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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて236

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 「ぐふっ、げへ、ごほっ」
 咳き込むつくしに、憮然とした桜子がハンカチを差し出す。
 「またですか。もう!本当に、どういうことなんです?」
 「…ごほっ、どういうことなのか、って言われても」
 桜子の不機嫌の理由が思い当たらない。
 桜子の真っ白なレースのハンカチに染みを作ってしまって、ゴクッとつばを飲み込む。
 …うひゃ~、高そうなハンカチ。
 つい差し出されたままに、顔を拭ってしまったが値段を考えると動悸が高まる。
 「先輩」
 「ひっ!ごめん、クリーニングして返すから」
 「誰がそんなこと言ってるんです。…なんでこんな貧弱なボケボケ女に、あんな高スペックの男性陣がみんなして群がるんでしょうっ」
 「…貧弱なボケボケ女って、あんたねぇ」
 元々毒舌なのはわかっていたが、本人を前にして大した言い草だった。
 そこまで堂々と言い放たれると怒るより、呆れてしまう。
 「F4ですよ!あのF4!」
 「…ちょっと、声デカイ。興奮しないでよ」
 「興奮しないでいられますか!一人でもとんでもない話なのに、なんでF4全員がっ」
 言われても、つくしの方がよほど疑問だった。
 別に類に惚れられてるわけではなかったし、総二郎も恋愛感情ではない的なことを言っていたので、4人全員というのは語弊があったが、確かに司とは付き合っていた過去がある。
 あきらにも結婚を前提にした交際を申し込まれている。
 真剣にそんなことを悩むつくしのボケ具合に、桜子が大きく溜息をついた。
 「はあ…」
 「ま、まあ、あんまり気を落とさないで?」
 「先輩が言わないでください。これだけ努力して、こんなに綺麗な私がF4どころか、結婚してもいいと思える男性にもいまだに巡り会えていないのに」
 「あんた、彼氏いなかったっけ?」
 「…結婚まではねぇ」
 はあっと再び溜息をつく桜子にもいろいろあるのだろう。
 そういえば、いつも悩みを聞いてもらうばかりで、桜子の悩みを聞いてあげたことがなかった。
 …あたしなんかじゃ頼りにもならないかも。
 そうは思っても、いつか恩を返したい。
 桜子の力になりたいと思うつくしの心は真実だった。
 「…?なんですか?先輩」
 「ん、あんたにもいろいろあるんだろうなって思って」
 「まあ、おばあさまもまだ全快とは言えませんしね」
 「ああ、そうだったね。あたしったら、そのことも伺いもせず」
 「いえいえ。前回お話した頃と、大して状態は変わらないですし、しばらくは小康状態なので、そこはお気になさらず。それより!西門さんはなんて?」
 さっきまで不機嫌にしていたのに、もう目を好奇心で爛々と輝かせてつくしを見ている桜子に呆れてしまう。
 「…なにって」
 「口説かれてるんでしょ?」
 「そういうわけでもないんだけどね」
 「もうじれったい!全部話してください」
 矢継ぎ早に質問され、仕方なくシドロモドロに経緯を話す。
 「と、いうわけ」
 「…西門さんが、恋愛じゃなく信頼、ですか」
 「意外でしょ?」
 「いえ、どうでしょう。元々、西門さんって遊び人ではありましたけど、実際の恋愛に対しては冷めているというか、避けているところがありましたからね」
 つくしは目を瞬かせる。
 確かに真剣になってるような女性はいなかったようだが、つくしにしてみれば、総二郎は女にだらしない、女好きだとしか目に映っていなかった。
 「まあ、先輩はね。そういう機微に疎いですからね」
 「…ほっといて」
 「先輩には悪くない話じゃないですか?」
 「悪くないって…どこら辺がそう思うわけ?」






 「こちらが、松永調査企画からの調査結果です」
 第二秘書の三田村が持ってきた書類を受け取り、類は小首を傾げた。
 「…ふぅん、けっこう時間かかったね。やっぱり、高坂がなんか手を回してる?」
 「あと、二、三、横やりというか、こちらの調査の内容をお知りになりたい方々がいらしたようで」
 「ああ、まいてくれたんだ。別に知られても良かったけど、あんまり手の内がツーツーなんじゃ、侮られるか」
 封筒からいくつかの資料を取り出し確認する。
 「ああ、そうだ。三田村、今日から、お前が俺の第一秘書に昇格だから」
 一礼して専務室を退出しようとしていた第二秘書が眉根を寄せた。
 「あからさまじゃないでしょうか?」
 「別にいいんじゃない?ドアの外で聞き耳立てられるのも、いいかげんうんざりだし。連結子会社の方の株の買収も進んでるんでしょ?」
 「…ええ、気がつかれないようにですから微々たる進みですが、そちらはお任せください。他は?」
 「他は…もちろん別に任せてるから、お前が気にしなくてもいいよ。お前が全部やっちゃったら、それこそあからさまってやつで脳がないでしょ?」
 ニッコリ笑う類の顔は一筋縄ではいかない。
 信用していないわけではないだろうが、信頼はしていないのだろう。
 類によって見いだされ、抜擢されて忠誠を誓ってきた三田村でさえ、類の手の内のすべてを知っているわけではなかった。
 恐ろしい男だ…そう思う。
 のほほーんとした甘い美貌のその奥底は、その目の奥の昏い光同様底が知れず、彼のとらえどころなさとその怜悧な能力が空恐ろしい。
 「昼行燈でいた方が楽だったんだけどね」
 「…それではいけないのですか?」
 「お前だって、野心くらいあるだろ?」
 「…そうですね。でも、専務を信頼しておりますから」
 ふふふ、と笑う類の真意はどんなものだったのだろう。
 三田村には図り知れない。
 だが、彼に魅入られた瞬間から、彼の野心も将来もすべては類の手の中にあることは確かだった。
 三田村が執務室を出るのを見送って、類は肘をついた片手に顎を載せ、窓の外を眺める。
 「…北軽井沢か。ずいぶん、コテコテの場所だね、潜伏には向かないんじゃないの?」
 娘によく似た高坂の浅はかなテカリ顔が目に浮かぶ。
 どうしたって、DNA鑑定を避けることなどできようもはずもない。
 それが出産前のことか、出産後になるかの違いだけで。
 それでも、類との縁談を継続できるとあの親子は本気で思っているのだろうか。
 「まあ、急場しのぎできればそれでいいってだけかもしれないか」
 あるいは、本当にそのままいければ勿怪の幸いくらいに思っているのかもしれない。
 以前の類であれば、それもまた一興と時が来るのを待っただろう。
 どの道明らかになる真実なら、あえて努力せずともいずれ判明するし、望まぬ事態などというものがかつでの彼には存在しなかった。 
 予定外であっても、いずれ後継者は儲けなければならないのなら、別段美也子の子であって何の問題があろうか。
 …今となっては大問題ってやつだけどね。
 自分の心の動きに、自嘲する。
 だが、それはけっして嫌な感情ではなかった。
 熱く激しい感情はまだ慣れなくって居心地が悪かったけれど、だが現実も夢の世界も区別ができない曖昧な世界よりもさらに鮮烈で魅力的だった。
 …鮮烈な世界に魅せられて、つくしとなら居心地が良い世界となるのかもしれない。
 知らず知らずそんな期待と望みを抱いてしまった。
 望んだなら、手に入れなければならない。
 手に入れたいのなら、行動しなければ何も手にすることなどできはしないと、今の類は悟っていた。





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