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それぞれの愛情のカタチ…8話完

それぞれの愛情のカタチ06

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 それなのに、懲りない自分は欲深にも、穏やかな愛情をくれる彼に心までも求めだしている。
 …二人で出席するパーティ会場で出くわすあきらの昔の情人たちに、彼が会社の打合せで顔を合わせるデザイン事務所の社長夫人に、強烈な嫉妬を感じていることを自覚させられてからが地獄だった。
 それなのに、こんな気持ちを抱いている今、妊娠だなんて…。
 皮肉にも、ただ穏やかな毎日を、優しいあきらと作っていければそれでいい、と達観していた時には中々できなかった子供が、今、彼の心が欲しいと我儘にも願うようになった途端に授かるとは。
 もちろん、二人は夫婦で、姑であるあきらの母も彼らの子供を心待ちにしている。
 舅や義妹たちも言うに及ばず。
 あきらはどうなのだろう?
 家庭というからには…特に、彼らジュニアの立場としては後継者である子供のこともセットで付属する重要事項で…。
 それでも、…愛されていない男の子供を産むなんてあたしにできるのだろうか。
 そんな疑問を今更抱くなんて、なんてタイミングの悪い。
 医者の話だと、今は三ヶ月。
 もちろん、あきらの子を…たとえそうでなくても(ありえないことだが)、つくしには自分のお腹に宿った命を奪うことなどできない。
 それでも、子供を盾のようにしてまで、あきらと夫婦生活を継続し続けることが正しいことなのか。
 あきらが自分に抱いている感情が、友情や同情である限り、たとえそれがある意味愛情の一つの形なのだとしても、いつかはあきらも間違いに気が付く。
 友情や同情は、真実の恋や愛には太刀打ちできないのだと。
 今はつくし以外の特別な誰かを愛していなかったとしても、いつかはあきらも恋する人を見つけるかもしれない。
 …司を忘れられず、恋でなく友情と慰めを求めてあきらと結婚したつくしが、その彼に恋し、愛してしまったように。
 自分の選択が間違っていたのだと気が付いた時には、この温かな手が、腕が、胸が恋しくて恋しくて、もう失うことなどできないと悟ってしまった。
 それでも…これ以上、過ちを犯さないために。
 今、この時、告げなければ、もっと苦しむことになる…それも自分ばかりでなく、この身に宿った大切な命や、あきらまでも巻き込んで、本当の幸せを見失うことになるに違いない。
 静かに走り出す車のわずかな揺れに身を任せながら、まだ終わってなかったのだろう、仕事の書類に目を通すあきらへと視線を向ける。
 「…あのね、あきら」
 「あ、そうだ。ちょっと早いけどさ」
 「え?」
 口火を切ろうとしたつくしとあきらの声が同時に被り、つくしがあきらに先を譲る。
 少しでも今この言葉を切り出すことを遅らせたくって。
 「…えっと、来月、イギリスに一か月ほど行くって言っただろ?」
 「ああ、うん。海外出張ね」
 思わず本音をポロリと零しそうになった数日前のことを、つくしは思い起こして曖昧に頷く。
 「やっぱりさ、お前も来ないか?」
 「…それ」
 「まあ、もちろん、お前の仕事のこともあるから、丸々一ヶ月ついて来いよ、とは言えないんだけどさ。お前、俺と結婚してからも、俺に合わせてロクに休暇もとってないだろ?」
 休暇の必要性も感じなかっただけだ。
 姑や義妹たちは、そんなつくしに気を使って、やれ一緒に旅行に行こう、骨休みをしようと誘ってくれるが、あきらが休む暇もないほどに仕事に打ち込み頑張っているのに、自分だけ休む気になれなかった。
 休養だけなら、あきらと違いほぼ週休二日の自分には十分だ。
 それに、あきらがいない旅行が楽しいとも思えず、広い邸に奥様然と何もしない自分に違和感がある。
 「でも…」
 「俺もさ、お前の休みに合わせて休暇をとるから、あっちでゆっくり遊ぼうぜ。新婚旅行も、あんまりゆっくりできなかっただろ?そのやり直しってどう?」
 手を柔らかく握られ、優しく微笑みかけられ、思わず涙腺が緩む。
 嬉しくて…、嬉しくて…、ただ一緒にいたいという自分の気持ちをあきらがくみ取ってくれたことがなんて幸せなんだろう。
 「子供が生まれたら、もう中々夫婦水入らずって時間も取れなくなるし、な」
 「え?」
 思わぬ言葉に、ハッとつくしが顔を上げる。
 「…子供、できたんだろ?」
 「なんで…あきら」
 「お前、先週、大沢先生のところに出向いたよな?」
 美作家の主治医である病院の医院長。
 しばらく内緒にしてくれと言っておいたが、いつまでも黙秘していてくれるわけがなかった。
 「…大沢先生のことを責めるなよ?お前につけていたSPからの報告があって、俺が問い合わせたんだから」
 「SP、やっぱりつけてたんだ?」
 あまりショックなことではない。
 司の時のようにあからさまではなかったから気配も感じたことがなかったけれど、心配性な彼がつけていてもおかしくはなかった。
 実際、姑や義妹たちにもついているのだから、妻である自分につけない方が不自然なのだろう。
 「怒るなよ?できるだけ、お前に窮屈な思いはさせないように言ってあるから。誘拐とかもある。これだけは、堪えてくれ」
 「…うん、わかってる」
 「どうして、すぐに教えてくれなかったんだ?」
 あきらの声はどこまでも穏やかで、少しもつくしを責める響きはなかった。
 それに勇気を得て、ギュっと唇を噛みしめ、息を吐き心を落ち着ける。
 「…あきら、あたし、本当にこの子を生んでいいのかな?」
 「え?」
 俯き加減で目を伏せ、まだ何の膨らみもない下腹をそっと撫でる。
 「いままで、言えなくってごめんなさい。あたし、ずっとあきらの優しさに甘えてた。あきらに友達が夫婦になってもいい。互いに思いあっていればそれでいいじゃないかと言われて、あの時のあたしは一人じゃ苦しくて、辛くて、つい縋ってしまった」
 「……」
 「あきらの優しさにつけこんでしまったんだよね」
 もう一度息を吐き出し、声に力を溜める。
 「もう、あたしは大丈夫。もちろん、この子は生むよ。でも、あたしももう、ちゃんと働いているし、お給料も貰ってる。美作家のご子息を不便な目に合わせられないって言われちゃうと困るけど、あたし、一生懸命この子を育てる。だから、この子だけは、あたしにちょうだい?」
 あきらを見上げたつくしの顔は、もう頼りなげでも不安そうでもなかった。
 覚悟を決めて真っ直ぐにあきらを見つめ返すその目は、かつて彼が惹かれた高校生の時同様強く、逞しかった。
 それでも、わずかに目の奥に揺れを見つけて、あきらも息を吐き出す。
 「…何言ってんだよ、お前」 
 「何って」
 「俺につけこんだとか、なんとか、むしろ俺の方がお前が傷ついている機会に付け込んだんだと思うんだけどな」
 「そんな…、あきらは」
 言いかけるつくしを手で押しとどめて、困ったように笑う。
 いつもつくしの言葉を真剣に聞いてくれるあきらが、彼女の言葉を遮ることなど稀有なことだった。
 「ごめん。謝るのは俺の方だよな。…つけこんだことは謝らない。それでもいいから、俺はお前が欲しかったし、その時言ったとおり、もう辛い顔をさせたくなかった。俺が笑わせてやりたかった。だから、今でも後悔していないし、それはそれでよかったんだと思ってる。…お前、今、幸せじゃないか?」





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