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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて237

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 「…西門さんは一種独特な世界にいらっしゃる方です」
 「まあ、そうだね」
 茶道表千家家元の後継者。
 人並みならぬ御曹司たちばかりのF4の中でも、経済畑の他の三人とは一線を画していた。
 「ある意味、道明寺さんですら西門さんに圧力をかけ続けることは難しいでしょう」
 「その言い方、微妙だと思うのは私の気のせいかな?」
 意外にカンのいいつくしに、桜子も苦笑する。
 つくしが鈍いのは恋愛面ばかりで、けっして頭の回転が鈍いわけではないのだ。
 むしろ、人の心の機微に敏感だからこそ人は彼女の周りに集まるし、好意を抱く。
 おそらく総二郎に対してあまりそうした面が働いていないのは、総二郎自身がそれを拒んだからでもあるし、やはり不倶戴天の輩的に避けていたプレイボーイだからだろう。
 友情はあっても、総二郎の恋愛面には隔意を抱いていた。
 「…まあ、いつも女の人をぶら下げてるわりには、冷めた顔してるな、とは思ったことあるけどね」
 「あるんですか?」
 逆に驚く。
 「やに下がってるのがほとんどだけど」
 「ふふ、あの西門さんにそんなこと言えるのは先輩だけですよ?」
 「そう?あんたも言えるでしょ、桜子」
 どうだろう。
 桜子でさえ、あの艶やかな目にジッと見つめられると体の芯が疼いて、熱くなる。
 匂い立つフェロモンに武者ぶりつきたいくらいだ。
 女は手に入らないものが好きだ。
 そして、危険だと思えば思うほどに、惹きつけられ溺れてゆく。
 もしかして、つくしが類から離れられないのもそんな理由からなのかもしれない。
 …そう思うことを厭う自分がいることもわかっている。
 結局つくしに幻想を抱いているのは、桜子の方なのかもしれなかった。
 自分が持っていない清廉さで、どこまでも美しいつくしを夢見て、束縛しようとする。
 けれど…と思う。
 どんなに醜い部分や穢れがあったとしても、やはりつくしが好きだ。
 その純朴なまでの優しさと許しが彼女を彼女たらしめている。
 だから、つくしには幸せになって欲しい。
 幸せの定義が人によって違うのはわかっていたが、つくしには笑っていて欲しかった。
 「桜子?」 
 「…西門さんが脂下がったスケコマシかはともかく、西門さんが睨みを利かせればさすがの花沢さんだとておいそれとは手をだせませんよ」
 「…脂下がったスケコマシとまでは言ってないけど、それって西門さんを利用しろってこと?」
 「何言ってんですか、まさに西門さんが言ってるのはそういうことでしょ?」





 カラン。
 溶けた氷が小さな音を立てる。
 口にしたアイスティはすっかり薄くなっていた。
 「…利用、そんなの誰に対してだってしたくないよ」
 「別に一方的に利用しろって言ってるんじゃなくって、ギブ&テイクってことなのでは?」
 ギブ&テイク、総二郎も確かにそんなようなことは言っていた。
 だが、だからといって、つくしもまだ恋や愛を打算で割り切るほどには計算高くはなれなかった。
 「まあ、先輩にはそういうドライな言い方は馴染みませんよね」
 「そういうわけじゃないけど…」
 「じゃあ、友情を違う形に育てたいって、そういうことじゃないんですか?」 
 友情から始まる愛情もある。
 実際、男と女としてはともかく、つくしも友人としての総二郎を好いていたし信頼もしていた。
 だが、そうだからといって総二郎の申し出を受ける気にはとてもなれなかったし、それはなんだか裏切りのような気がしていた…誰に対してなのだろう。
 類にだろうか?
 それともあきらに対してなのかとも思ったが、結局は自分にだったのかもしれない。
 紆余曲折はあっても、人を愛したいと願ってきた。 
 山崎にですら、愛せればと…真実の気持ちだったのだ。
 「できないよ。もう、愛していない人とはそういう関係を築くつもりないの」
 「愛せるかも知れないのに、その可能性さえも閉ざすんですか?」
 「…山崎さんの時にも、そう思ったもの」
 だが、愛せなかった。
 好きになることはできたが、恋せなかった。
 その結果が双方深い傷を負う結果となってしまったのだ。
 「どのみち、西門さんに庇ってもらわなくっても類との関係は終わるよ」
 「花沢さんが納得してなかったら?」
 「類があたしとの契約を破るつもりなら、あたしにも覚悟がある」
 …契約。
 つくしは約束ではなく契約と言ったか?
 だが桜子も今はそこは突っ込まず、つくしの強く決意に満ちた目を見つめ返す。
 「何をされても、どんな脅しを受けても構わない。もう言いなりにはならないし、どんなことでもやってやる」
 「それなら、道明寺さんを頼ればいいんじゃありませんか?」





 カコーン。
 幽玄な美を体現する日本庭園に鹿威しの音がしめやかに響く。
 「…考え事するな」
 「え?」
 指導された手順を無心に追っていたつもりのつくしは、ハッと我に返った。
 総二郎に茶を習い始めて、まだ4回目。
 あれからなんだかんだと半月以上月日がたっていた。
 世間を賑わしていた花沢物産の婚約者の妊娠騒動も、大物芸能人の恋愛記事やら政治政変により嘘のように鎮静化していた。
 …まあ、類自体がアイドルみたいなものだったから大騒動になったけれど、本来なら一企業の重役の恋愛沙汰など取りざたされるようなものではなかったのだろう。
 「お前、ホント、綺麗さっぱり忘れ果ててるんだな」
 苦虫を潰したような綺麗な顔にねめつけられて、わずかに脈拍数が上がる。
 「はは…そ、そんなことないと思うけど。うん、けっこう体は憶えてたよ」
 総二郎が教えるような人間にはいなかっただろうが、茶を習いにくる昨今の人たちは着物に馴染んでいない人も多く、意外なことに洋服でのお習いごとも可能らしい。
 かくゆう時間的なこともあって普段のつくしも洋服での手習いだ。
 総二郎自らのマンツーマンなので、そこに気兼ねもない。
 だが今日は、初めていつもの時間ではない日を指定された。
 週の半ばにも習ったばかり。
 だが、来週は京都に出かけるとかで、急遽一日、週末の土曜日にも予定をいれてくれたのだ。
 予定が合わなければ合わないで別にかまわなかったのに、総二郎の手隙の合間を縫ってのお稽古事を提案してくれた。
 むしろつくしの方が恐縮して遠慮したのに、
 『お前のことだ少しでも放置してたら、また元に戻りそうだからな』
 と言いきられ、今日の日となったのだ。
 「…着物が苦しい」 
 「たまには、我慢しろよ。今日は他にも弟子がけっこう顔出してるからな。西門の次期家元が直々に教えてるんだ。形だけでも整えないと俺が格好つかないだろ?」
 言われればその通りで、借り物の着物に汚れをつけないかとヒヤヒヤしっぱなしだった気疲れも手伝って、溜息をつきたくなった。
 「でも、本当に良かったの?何も忙しい時は無理してくれなくって良かったのに」
 「無理はしてねぇが、悪いけど、もう少ししたらもう一人弟子が来るから」
 「ええっ?そんなぁ、あたしの所作じゃ恥ずかしすぎるよ」
 「はは、さすがに自覚あんのか」
 慌てたところで、部屋の外から女性の声がかかる。
 「…こんにちは、若宗匠。よろしいでしょうか?」
 「ああ、いいよ、入って。優紀ちゃん」





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