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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第六章 固執①

昏い夜を抜けて228

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 類にして、我ながら精力的だと笑いたくなってしまった。
 彼なりに少年の日の無力や司の敗北を糧に、自分なりの力をつけてきたつもりだ。
 だが、花沢物産での父親の力は強大で侮りがたく、まだ手の内を見せる時ではない。
 とりあえず、高坂家の実情をさらに詳しく探り出し、美也子の胎の子供の父親とみられる人間を特定する必要もあるだろう。
 …大したもんだよね。
 そう思う。
 つくしが『類を愛してる女』と同情を見せた当の女には、彼と婚約当時複数関係を持っている男がいたことを類も承知していた。
 実際、当初の美也子は互いの交友関係にも理解を見せていて、むしろ自分の奔放さを許容しろという代わりに、類にも束縛を求めていなかったように思う。
 人の心は水面のように捕えがたく、そして測りがたい。
 彼の何が、あの自己愛の塊のような女に執着させる原因となってしまったのか。
 顔?金?地位?それとも、SEXだろうか。
 そんなものだというのなら、『愛』というものはなんと陳腐でバカバカしいものだろう。
 それでいうのなら、何も持たない、特に美しくも賢くもなく、何のバックボーンも持たないつくしの何が、乾いて凍り付いていた彼の執着を引き出したのか。
 最初…再会したつくしに対して抱いた感情は、興味に過ぎなかった。
 自分と同じく、他人になんか興味がなくって、むしろ厭って毛嫌っていたはずの司を捕えた女。
 荒ませるほどに愛させた女を、ただ知りたかっただけだ。
 そして彼女を知るうちに、自分と静を重ね合わせて憎んだはずだったのに。
 気が付けば囚われていたのは類の方。
 つくしの豊満とは言えないが、柔らかく華奢な体が彼を包み込む時の充足感。
 触れる指先の温もりが彼を憩わせ、一人でいる時よりも心地よいと感じさせた。
 静といる時ですら、この時が一体いつまで続くのかと、いつも去られることを恐れ、彼女の愛情が足りないと焦燥に苛まれていたというのに。
 一度気が付いてみれば…類自身もまた恋に溺れる一人の男にすぎなかった。
 つくしが笑えば可愛い。
 喜んでくれれば嬉しい。
 その甘く匂やかな彼女自身の心が欲しい…と。
 それなのに、なぜ通じないんだろう。
 静の時のようにすべてを曝け出して、縋りつけば、つくしは手に入るというのだろうか?
 だが、類は怖かった。
 つくしへの愛を自覚しても、彼女を信用できなかった。
 人は移ろい、また、裏切る生き物であり、そして彼女は司を裏切ったのだ。
 静のように。
 たとえどんな理由があろうと、類にとって『裏切り』とはどんな理由にも勝る罪であり、見捨てられることは何にも代えがたい恐怖だった。
 突きつめてゆけば、自分の怯懦を思い知らされ、類は溜息をつく。
 トゥルルルルルル~、トゥルルルルルルルル~、
 『…類か?』
 「ええ、お久しぶりです」






 『彼』とは年に数度、親族の慶弔時の際に顔を合わせるくらいで、ここ数年社交辞令以外の何を語らうこともごく稀だった。
 その類が、個人回線で連絡を入れてきたのに、相手は驚いているようだ。
 往年のカリスマを感じさせる声音は、今も健在だった。
 「お元気でいらっしゃいましたか?」
 『ああ、相変わらずだ。お前の方はフランスから帰国したらしいな』
 「ええ、ご挨拶にも伺わず。パーティにもここのところ、顔をだしていらっしゃらないので、ご報告が遅れました」
 あくまでも他人行儀なのは、心の距離の表れだろうか。
 子供の頃から『彼』を苦手だとは思わなかったが、愛着を覚えるには程遠い。
 しかし、『彼』が類を買ってくれていたのは、子供心にわかっていた。
 人の機微を悟り、透かし見るように見抜く類ゆえのことだったが、そのことこそがまさに『彼』に類を欲しがらせる一因なのだ。
 「彰のこと、ご存知でしたか?」
 『…お前の父親も思い切ったことをしてくれる。志保子がさぞや怒り心頭なことだろう』
 「あなたにとってはどちらでも同じことなのではないですか?…俺でも彰でも、争わせてよりよい後継者を得るのがあなたの望みなのでしょう」
 『…わしは、お前を買っている。お前がアレに勝てないとしたら、執着心のなさだけだ。花沢に興味がないか?』
 「ありませんね」
 即答できる。
 その方が楽だから流されてきただけで、何もかもが嫌になれば容易に捨て去れると断言出来た。
 だが、今は違う。
 欲しいものがある。 
 そのためには力が必要なのだ。
 そして戦わなければならないというのなら、そんな自分も曲げなくてはならない。
 「興味はありませんが、欲しいものはできた」
 『…ほぅ』
 電話の向こうの相手が舌なめずりしているのが目に見えるようだった。
 執着は欲望に繋がり、弱点にもなりえる。
 だからこそ、類は気を引き締め、すべての手の内は晒さない。
 「正直、高階にも興味はありません」
 『……』
 「ですが、俺が欲しいのならあなたは俺に力を貸してくださるべきだと思いますよ」
 『なにが欲しい?』
 釣りは忍耐が必要だ。
 いままで釣りに興味を持ったことがなかったし、忍耐を必要とする場面もなかった。
 「いずれ力を借りるかもしれません。でも今は、俺を手に入れるチャンスかもしれないと、おじいさまに知っていていただきたかっただけですよ」
 餌は撒いた。
 後は機が熟すのを待つだけ。





 ビー、ビー、ビー。
 「牧野さん、鳴ってるのあなたの携帯じゃない?」
 マナーモードにしていた携帯が鳴っているのは、同僚が先だった。
 さきほどうっかりマナーにせずにいて、思いっきり私用電話の音が鳴り響いたのに汗をかいたのだ。
 …まさか、また類ってことはないわよね。
 周囲の冷たい視線を気にしつつ、席を立つ。
 …やっぱり、仕事用とプライベートの携帯を分けるべきだろうか。
 そうは思うものの、類からの電話を完全なプライベートというわけにもいかず、また、私用電話が多いわけでもなかった。
 いまのつくしの交友関係もそれほど広いものではない。
 電話が来るとしたら、東北の両親か弟の進、あとはせいぜい前の会社の同僚・香帆からくらいなもので、最近交友を再開した桜子とて多忙の身なので、メールが多かった。
 誰だろ。
 いったん切れた着歴を確認しようと、携帯に手をかける。
 その途端、ビー、ビーっと鳴ったバイブの音にビクッと体が跳ねた。
 …超絶カッコイイ伊達男様
 何時の間にやら勝手に入れられていたニックネームに、頭痛を覚える。
 「……はい」
 『おせぇな、忙しい俺に何度手間かけさせるつもりだよ』
 「忙しいって…あたしも仕事中。勝手にかけてきて、すっごい偉そうな言い分なんですけど」





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