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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて213

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 「見捨てない…静さん、ですか?」
 「ええ。だって、そうでしょう?母親はけっして我が子を見捨てないの。何を犠牲にしても」
 つくしの目が大きく見開く。
 「そんな…母親だなんて」
 「…そして、私は母親じゃない」
 「……」
 静と類との歪な関係。
 つくしの目に、類は静に恋い焦がれているように見えていた。
 なのに、その張本人の静はそれは違うというのだろうか。
 それならば、静は類をどのように愛していたのか…愛していなかったとは思えなかった。
 「静さんは…」
 「あなたが初めてだったの」
 だが、つくしがそれを静に問う前に、静の言葉が被る。
 「え?な、何がですか?」
 「類が、自分から関わろうとした人。何をしなくてもあの子の中に入り込んだ人がよ」
 いつのことを言っているのだろうか?
 確かに、再会してからの類は、距離を置こうとするつくしへと無理矢理に抉じ入ってきた。
 だが、初めて出逢った頃の彼は、つくしを拒絶することはあれ、自分から近づこうとなどけっしてしていなかった。
 「…変な子がいる」
 「は?」
 「やたらと騒がしくて、逞しくて、面白い女の子がいるって確かそう言ってたわ。高校生の時のあの子」
 「ええっ!?」
 なんともはや。
 そう言われていてもおかしくはないが、よりによって静にそんな風に言われていたとは、つくし的にはかなり不本意だった。
 思い出し笑いをしながらも、静が申し訳さなそうな顔で謝罪する。
 「ごめんなさい」
 「…いえ、花沢類が言ってたことなんですから」
 「でも、そういうふうな言い方でも、あの子が誰か人のことを話すなんて初めてのことだったの」
 「……」
 正直、そんな言われ方をしても少しも嬉しくはなかった。
 だが、静にしてみればよほど感慨深かったらしく、何度も思い出しては頷くのを繰り返している。
 「思えば、私があの子に認識してもらった時は、ホント大変だったわ」
 昔確かF4の誰からか、静が何度も何度も話しかけたりして、類を自分だけの閉鎖された世界から連れ出したのだと、そう聞いたことを思い出す…当時の、敗北感とも失望感とも知れぬ寂寥とともに。
 元々、類とどうなれると思っていたわけではなかったし、恋心を自覚していなかったのだが、それでも、胸が苦しかったことを思い出す。
 「でも、あなたはその壁をいとも簡単に打ち壊した」
 「え?いや、そんな…」
 「後にも先にも、あの子がそうやって自分から気にかけたのは、あなたが初めてで…そして、今もきっといないのだと思う。だから、見たかったの。あの子が本当に好きになったのはどんな人なのかって」
 「…好きなって」
 怪訝なつくしの顔に、静が困ったような小首を傾げ、
 「あきらから聞いたの」
 「美作さんから?」
 「ええ。類に本当に好きな人ができたようだって。あの子は、フランスでのことがあって以来、追いかけなかった私を恨んで私を寄せ付けなかった。…私自身、最近までずっと自分のことだけで精一杯。毎日をこなすのが大変すぎて、あの子のことまで気を回す暇がなかった。それは…私の罪だとわかってる。でも、ふとあきらから類のことを聞いた時、ひどくあの子に逢いたくなったの」
 「……」
 「私が傷つけたあの子が立ち直ったあの子が見たい。あの子の傷を癒すことができた人に会いたいって。そして、あの頃の私をごめんなさい。そして、幸せになって、類を幸せにしてあげてくださいって、お願いしたかったわ…それがまさか、牧野さん、あなただったなんてね」





 涙ぐんで去ってゆく静を見送って、つくしはボウッと立ち尽くしていた。
 静の誤解が胸に痛く、だからといって罪の意識に駈られている彼女に、彼女の誤解を解くことが良いことだとつくしにも思えなかった。
 …彼女は、類に幸せになってもらいたがっている。
 そして、つくしにそうしてもらいたいと願っている。
 それもまた、彼女のエゴにすぎないのかもしれない。
 それでも、類に幸せになってもらいたい彼女も本当の彼女なのだろう。
 見送らなくていい…そう言われたものの、ついエントランスまで内緒で出てきていたつくしは、膨れ上がった思いに、つい、玄関ドアを飛び出し、驚く使用人たちや運転手の目も気にせず、静へと駆け寄った。
 「静さんっ!」
 「…牧野さん?」
 「タマさんが、道明寺の家の人が、言ってました」
 「ええ?」
 「人は、自分のことは自分で責任をもつものなんだそうです。誰のせいだ、自分のせいじゃないと言ったところで、自分からは誰も逃れられない。そして、どんな人間も他人のことなんて本当の意味ではどうかしてやることもできない。それをできると思ってるなら、それは傲慢だ、そう言われました」
 静の真剣な顔が、つくしを見返す。
 つくしがそれに頷き返した。
 「だから、だから!静さんはもう、自由になってください。自分の幸せを考えてください。あたしもタマさんに言われたように、静さんにそう言います。私なんかには、こんなことを言う資格すらないし、静さんにとって何の慰めにならないかもしれないけれど、もう迷わないで、静さんはただ静さんの愛する人と一緒に幸せになってください」
 「牧野さん……、ありがとう」
 





 本当はつくしこそ、静に類を見捨てないでくれと頼みたかった。
 だが、前を見てひたすら前進する彼女を引き留めるようなことを言えはしなかった。
 …そして、類自身が彼女を追いかけ、そして踏みとどまらない限り何も変わりはしないのだとつくしにもわかっていたから。
 一度は、類は静を追いかけた。
 つくしによって背中を押されて。
 もしかしたら、それこそが間違いの初めだったのかもしれなかったが、つくしはそれを間違いだとは思いたくなかった。
 絶対に、あの時、類は日本に残ってはいけなかったのだ。
 納得できないままに鬱屈したまま、静を見送っていてはやはりそのまま腐り続けていただろう。
 そして、アクションを起こした。
 なのに、再び類は逃げてしまったのだ。
 そして、それこそが今の類を形作り、自らを不幸にしてしまっている無限のループへと追い立ててしまっていることをつくしは知った。
 人は自分からは逃げることができない。
 他人の責にしようとも、逃げる者が何も手にすることができないのは当たり前のことなのだ。
 だが、だからといって、いまのつくしに、そんな彼をどうすることができるというのだろうか。
 「…静さん、お幸せに」
 遠く去ってゆく、車を見送りながら、真実、つくしはそう願った。





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