 いつ、見捨てられるのかと。
 「でも、あんたと契約してから一度も抱いてないよ。避妊に失敗した覚えもない」
 「……」
 「機会はあったし、望まれた。…でも、他の女とは寝てない。あんただけだ」
 その言葉をどうとっていいのかわからず、つくしは緩く首を振った。
 …静さんは?
 そんな問いかけをしてしまいそうで、つくしはグッと唇を噛みしめる。
 それは信じられない、なのか。
 それとも、聞きたくない、なのか、類にも測りがたい。
 「今破談に向けて、俺の両親があちらの親と会談している。…あちらがどう妊娠に対して対応するつもりかはしらないけど、どちらにせよ、胎児の生前DNA検査は求めている。ただ、可能性は俺も否定しない。否定しないけど…何があっても俺は彼女とは結婚しない。あんたが俺の結婚を期に俺と別れようと決意しているのと同じく、確かなことだよ」






 志保子が車に戻ると、すでに夫は秘書を脇に従え、仕事の書類に目を通すことに腐心していた。
 だが、彼女が無言でわきに乗り込むと、顔も上げずに声をかけてくる。
 「…納得しそうか?」
 「せざる得ないでしょう。類…あの子が高坂興産の粉飾決算の証拠と父親の贈賄の証拠をつきつけているのですもの」
 「そうだな。欲しいものは手に入れている」
 「…最初からご存じだったのでしょ?」
 志保子の声音は吐き捨てるようだった。
 名家の妻としての役割はわかっていたが、それでも自分の一人息子を餌のように扱われるのはプライドに触った。
 「…お前の花沢の持ち株を、類に生前贈与する予定があるか?」
 「……どういうことです?」
 怪訝な顔は演技には見えない。 
 「いや、それならいい。…高階の義父上も、またぞろ暗躍し始めているのか、それとも別口なのか」
 「類が造反しよとしているとでも?」
 志保子の問いに、花沢も曖昧に首を振る。
 花沢にとて、確証があるわけではなかった。
 それを言うのならもっと疑わしい者がいるのだし、元々類はそうした権力闘争じみたことに無関心だった。
 それが、花沢をして優秀な類を後継者に据えたままでいることを躊躇させていた。
 能力的には問題がない。
 それどころか、並ならぬ手腕を発揮している。
 けれど…類には花沢物産に対する愛着も責任感もない。
 志保子はそれを理解していないようだったが、花沢は志保子や類が思っている以上に息子を理解していた。
 それはもちろん、親子の情愛などではなく、冷徹な経営者として後継者を観察するもので。
 類には執着がないから野心がない。
 そして、野心もない男を信用するのは企業人として危険にすぎた。
 なぜなら、類にとって花沢物産の価値は紙一枚にも劣るだろうから。
 他に執着するものがないから唯々諾々と流れに流され従っているが、ああいう人間は意図も容易く後ろ足で砂をかけることを厭わない。
 おそらく、罪悪感さえ感じないに違いない。
 類は危険だ。
 下手なものに執着されては、花沢物産を破滅に導きかねない。
 どちらにせよ、何者かが密かに暗躍している。
 そしてそれを暴き立て、利用できれば利用し、そうでなければ打ち倒すことこそが彼の花沢の総帥としての役割なのだ。
 「…邸によって、会社に戻ってくれ。本社を視察して、私もヨーロッパに戻らなければ。来期に入り、半ば頃には私にかえて類をヨーロッパ統括に赴任させる準備をそろそろ始める必要があるだろう」





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櫻井るる様>コメントが…の件

こんばんは。
いつも心にしみるコメントありがとうございますm_ _m
ご心配のとおり、たくさん迷惑コメントフォルダに入っておりました…。
うーん^^;
前回も、素敵なコメントを下さったにも関わらず、かなりの数が迷惑コメントフォルダに。
特に禁止ワードに引っ掛かりそうな単語がないにも関わらず、謎です…。
毎回お手数おかけしてすいません。
でも、あやまらないでください。
いつもるるさんやたくさんの方々のコメントに力をいただき感謝でいっぱいです^^

私もこの禁止ワードにはけっこう苦しめられている口でして…。
お友達のサイトではコメント入れるたびに不正どうのの嵐で、困ったものです…。

何かと不便なこともあるコメント欄ですが、どうぞお許しを。
これに懲りずに、また素敵なコメントを下さるのを楽しみにしております(そのわりにお返事さしあげずすいませんm_ _m)

もうこの際、不正どうのとでたら、迷惑フォルダなりでもちゃんとコメント入ってるってことでどうでしょう?(ダメ?)
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