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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて246

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 「遅かったね、呑んできたんだ?」
 「…え、あ、うん。西門さんと、その…美作さん、と…ね」
 総二郎の邸にお茶を習いに行っていることはメールで伝えてあった。
 子供でもあるまいに、一々報告しなければならない必要性はあるのかと悩んだものの、以前、静とのことで類と争った時のこともあり報告を選んだ。
 それに関しては、類も特には反対することもなく、
 『そう、わかった。ただ堀田は必ず連れて歩いて』
とだけ、返信を寄越した。
 また、あきらの名前にも、透明な目でつくしをジッと見ただけで「ふぅん」と流す。
 「ねえ、そういえば、ベベどうしたの?さっき、寝室も覗いたけど誰かに預けたの?」
 だいぶ大きくなっていた雑種の仔犬は、つくしか類が帰るまでは必ず玄関で待っている。
 が…ここ数日は人に預けていた。
 実は、類との決別を視野に入れ、ベベの貰い手を進に探してもらったのだ。
 元々は類の犬。
 勝手に他人にあげてよいだろうかと迷った。
 けれどつくしへのプレゼントだと連れてこられた犬だったし、いかにも雑種の犬であるベベが花沢家に似合いだとも思えなかった。
 …類がつくしにベベを与えたのは、一つの隠喩だったのかもしれないと思う。
 つくしはあくまでも雑種であり、サラブレッドの類にはそぐわない。
 「牧野?」
 「…うん、進の友達と言う人に今預けてる」
 それがどうしてなのか、いつ戻ってくるのか、類も尋ねない。
 そして尋ねられないつくしも口にはせずに、類の横を通って居間へと入り、ハンドバックをソファに置くと、続きのキッチンに立った。
 背後に類がついてきた気配を感じながら、紅茶のセットを準備する。
 今は温かい飲み物でも口にして、一息つきたかった。
 「…お茶、入れるけど、紅茶でいい?」
 類を見ぬままにつくしが尋ねた瞬間、類の両腕がつくしを背後から抱きすくめる。
 「…類ッ」
 驚いて反射的に振り向こうとするつくしの肩に類は額を当て、顔を伏せてその表情を見せようとはしない。
 「寂しかった?」
 尋ねられて初めて、つくしが自覚する。
 …寂しかった。
 マンションのそこかしこに類の気配が残っているのに、そこには彼がいない。
 ビー玉のような目でつくしを甘く見つめて、蕩けるように彼女を甘やかし甘える美貌の青年の姿をいつもどこかで探していたように思える。
 けれど、つくしはそれを自覚したくなどなかった。
 寂しさを認めてしまえば、この先どうやって一人で生きて行けばいいと言うのだろう。
 もうすぐ終わる。
 すべてはまやかし、悪夢だったのだと。
 だから、鼻の奥に走ったツンとした痛みを堪える。
 嘘を言えば見破られてしまいそうで、あえてその問いを無視した。
 「ダメだよ、類」
 「…なにが?」
 「美也子さんが身重のこの時に、ここに来たらいけないよ」
 フッと類の腕の力が弱まる。
 その隙に逃れようとしたものの許されず、抱え上げられ、キッチン台の上へと座らされた。
 ガシャン、ガシャガシャ。
 つくしの体で押しのけられて、台の上の皿や茶器がなぎ倒され、鈍い音を立てた。
 「類!」
 類は咎めるつくしを無視して、彼女の両膝を割り、足の間へと体を割り入れる。
 そして、いつもは身長差のある二人なのに、目と目を合わせて至近距離で見つめ合った。
 類の手がつくしの頬にあてられ、ジッと見据えられる。 
 思わず顔を横向けて、視線を反らそうとするのを赦されない。
 「あんたは平気?」
 「……」
 「俺が本当に、あんたじゃない女と結婚して、赤の他人になってもいいの?俺と別れたいの?」
 類の言いたいことがわからない。
 赤の他人も何も、最初から二人の関係は何者でもない。
 「…言ってる意味がわからない。最初からあたしにとってこのカンケイは契約で、…あんたが強要したものだったじゃない」
 その通りだ。
 つくしの言っていることは真実だ。
 だが、二人で過ごした時間になにがしかの感情が生まれたと思ったのは、単なる類の独りよがりだったのだろうか?
 他人の気持ちなんて斟酌したことがなかった。
 静と自分、そして親友たち。
 ごく狭い世界の人間しか受け入れてこなかった彼が、初めて目にしたまったく異世界の人間…牧野つくし。
 「俺があんたを好きだと言ったら、あんたは俺のものになる?」
 「な、何を言ってるのよ」 
 つくしは耳がどうかしたのかと思った。
 それともまた何か、類による新たな企みの一端であるのかと。
 けれど、思えばつくしを誘惑して陥れた時でさえも、彼は嘘を吐かなかった。
 誤解するようなそぶりを見せていたかもしれなかったが、つくしを好きだとは一度も言わなかったのだ。
 それなのに…。
 今、何を言った?
 「あんたが欲しいから、高坂美也子とは結婚しない」
 「…なにを」
 「他の誰とも結婚しないよ。…それなら、あんたは俺とずっと一緒にいる?」
 「ありえない!」
 とっさに叫んでしまったのは、つくしの自衛本能だったのか。
 囚われてしまう。
 信じてしまいたいと言う女心から耳を塞ぎ、イヤイヤと首を振る。
 「あんたは、静さんが憎かったんでしょ?」
 「……」
 「あんたは静さんが憎くて、愛しすぎていたから、あたしを利用した」
 類の目の中に映る自分自身はなんて、情けない顔をしているのだろうか。
 憤っているはずなのに、泣きそうに顔を歪めて弱さを曝け出している。
 「道明寺を捨てたあたしを、静さんに重ね合わせて復讐したかったんでしょ?憎しみでさえもあたし自身を見て、ブツけてくれてなかった。そんなあんたがどのツラ下げて、あたしを好きだなんて言えるの!?」





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