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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて230

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 『…君と類のことを、社長が知らないわけがない』
 耳に残る高階の言葉。
 高校生の時に訪ねてきた、司の母、楓の顔と言葉が思い浮かぶ。
 『つくしさんに、司をあきらめていただきたいんですの』
 さすがに5千万円は出てこなかったな…と思う。
 そんなつくしの気持ちが伝わったのか、
 『いまのところ、それでどうこう言うつもりじゃないだろう。類も成人した大人の男。しかも、あれで花沢物産に多大な貢献をしている。付き合っている女性の一人や二人いてもおかしくないからね』
 …一人や、二人、か。
 実によく今のつくしと類の現状を示している言葉だった。
 『類は君を自分の秘書にするつもりだったらしい』
 それを聞いて合点する。
 あの辞令はようは、花沢家の体面ということなのだろう。
 会社からの命令であればつくしに否やは言えないし、類はそれをできる立場にいる。
 そして、その父親も。
 …こんちくしょう。
 心で悪態を突き、笑い出したくなった。
 おそらく、類が自分を秘書に…などと門外漢な仕事につけようとしたのは悪意などではなく、彼なりのつくしへの気遣いなのだろうとはわかっていた。
 すでに初っ端からスタートを誤った、花沢物産でのつくしの立場。
 会社に送られた誹謗中傷の怪文章の写真の一枚に、類の後姿があったのをわかった者もいただろう。
 緘口令を引かれているからと言って、人の悪意や嫉妬までも取り締まることはできないのだ。
 もはや、自分が花沢物産の社員などではなく、フレッシュラインからの出向者だと言い募ったところで、大きな力の前ではどうにもできないことはわかっていた。
 それならば。
 会社の昼休み、退社後の類のマンションで密かに検索したハローワークの求人広告が脳裏に思い浮かぶ。
 けれど、巨大な大企業である花沢やそれに繋がる中小企業は思うよりも多く、どことどこが繋がっているのか、一介の会社員であるつくしには把握しきれない。
 できれば、F4に連なる会社も避けたかったが、日本にいる以上、そうも言っていられないことはわかっていた。
 『先輩、ドイツにいらっしゃいませんか?』
 桜子の誘いをその時は一笑に付したものの…。
 「…おい」
 両親のことは心配だが、勝手に新たな借金は作らないようにと処置はとってあったし、進も海外赴任を視野に入れた職種を選び旅立とうとしている。
 そして、類との契約も切れるだろう今ならば…。
 「おいってっ!」
 ガシッと掴まれた腕に引っ張られ、驚いて顔を振り向けると、憮然としたサングラス姿の美男。
 「…え?」
 「お前、よくこんなイイ男無視して、素通りできるな」
 呆れた顔でそんなことを言うあんたの方がよっぽど呆れるわよ、そう思いながら、
 「何やってんの?西門さん」





