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初恋は靴底の感触…30話完

初恋は靴底の感触15

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 「なあ、いつなら時間あるんだよ?」
 ツマンなそうに頬杖ついて、判子を押しながらの声かけ。
 少し拗ねたような上目使いが、ここのところあたしの胸を動悸付かせてかなり困る。
 やだな…って。
 そう思う。
 道明寺のことが嫌いとか、遊ばれそうとかそんな風に疑ってるわけじゃなくって…ありていに言えば好きになってしまいそうなのが嫌だった。
 大人になった道明寺は、ずいぶん変わっていた。
 再会した当初は、立派になった見た目とは裏腹にやっぱり高校生の時のガキそのまんまに大人になったのかと、正直ちょっと軽蔑してた。
 けど、高木さんも驚いていたけど、いまの道明寺はずいぶん変わったらしい…。
 こうやって適当に仕事をしているようでも、いざ書類を確認してみれば、道明寺がちゃんと目を通して考えた上で押印しているんだってわかった。
 高木さんがNYに帰って、あたしが仕事を引き継いで1日目。
 ハラハラしながら仕事を回し、スケジュール管理をしていたのに、全然心配する必要がなくって肩透かしをくってしまった。
 そして…2日目。
 苦労知らずのバカ坊ちゃん社長だと思っていた、あたしの見る目が変わった。
 威風堂々とした体裁に負けず、仕事もできて、他人との交渉も難なくこなすこいつに感心してしまうくらいだったから。
 こんなんで、どうして僻地(あたしはそうは思ってないんだけど、数万人単位で雇用しているような会社から千人クラスの会社に飛ばされたんじゃあ、都落ちだよね?)左遷されるハメになんかなったんだろう。
 そりゃさんざん高木さんからも聞いてはいたけど、あたしの目の前にいる男はまるで別人のようで、担がれてる気さえしたくらいだ。
 …まあ、あたしを担いだところで高木さんには何の得もないだろうし、実際、御曹司のくせにこんなところへ来てる。
 悔しいけど、でもこんなにも優秀な男が、こんな質素な執務室で判を押すのが主な業務って、あまりにもったいなすぎない?
 「…おい、聞いてんのかよ」
 「あ、すいません、社長。ついフツーに聞き流してました」
 つい正直に話してしまって、道明寺の顔がヒクヒクと引き攣って、青筋がたってしまった。
 「…お前、そういうよけいなところまで、高木から引き継いでんじゃねぇよ」
 「ははは…そんなんじゃないですけど」
 自分でも今の返しはちょっと高木さんぽかったかと、ポリポリと頬を掻いた。
 「はああ~、お前…いったい、いつになったら俺のこと真剣に考えるつもりなんだよ?」
 またも直球だ。
 再会して以来、高木さんがいようと二人っきりになろうと、道明寺は口を開けばあたしを口説いてくる。
 それがむず痒くて…落ち着かない。
 嫌だっていうわけでもないのが、我ながら困る。
 本当に嫌なら、話は簡単なのにって思う。
 まあ、上司だし、こいつが昔ながらのアホのままだったら、下手すると会社をクビ?とか言って、大いに困った事態だになりそうだったけど。
 「…真剣って言われても」 
 「よもや、お前、俺がどういうつもりで毎日毎日、お前に邪険にされながら猛アタックしてるのか、わかんねぇとか言うつもりじゃねえよな?」
 「いや…さすがに、それは」
 だいたい、しょっぱな…再会して初日に『彼氏になる』だの、『俺の女』呼ばわりされてるんだもん、いくらそういうことには鈍いあたしだって、その意味くらいわかってるつもり。 
 「どうだかな。鈍いお前のことだ。…普通に勘違いしてても俺は驚かないぜ」
 「え?あんた、あたしが思ったこと」
 また、あたしったら、口走った?
 バツが悪くて、道明寺を見返すと、綺麗な顔をニヤッとさせてちょっと悪い感じに微笑みかえされちゃったから、思わず赤面してしまった。
 ただでさえ、人より数倍いい顔してんだもん。
 こんな風に誘惑するようなことをされたら、男の人に免疫がないあたしとしては困っちゃう。
 …こういうところも、やっぱり変わったなって思うんだよね。
 昔のこいつだったら、あたしのことを好きだったとしても、雑なアプローチで、けっこうあたしを怒らせたり困らせることが多かった。
 いまだって十分傲慢だし、自分勝手だし、強引だけど、妙に余裕があって、あたしが怒っても軽くあしらわれてしまうことさえある。
 「顔に書いてあるんだよ、お前の場合。思ったことそのまんまって、お前、見た目はずいぶん大人っぽくなって綺麗になったけど、けっこうそういうとこ高校生の時のまんまだよな」
 「……あんたはずいぶん、大人になったわよね」
 皮肉で言ったのに、ふふんと笑った顔がちょっと紅潮していてすっごく嬉しそうなんですけど?

