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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて242

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 「マメな奴とも言い難いしな」
 「…別に、連絡なんてなくっても不便はないわよ」
 常務となった高階の秘書という立場上、顔くらいは見ることもあった。
 だが、さすがに会社での類は公私を分けていて。
 一時期は、平社員のつくしの元へも足繁く通い詰めたこともあるが、特に私用を言いつけることもなく、あくまでも他の取締役の秘書と専務という立場以外を見せることはなかった。
 …それが寂しいというわけじゃない。
 別に着信拒否されているわけでもなかった。
 もしかしたら、あきらや総二郎のように、つくしもかけてみれば忙しさに留守電しか出ないのかもしれなかったけれど。
 「…いいのか?」
 あきらの問いかけに、曖昧に首を振る。
 「良いも悪いもないよ。…二人とも知ってるでしょ?類とあたしはマメに連絡を取り合うような、そんな関係じゃないんだし」
 「…まあいい、今日はわざわざ恋敵の動向を聞きに来たわけじゃねぇよ」
 「この後、俺ら飯に行く予定なんだけど?」
 「総二郎、お前遠慮しろ」
 F4の仲間の中で唯一協調的なあきらにしては、冷たいセリフ。
 「…いいけど、お前に譲ったら何をくれる?」
 「そうだな」
 いつの間にか、勝手につくしの今夜の予定を男たちの間で決められてしまいそうだった。
 「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 美しい二人の男が、同時につくしへと振り返る。
 うっ。
 ま、眩し~。
 今更彼らにトキメキを覚えるほど、つくしも初心ではなかった。
 トキメくには実態を知りすぎていて、また近くの存在過ぎていた。
 それでも…やっぱり、並の男たちじゃないんだよね。
 動悸打つ胸を叱咤し、わざと苦虫を潰したような顔を作る。
 もちろん、百戦錬磨の男たちは、つくしの心の動揺など手にとるようにわかっているのだろう。
 赤面しかけた顔にわざと顔を近づけるようにして、腰をかがめて覗き込んでくる。
 「なんだよ?」
 「どうした?」
 「近すぎるつーの。…いや、そうじゃなくって、勝手に決めないでよ」
 「なんだよ?つくしちゃん、やっぱり俺とメシ食いてぇの?」
 甘く蕩かすような声音で、確信犯的に誘惑してくる男を思いっきり睨みつけ、フンと顔を背ける。
 「だから、からかうなって言うのよっ。それより、あたし…その、美作さんと二人っきりっていうのは、さ」
 語尾が小さくなってしまう。
 「ああ…類に怒られる?」
 当の本人に指摘されると、それはそれで申し訳ない。
 「その…まあ、そんな、ところかな。ごめん、美作さん」
 両手を前に、思いっきり体を二つに折って謝罪する。
 「フられたな」
 「まあ、しょうがねぇか。俺は宣戦布告したしな。あれで案外狭量な奴だし。しかたねぇから、総二郎同伴で、飯食いに行こうぜ」





