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「中・短編」
初恋は靴底の感触…30話完

初恋は靴底の感触19

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 わあああっと外から声が聞こえて、道明寺の注意が一瞬それる。
 落ち着かないようなふわふわした甘やかさがそれで途切れて、あたしはホッと息を吐き出した。
 でもホッとしたはずなのに、心のどこかでその甘さに浸かったままでいたいなんて、あたしいったいどうしちゃったんだろうって、鳴りやまない鼓動の速さに戸惑い、赤面した顔を誤魔化す。
 「パ、パレード始まっちゃったみたいだね」
 「…だな。お前見たかったんじゃなかったか?」
 「う、うん。食事終わったなら、見に行こうよ」
 「…今から行っても人混みで見えねぇだろ」
 時計を確認すると、道明寺が顔を顰めて、携帯を取り出しだす。
 「な、なに、どこに電話するつもり?」
 「近くにここを見下ろせるホテル建ってるだろ?」 
 「ええっ?!」
 それって、まさかパレードを見るためだけに、ホテルの部屋を借りるってこと?!
 慌てて、道明寺の手を抑えて通話を切らせる。
 「おい」
 「い、いい、いい、いいっ。雰囲気見るだけでいいから」
 「別に…お前を部屋まで連れ込んで、どうこうしよってつもりじゃねぇけど?」
 え?あ?へ?いやいや…それも心配だけど、あたしの常識の中では泊まりもしないのに、高いホテルの部屋を借りるなんてありえないことだよ。
 「…どの道、最後まで見なくていいし」
 「そうなのか?」
 まあ、見れれば見たい気もするけど、まだ、道明寺と二人っきりでそういう雰囲気あるデートをするのには躊躇があった。
 「いいの。今日はスカッとする乗り物に乗るって決めてるんだもん。まだ乗ってないジェットコースターもあるしさ」
 「…まだ乗る気なのかよ、ジェットコースター」
 うんざりした顔の道明寺に、クスリと笑ってしまいそうになった。
 こんなデカイ図体して、実はジェットコースターが苦手だなんてね。
 でもまあ、男の人は苦手な人ってけっこう多いかも。
 あたしは大いに楽しいし、本当はまだまだ乗りたいけど…。
 少しは手加減してあげるとしようかな、なんて。
 「何よ、嫌なの?」
 「……いいけどよ」
 「じゃあ、いこいこ!パレードの間は、人も少しは少なくなるし、並ばなくてもすむからさ」





 うんざりしながら椅子から立ち上がると、ニッコリ笑った牧野が手を差し出して来る。
 思わずジッとその手を見て固まっていると、
 「…どうしたの?行こう?」
 無意識の行動なんだと、ニヤけそうになった。
 「何よ?」
 「…いや、なんでもねぇ。で、どれに乗りたいって?」
 ニコニコ笑って本当に楽しそうな牧野が、すげぇ可愛い。
 こんな人混みの中じゃなきゃ、そのまんまどこかに引きずり込んで抱きしめて、キスして…とか、邪な妄想をなんと抑えて、その手を取る。
 手に持った地図と周囲を見比べていた牧野が、一点を見て、「あ、あれ!」と目を輝かした。
 俺を見上げるデケェ目に吸い込まれそうだ。
 なに?というように首を傾げる牧野に苦笑して、牧野が見た方向へと俺も視線を向ける。
 こいつ…本当に、わかってんのかなって、思う。
 俺が惚れてる、好きだって言ってることの意味をちゃんと真剣に受け止めてるのか、なんて。
 この俺様がただ一人欲しいと思ってる女だっていうのに、なんなんだよ、この無防備さは。
 まるで友達とか、そんな普通さにガックリくるような。
 だけど、こうして繋がれた手が、少しは期待してもいいよと告げられているようで。
 「どれだよ」
 「あれあれ、あれなら、道明寺でも大丈夫でしょ?」
 「…別になに乗ったって平気だって言ってんだろ?舐めんなよ」
 憮然と言い返せば、舌を出して、「ごめんごめん」という顔が悪びれてねぇだろ。
 