 「そりゃあな。少しは俺も大人の法要力ってやつ見せて、お前を感じ入らせてぇからさ。ようはハートなんだぜ。念仏くらい知らなくても、俺様のお前への愛情を示すのに何の障害にもならねぇんだよ」
 包容力はともかく、なんでそこに念仏が出てくるのがかよくわからなかったけど、バカ坊ちゃんも大人の男になったってことなんだろうね。
 …それがけっこう悔しい。
 「…て、ことで今日、仕事終わったらデートしようぜ」
 何が、て、ことなのよ。 
 そうは思ったけど、あたしはあたしで、こいつに対して自分がどう思ってるのかそろそろハッキリさせるべきだと思ってもいた。
 高校生の時のことは、あたしの中でも苦い思い出として実は残っている。
 最初こいつがあたしに対してモーションかけてきた時も、高校生の時の復讐?って思うくらいには、道明寺に対して悪いことをしたって自覚があったから。
 あの時、こいつがどれくらいあたしに対して本気でいてくれていたかってこと、当時のあたしでさえ良く分かっていた。
 それなのに花沢類とのことを誤解させるようなマネをして、どれだけ道明寺を傷つけたか。
 そりゃ、あの頃、あたしは道明寺に対しての自分の気持ちをわかりかねていたし、付き合うなんて言ったことはなかった。
 それに類とのことにしたって弱ってる彼を慰めてあげたかったってだけで、道明寺を裏切ってたような事実はなかった。
 でも、気持ちがまだ類にも残っていたのは確かだったから、あれはやっぱり潜在的には裏切りだったのかもしれない。
 そんなあたしの気持ちをカンのいい道明寺が感じ取って、結果、傷つけてしまうことになったのも自明の理だったに違いない。
 そして今のあたしもあの時のように、やっぱりあやふやで。
 道明寺が嫌いかと言えば、嫌いじゃないとハッキリ言える。
 個人的には…まだまだ今の彼を知り尽くしているとは言えない。
 それでも、嫌ってた時のように弱いものを苛めるような卑劣さは今の彼にはないし、こうして間近で働くようになって、尊敬できる部分もたくさん見えるようになっていた。
 客観的に見ても、本当はあたしなんかを好きだというようなステータスを持った男じゃないんだよね。
 美形だし、お金持ちだし、地位も家柄もあって、どんな美女もきっと望むまま。
 それなのに、それでもあたしがいいって言う。
 なんで?
 どうして?
 それこそそれが不思議で。
 こうやってセクシーに笑いかけられて、誘われると今まで感じたことない胸のざわめきと…トキメキ?なのかな、全身が熱くなるようなそれでいてふわふわとした感じがする。
 ついどうしようかと考え込んでいて、返事が遅れたせいか、いつものようにあたしが無視したって思ったみたいで、溜息一つついて、道明寺の視線は再び手元の書類へと戻った。
 …そういえば、ここのところちょっと横顔が寂しそうな気がする。
 高木さんのことけっこう邪険にしてたけど、確かあの人とは5年間ずっと一緒だったんだよね?
 この人を人とも思わない道明寺に対して、あれだけ言いたい放題の人も珍しかった。
 でも、そんな高木さんを許していた道明寺にしても、高木さんを本音のところでは頼りにしていて、親しみを持っていたことは確かなんだろう。
 そんな高木さんが、一人道明寺を残してNYに帰ってしまった。
 寂しいのかな。
 …寂しくないわけがないか。
 あたしもかなり道明寺に素っ気ない自覚があるのに、それでもここまで執拗に誘ってくるのって、もしかして、本当はあたしが好きだとかそんなこと以上に、一人っきりで寂しいのかもしれないなんて思い出した。 
 そうだよ、そうじゃなければ、たかだが高校時代好きだったってだけで、大して美人でもなく取り柄もないあたしに、いまだにこうやって執着していることに説明がつかないもん。
 そういえば、あれほど仲良かったF3とも大人になってあんまり会ってないって言ってたっけ。 
 一応は、先日帰国祝いを兼ねて、久しぶりに飲み会をしたって類から聞いてるけど、その類とだって8年ぶり!とか言ってたものね…。
 もっとも、もしかしたら類とそんなにブランクがあったのは、あたしとのことも多少なりとも影響があったのかもしれないけど。
 そんなことに気が付いたら、なんだか妙に道明寺が気の毒になって、この性格なら他に友達や飲みに行く相手もいないだろうと、同情する気持ちが湧いてきた。
 「あのさ」
 「…あ?」
 「えっと…そんなに遅くならないならいいよ」
 「……」
 「その…、デートっていうか、気分転換?あんた確か、日本に戻ってきてからあたしと違って、休みらしい休みとってないよね、そういえば」
 
 「それって」
 道明寺の目が期待に輝くのに、妙に落ち着かない気持ちになった。
 そうよ、これはボランティア!
 せっかくの金曜日の夜に、一緒に憂さを晴らす相手もいない上司へのご奉仕だと、自分に言い訳をした。
 「で、でも、その書類の決裁をちゃんと終わらせて、●×商事の専務との会合で契約の話をまとめることができたら…だからね」
 すぐに自信に満ちた顔になって、道明寺の顔が嬉しそうに破顔する。
 「誰に言ってんだよ。任せろ。…約束、忘れんなよ」





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