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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて241

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 呼びかけられて美也子を見返した類の目はガラス玉のようだった。
 子供の頃、大切していたオルゴールの王子様の目よりもなお無機質で冷たい。
 それが、美也子への無関心ゆえなのだと、今更ながらに胸に堪える。 
 最初から類の目に自分が映っていないことなどわかっていた。
 けれど、彼の妻という地位が手に入るだけで満足していたはずだった。
 あのF4の一人・花沢物産御曹司『花沢類』の妻。
 なのに、どうしてそれだけでは満足できなくなってしまったのだろう。
 遊びは遊び、結婚は結婚だと割り切って、当初約束を交わした時のように類の不貞にも目を瞑ることができれば、今のこの自体を招くことはなかったのだろうか。
 いや、どちらにせよ、子を孕んだ時点で覆されることは明らかだった。
 …でも、まだ望みがなくなったわけじゃない。
 「…なに?」
 「類さん、先日のこと、牧野さんのことは謝らせてください」
 内心プライドが軋み、屈辱にグッと掌を握り込む。
 「それは俺に謝ることじゃないと思うけど?」
 「…それは、牧野さんに直接謝れ、とそういうこと…でしょうか」
 今にも憎しみの炎が噴き出してしまいそうだった。
 ここまで惨めにしておきながら、まだなお、自分に屈辱を負えとそう言うのだろうか。
 不思議に、類に対する憎しみは沸き起こらなかった。
 少しも彼女に優しくない、彼女の王子様への憎しみよりも、彼を奪おうとする女への憎悪の方が深い。
 …そうよ。地位ある男が愛人を囲うなんて当たり前のことだったのに。
 自分は何を血迷っていたのか。
 黙っていれば、妻の座が転がり込んでくるはずだった。
 少し待てばよかったのだ。
 人の心など移ろい惑う。
 あんな平凡で普通の女など今は物珍しくても、いずれは飽きるに決まっていたのに、何を焦ったというのか。
 もしかしたら、あの道明寺司の恋人であったこともある女だったから、美也子には理解できない魅力があるのかもしれないと、そんな錯覚に陥ってしまったのかもしれない。
 …でも、道明寺様だってあの女を捨てたんだもの。
 あんな使い捨ての女の為に、この地位を絶対に失いたくない。
 「あ…やまります。牧野さんに、許しを請います。もう二度と、類さんの交友関係に口を挟むようなマネはしませんから」
 だから…婚約を破棄しないでくれと、縋りつこうと歩み寄った。
 それなのに、冷たい視線に遮られて、あと一歩というところで類の傍に寄ることができない。
 「いいよ、牧野もたぶんそんなこと望んでない」
 「…じゃあ、どうすれば」 
 「あんたから婚約破棄してくれる?」
 「…っ!?」
 酷なことだった。
 身重の美也子にしてみれば、最悪の宣告だった。
 両手で口元を抑えて立ち尽くす美也子を見る類の顔には、一片の慈悲も含まれておらず、まるで炉端の石を見るのとすんぷ変わらない。
 それでも…縋り付かずにいられない美也子は、立ち尽くしつつも首を横へと振り続ける。
 「い…や、嫌です。そんなの絶対にイヤッ」
 「…どうして?俺に執着されても、俺はあんたに興味を持てないし、ましてや愛したりできない」
 世界が滲み歪んだ。
 気が付いたらへたり込んで、涙を流していた。 
 …そんなこと許せるはずがない。
 こんな惨めでみっともなく泣き崩れる自分が許せない。
 それなのに、類を思いきれない。
 こんな男…と思うにはあまりに類は美しく魅力的すぎたのだ。
 「別れないわ。婚約破棄なんて絶対にしない。私には子供がいるのよ、類さんのッ」
 「…可能性は否定しないよ。あんたが出生前DNA検査に応じてくれればなお話は早い」 
 「この子がッ、この子が類さんの子供だと証明されれば…」
 美也子にだとて確証はなかったが、今は言い切るしか彼女には手段がない。
 腹に手をあて、唇を噛みしめ類を睨みつける。
 それでも微動だにしない類に、無力感がこみ上げる。
 哀れだと…可哀想だと思ってくれない。
 憐れまれることなど御免だと思っていたはずなのに。
 「たとえあんたの胎の子が俺の子でも、俺はあんたと結婚はしない」
 「…あの女!あの女がいるからですかっ?あんな庶民の女と花沢家の御曹司のあなたが結婚なんてできるわけないじゃないっ」
 プライドも何もかもかなぐり捨てて、必死に言い募る。
 「別に俺は結婚なんてどうでもいいけど、牧野がそれで手に入るなら俺は彼女と結婚するよ」
 「ふ、不貞よ。裁判にかけてだって争うわ。マスコミにあなたと牧野つくしの関係を暴露して、世論に訴えてやるからッ」
 もはや、美也子は縋れるものはすべて縋りつくつもりだった。
 …お父様に頼んで、超一流の弁護士を。
 「あんたが俺を調べていたように、俺もあんたを調査してたって思わないわけ?」
 ありえないことではないのに、この場面での言葉は美也子の弱っている心に鉄槌を振り落とし打ち砕く。
 「あんたと過去関係のあった男のことは調べがついてる。あんたたちが高飛びさせたその子供の父親も、ここに連れて来ればいいのかな?」





 つくしが茶室を出ると、久しぶりな人物が待ち受けていた。
 電話やメールはやり取りしていたが、直に会うのは一月以上ぶりだ。
 「…よう、どうだ、調子の方は」
 「美作さん、忙しいんじゃないの?」
 総二郎もあきらのイギリス赴任の噂の成否は知ってはいなかった。
 だが、桜子の情報網の確かさは侮れない。
 権力こそ往年の威勢はなかったが、旧華族出身の三条家の繋がりは、社交界でも一目置かれるほどの位置にあった。
 「もしかして、総二郎あたりからなんか聞いてる?」
 「ん…イギリスに赴任するって噂、桜子から聞いたかな」
 「…ああ、桜子か、あいつも今ドイツから戻って来てるんだったな」
 特に秘密でもないのか、あっさり頷いて、つくしの肩を抱いて外へと促す。
 「美作さん」
 「ちょっと付き合えよ」
 「…いい度胸してんな。俺の邸で女をナンパか?」
 「よ、総二郎」
 「西門さんっ!」
 言葉とは裏腹にニヤニヤ笑いの総二郎が、揶揄ってからかう。
 「お前も牧野を口説き初めてるんだって?」
 「…なんだよ、早耳だな。牧野、お前もうあきらに話したのか?」
 元々総二郎自身も口が軽い方だ。
 お互い様だとは思うが、それでも喋った事実を本人に知られるのはなんとも気まずい。
 「ごめん、桜子にちょっと」
 「そう、それで俺は桜子からだな」
 …もう!桜子ったら。
 口止めしなかったのを今更ながらに悔む。
 「ま、別にいいけど、俺はコソコソやんのは性分じゃねぇし」
 「類には言ったのか?」
 「あいつ、よほど忙しいのか連絡がとれねぇ」
 「…牧野、お前は?」
 問われて、俯く。
 「えっと、電話が2回くらいきたかな」
 「いつから?」
 「一か月半…くらい前」
 「なんだよ、いくら親父に監視されてるからって、そんなに顔見せてないのかよ?」





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