 「わかってるって。たんにあたしが、乗りたいだけ」
 指し示された観覧車に向かいながら、あの密室なら少しくらい大胆な行動でも許されるかとか、どうやってこいつを攻略するかとか、そんな風に考える時間がすげぇ楽しい。
 「…ねえ、なんか変なこと考えてる?」
 「は?何がだよ」
 「いや、それならいいんだけど、なんかいました顔が妙にスケベ臭かったから」
 「おいっ!この俺にスケベ臭いなんて言う女はお前くらいなもんだぜ!」
 「……」
 ジト目で見る顔に憤慨して、だがすぐに顔を見合わせて笑いあう。
 この時間が永遠に続けばいい。
 ずっと牧野とこうして一緒に過ごしてゆきたい。
 8年前には叶わなかった願いが、すぐそば、手の届くところにある。
 お前も俺のこと、少しはいいと思ってくれてるんだろ?
 こうやって過ごしているうちに、きっと俺のこと、もっと好きにさせてやるから覚悟しておけよ。





 道明寺とのデートは、忙しい上司への慰労か昔馴染みへのボランティアだと思ってた。
 それが一緒の時間を過ごすうちに、いつの間にか、この俺様男と過ごすことがこんなに楽しくて、気安い時間になるなんて、思いもよらないことで。
 …楽しんだよな、意外にも。
 8年前には気後ればっかりが先にたって、注目されることがすごく嫌だった。
 大人になったんだろうな、こいつもあたしも。
 道明寺なんて、いまだにごく普通の人たちの中にいると、違和感バリバリで、羊の群れに紛れ込んだ狼のような感じで目立つことこの上ないのに。
 いや、そういう意味ではむしろ昔以上に目立つ存在になっている。
 それなのに、あたしにあわせて人混みに並んだり、フードコートなんてこいつの人生ではありえなかった場所で食事をしして、遊園地のアトラクションなんて子供っぽい遊びにも黙って付き合ってくれた。
 まあ、一々文句を垂れるのは仕方がないとして、それだって言いあっては笑っての一つにコミュニケーションだとも言えなくはない。
 友達だと思えば、悪い奴じゃないんだよね。
 そんな風に思った途端…すごい甘い眼差しを注がれたり、蕩けるような笑顔を向けられて、ドキドキと胸が高鳴って壊れてしまいそうになった。
 やだ、道明寺のくせに、そう思うのに。
 「これこれ、これ欲しかったんだよね~」
 帰り際によったパークショップ。
 ちょうど少し前に買いそびれたキャラクターのストラップを見つけて、歓声をあげたあたしの顔のすぐそば、道明寺が綺麗な顔を近づけて、覗き込まれた。
 やだ…。
 ふわっと、香った道明寺のコロンの甘い香り。
 華やかで、上品なその匂いは、道明寺に似合っていてすごくいい匂いだった。
 「どれ?」
 「…えっと、これ」
 「ふぅん」
 さっと手に取って、道明寺がお店の人に差し出す。
 「ちょっと!」
 差し出したカードを持つ手を抑えようとして、逆に抑えられて、握り締められた手にすごいドキドキする。
 さっきだって手を繋いで歩いてたのに。
 アトラクションへの興奮で紛れていた気恥ずかしさが蘇って来る。
 恋人繋ぎに絡め直された指先の強さが、迷子にならない為なんかじゃない…友達のはずがないって言ってるみたいで、すごく恥ずかしいのに…なんだか少しだけ嬉しいかも。
 「…二つ買ったから、ちゃんと携帯につけろよ」
 「え?二つって」
 「一つは俺の分」
 綺麗に微笑まれてボウッと見惚れちゃったけど、…俺の分って、マジであんた、これつける気なの?
 手渡されたピクルス・ザ・フロッグの蛍光色のカエルが、ニンマリ笑ってあたしを見ていた。





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