 両手に花。
 美しい男たちを目の保養に食べる美食は…もちろん、美味しかった。
 「美味しい~。あんたたちに食べに連れて行ってもらうと舌を肥えさせられちゃって、あたし贅沢になっちゃいそうだよ」
 落ち着いた雰囲気のステーキレストラン。
 珍しく和風な内装の中央ではカウンター越しに、豪勢な霜降り牛を焼いてくれているのを目の前にして食べられる。
 今回の場合は、有名すぎる男たちが一緒なので、個室になっている掘りごたつの部屋でのご相伴だった。
 …今日は、あたしが奢ろう。
 最近では、総二郎にご馳走になるのがすっかりお習いごとの後の習慣になってしまっている。
 『俺の女になれよ』
と、言ったわりにはつくしへの恋愛感情は乏しいらしく、特にそれといった雰囲気になったことはない。
 もちろん、さすがに鈍いつくしでも、当初は警戒していた。
 そうでなくても迂闊なところがあることは最近身に染みていたから。
 ところが、お習い事に訪ねることも躊躇していたのを見越していたように、最初の頃は西門の邸で本格的なお膳をいただくのみだった。
 西門邸にはたくさんの使用人も居れば、常時客人も多い。
 そんな環境下では総二郎と二人っきりとはいえ、警戒心も和らぐ。
 ちょっと声をあげれば、誰かしらそこには人がいたし、完全防音の洋室とは異なり、和室の作りは声も通りやすい。
 もちろん、家族の住む母屋はそういうこともないのだろうが、つくしが通されたのは常に客室で、おそらく彼女の気持ちを理解していた総二郎の計らいだったのだろうと思う。
 そうであれば、総二郎は会話に豊富で明るくて話して楽しい男だったし、また親しい友人だった。
 ここのところは、師匠としても尊敬の念を感じてもいる。
 つくしの気持ちがほぐれてくると、外食にも誘われるようになった。
 もちろん、食事をするだけで、帰りは運転手つきの車で類のマンションまで送ってくれる。
 総二郎もあきらも、もちろん他のF4二人も、容易に女性に奢らせるような男ではなかったが、今日は絶対に自分が払うと決めていた。
 作っただけで一度も使ったことのないクレジットカードがある。
 いつかこんな日が来るだろうと、F4と再会してから財布に忍ばせるようになったのだ。
 …幸い、あたしには敷居は高いけど、ここのならあたしの懐具合でもなんとかなる。
 あまりに高級な店では恐縮するつくしに合わせて、総二郎やあきらがチョイスする店はたいがい食事は美味しいが、目が飛び出るほど高かったり、敷居が高すぎて落ち着かないという店でない方が大半だった。
 「そういうわりには、ジャンクなフード食っても美味いって言うし、平気で立ち食いソバなんてもんも食うんだろ?」
 「しょうがないじゃん。別にジャンクフードが特別に好きってわけじゃないけど、お腹空けばなんでも美味しく感じられるし、時間ない時は立ち食いソバとかの方が楽なんだもん」
 身の丈というものがある。
 いくら総二郎たちに連れまわされようと、自分は総二郎たちと同じ人種の仲間入りできたわけではないのだ。
 もちろん仲間に入りたいとも思わない。
 平凡なりの幸せというものがあった。
 質素でも日々の食事を素直に美味しいと感じ、ただ景色を綺麗だと楽しみ、平和な毎日を喜ぶ。
 大抵は仕事や雑事に追われ、そんなことを一々感じているわけではない。
 だが、つくしはそうした自分なりの普通の生活が好きだった。
 特別な誉などなくても全然かまわない。
 ただ心穏やかに、安らかに生きられれば。
 それなのに、真逆の人生を歩まなければならないのは、絶対に目の前の男たちのせいだ。
 内心溜息をつきたいのを堪えて、逆に呆れたような視線に気が付く。
 「なによ?」
 「類のマンションに住んで、類自身も貢いでるだろうに、ホントお前って、いつ見てもほとんど変化ないよな」
 「だな。…見た目も相変らず貧乏臭せぇし、色気ねぇしな」
 「失礼ね…色気は関係ないでしょう、まったく。それに…別に貢がれてなんかいないわよ」
 直にこれこれと、買い与えられたことはない。
 だが、確かに部屋いっぱいに揃えられた高そうな衣類や、装飾品、化粧品などを言うのならそのとおりなのだろう。
 だが、つくしはできるだけそれらを身に着けたり、利用したりはしなかった。
 どうしても、類に恥をかかせてしまうような場に引き出される時はやむを得なかったが、いかにも愛人な待遇が苦痛だったのだ。
 人に誇れなくても、自分の中のルールは犯したくない。
 貧乏性だ、不器用だと言われようとそれが自分だった。





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