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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて239

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 「よう、ちゃんと話できたか?」
 総二郎が顔を出したのは、二人尽きぬ話もそろそろ一休みしだした頃で。
 「ごめんなさい、すっかりこんな時間までお邪魔しちゃって」
 「…すいません、西門さん」
 すっかり打ち解けた様子に、総二郎の顔も綻ぶ。
 「良かったな。優紀ちゃんもずっと気にしてたし、牧野、お前も会いたがってただろ?」
 特に総二郎に言ったことはなかったが、女心に敏い総二郎には感じることもあったのだろう。
 「…うん、ありがとう。ずっと会いたかった。でも、あたしのせいで優紀の家族には迷惑をかけちゃったし」
 「何言ってるのよ!つくしのせいじゃないでしょ?あんなことがあって、つくしが急にいなくなって、和也くんも凄い落ち込んじゃって、申し訳ないって泣いてたんだから」
 「…和也君が?」
 「そうよ、つくしはすぐに自分が我慢しちゃうんだから…本当はあたしの方がずっと謝りたかった。でも、あたしたちのせいで全部諦めて消えちゃわなければならなかったつくしにどう顔向けすればいいのかわからなかったの…」
 桜子さんに聞くまで、どこにいるのかもわからなかったしね…と呟く優紀と二人再び涙ぐみ合う。
 「おいおい、俺は愁嘆場は好きじゃないんだけど。どうせ泣くなら俺のことで泣けよ。特に、牧野、お前に湿っぽいのは似合わねぇだろ?」
 「なによ、それ。あたしがよほど能天気みたいに」
 ムッと睨みつければ、さっき泣いたカラスが…と、総二郎が含み笑う。
 「まあ、能天気つーのとはちょっと違うと思うけどよ。お前は泣いてるより、怒ってる方が似合ってるとは思うよ」
 「…それって、すっごく微妙なんですけど」
 「いやいや、俺たちに赤札貼って凄んだお前の印象、強烈に焼き付いてて一生忘れられそうにもねぇからな」
 「……」
 それだって、総二郎たちのせいなのだ。
 怒りたいわけではなかったけれど、怒らざる得なかった環境だったわけで。
 「ま、とにかく、夕飯食いに行こうぜ」
 「「え?」」
 「しょうがねぇから、今日は俺が二人にご馳走してやるよ。久しぶりに会った親友同士におめでとうだ」
 「…いえ、そんな」
 「いいよ、西門さん、悪いよ」
 戸惑って遠慮する二人の頭をクシャクシャっとかき交ぜて悲鳴を上げさせて…。
 「まあ、遠慮すんな。今日はお兄さんに任せておけ。両手に花というのは、優紀ちゃんはともかくお前じゃ役不足だが…てっ」
 軽く蹴られた脛を抑えて、総二郎が呻く。
 「…おい、着物着て茶室で蹴りって、お前どこのガキなんだよ」
 「煩い、今日は靴じゃなくって、足袋だったのを感謝しなさいよ。もう、一々からかわないでよ。ホント、タチ悪いんだから」
 「とにかく、俺が牧野にボコにされて動けなくなる前に、飯行こうぜ。グダグダ言うなよ」
 さっさと部屋を出て歩き出す総二郎の後姿に、つくしと優紀が顔を見合わせる。
 優しく微笑みあって、「「は~い」」 と総二郎の後を追う。





 まずは優紀の家へと総二郎が用意してくれた車が回されて、見送る彼女に車窓から手を振り別れる。
 車が曲がり角を曲がるまで、立ち尽くすその姿に、ふいに、先日の桜子との会話に出てきた司のことを思い起こした。
 『…またあんたは何を言い出すの』
 『先輩には今更だって言われちゃうのはわかってますけど、もう時効なら新たな恋に踏み出してもいいのと同じように、改めて道明寺さんでも良いのでは?』
 本人がいないのに、どうしてこうも誰も彼も司なのだろう。
 もう司こそとっくにつくしのことなど吹っ切っているだろうに。
 幼い恋だった。
 彼がとても真剣だったのはよく知っている。
 それでも、もうすでに過ぎ去った過去であるのはつくしと同様、司にとってもなのだ。
 『道明寺さんが、再び先輩の前に現れたらどうするつもりなんです?』
 『…どうって、またありもしない仮定を言うだけ、無意味だよ』
 『一度は愛した人です、嫌いで別れたわけじゃないでしょ?』
 そのとおりだったけれど、魔女との約束は今でも生きている。
 だが、そういうことじゃない。
 そういうことではなかった。
 つい最近まで確かに司を忘れられなかったし、愛していたのかもしれない。
 けれど、吹っ切った今、今更彼を再び愛せるかと言われると、やはり今の司は遠く、現実的な人間に思えなかった。
 『今でも道明寺のことは嫌いじゃない。確かに忘れかねている部分もあるのかも。でも、それはあくまでも青春の思い出の一ページとしてで、今現在の感情じゃないんだと思う』





 ソファの上で膝を抱えて、足の爪にペディキュアを施す。
 美に携わる仕事をしながら、こうして桜子がゆっくり自分のケアにいそしむのは久しぶりだった。
 それでも、いつの間にか上の空になってしまう。
 思い浮かぶのはつくしとの会話。
 さりげなく司のことをフった彼女に、つくしの答えはいつの間にか迷いがなくなっていた。
 『…先輩、吹っ切ってしまわれたんですね』
 少し前のつくしではないのは、桜子も感じ取っていた。
 けれど、類に対抗するなら、F4の誰かでなければとても対抗しきれない。
 お人好しのつくしなどは生真面目に類との約束…契約を信じていたが、桜子などはとてもじゃないが、信じられるはずもなかった。
 類がつくしに執着しているのは間違いない。
 だが、現在の状況でつくしを彼が幸せにできるとは思えないのだ。
 それならば…。
 あきらでも、総二郎でも、司でもいい。
 利用することが無理だと言うのなら、もう一度愛せればいい。
 手元に置いた雑誌をパラリパラリとめくり目を通す。
 『道明寺財閥道明寺司氏と、婚約者である大河原財閥大河原滋さんとの華麗なる恋の奇跡』
 どの写真も寄り添っているものなどないのに、プロがレイアウトした意図的な構図は、不思議に二人を熱烈な恋人同士のように見せて、仲睦まじくさえ思える。
 けれど、社交界の中では二人の冷え冷えとした関係は周知の事実だった。
 公式の場でもよほど大きなパーティでなければ、二人で現れることがない。
 いや、滋の方では司にぞっこんであることは明らかだったが、司の方はあくまでもビジネスライクだった。
 そこに彼の真実が見えるだろうか。
 けれど男は表向きと裏とで顔を使い分けられる生き物なのだ。
 …昔の司はそんな男ではなかった。
 だが海千山千の企業人たちの荒波に鍛えられた今の彼はどうなのだろう。
 『先輩、道明寺さん、日本に帰らられるそうですよ』
 『え?』
 『今度は一時帰国とかそういうことじゃなくって、日本支社長に就任されるそうです』
 驚いた顔のつくしは、何を思ったのだろうか。
 『…そう』
 ただそれだけを呟いた彼女の心中を、さすがの桜子も図りかねていた。





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