 「だから、すっかり約束のことを忘れてたのは謝るわよ」
 連れ込まれたド派手な車の助手席。
 今日はどうやら総二郎自ら運転するつもりらしく、鼻歌交じりに運転席に座る姿は、見慣れたつくしでさえうっとりするほどカッコイイ。
 ふと向けた視線の先、会社帰りのつくしの同僚が、驚いた顔で車とつくしを見つめていた。
 …うげっ、また、とんでもない噂が飛び交いそう。
 今更、誹謗中傷の一つや二つ増えたところで痛くもかゆくもなかったけれど、女たらしの総二郎の女の一人だと見られるのも業腹だった。
 とはいえ、その総二郎にも勝る淫乱女なのだと、周囲の人間に認識されている自分にうんざりと凹んでしまう。
 一般よりもよほど生真面目でお堅い貞操観念を持っているつくしにしてみれば、暗澹たる気分に気持ちが塞がれてしまう状況だった。
 「…お前の彼氏だとでも言っておけ」 
 「は?」 
 「お前にはメロメロで、超絶カッコイイ彼氏がいるから、他の男には目がいかないとでも自分で言いふらせばいいだろ?」
 「…なによ、それ。自分で超絶カッコイイとか言うかな?」
 第一、メロメロだ。
 総二郎が言いそうもない言葉に、ぷっとつくしは噴出してしまった。
 「そうやって笑ってろよ。最近、お前いつ出くわしても、苦虫潰したような顔しやがって」
 「……」
 つくしをチラッと見た、サングラスを外した目は至極真面目で、彼女を本当に心配していた。
 「西門さん」
 「いつ見ても、庶民根性全開で逞しい女だったお前が、そんな不幸背負った暗い顔して似合わねぇんだよ」
 「…いつも一言よけいだよね」
 「お前相手に俺があまりに甘いんじゃ、お前だって落ち着かねぇだろ」
 「まあねぇ」
 真剣になりきらず、歯に衣着せぬ総二郎とのこうしたやりとりが懐かしく、俯きがちだった心を軽くしてくれる。
 「お前、腹は?」 
 言われてちょっと考える。
 お腹が空いたと言えばそうだとも言えたが、どのみちいつも夕食はもう少し遅い時間だった。
 「ん、まあ、多少は空いたかな」 
 「ふん、じゃあ、俺の用が済んだら、美味い懐石でも食わせてやるよ」
 「ええ?」
 まあ、食事か酒の誘いだとは思っていた。
 …あたし、お財布の中身足りるかな。
 少し心配する。
 それとは別に、総二郎の用事というのに思い当たって、苦笑した。
 「ねえ、あたし、もう作法もなにも忘れちゃったよ?」
 「案外、体で覚えたものは何年たっても忘れてねぇもんなんだよ」





 予想通り次期家元自らお茶の指導を受け、しびれた足をさすること小一時間ほど。
 すきっ腹に口に入れた甘味はことのほか美味く、目を輝かせて頬張るつくしに、総二郎は苦笑しっぱなしだった。
 「…お前な、おやつじゃねぇんだから」
 「わかってるわよ、仕方ないでしょ、お腹空いてたんだから。ん~、でも、美味しかった。さすがに、西門さんのお宅でいただくお菓子はすっごく美味しい!」
 「菓子の感想ばかりで、俺の点てた茶にはなんか一言ないのかよ」
 言われて居住まいを正したつくしが、両手を畳につけ一礼した。
 「けっこうなお点前で」
 「…お粗末さま」
 顔を見合わせてふっと笑いあう。
 「お前、ホント見事に忘れてんだな。お前のそのセリフはドラマの見すぎだろうが」
 総二郎がパンパンと両手を打つと、女中さん(道明寺家ではメイドか)が楚々と入ってきて、どこの料亭かと見まがうお膳をつくしの前に並べてくれる。
 さすがに人前で歓声をあげるようなことはなかったけれど、美味しそうな料理の数々に再びつくしの顔が輝いた。
 …こいつ、いくつになってもガキみたいな女だな。
 クルクル変わる表情が、澄ました人々の中で自分を偽って生きている総二郎の目に魅力的に映る。
 美味ければ美味いと言い、楽しければ楽しいと、全身で表す。
 総二郎といるとどんな女も蕩けるような目で彼に見惚れて、彼の意のままにおもねった。
 けれど、その賛美の中のどれほどが、彼自身への賛美で、彼の器やバックボーンではなく彼を見たものであるのかと、時々皮肉に笑いだしたくなった。
 …別に司みたいに、自分の背景におもねられるのがムカつくってほど潔癖じゃないつもりだけどな。
 青臭い恋というものを経験しなかったゆえにか、妙に司とつくしの恋が眩しく思えていた高校時代。
 不器用なやつらだと思いながらも、その恋の行く末を案じていた。
 そうして、今目の前にいる女は数々の苦難を得ても、あの頃とほとんど変わってなかった。
 純朴で、情に厚くて、逞しくて…。
 踏まれても踏まれても、真っ直ぐ天を仰ぎ見る向日葵。
 「ドラマの見すぎったって、このお邸の凄さと、あんたのやることなすこと見てるとドラマそのものなんだもの。パンパンって、本当に手を叩いて人を呼ぶって思わなかったわぁ」





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