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「中・短編」
初恋は靴底の感触…30話完

初恋は靴底の感触07

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 「…ひっ!」
 俺の怒声に驚いたらしい女が、手に持ったファイルを顔の前に立て、どうやらこの俺の怒りをやり過ごそうとしているらしい。
 カッ、カッ、カッ、カッ、カッ。
 大股歩きで、一気に間近まで差し迫ってやる。
 「あ、あの、その…」
 女の隣でその当の女の腕をとった男が、真っ青な顔で俺へと何かを言いだそうと口籠っている。
 ギロッと睨み据えれば、簡単に固まって、まあ、いつもの反応だ。
 気にすることもない。
 「…おい、この靴はお前のか?」
 この俺にしては極めて感情を抑えて、手に持ったヒールを女の顔の前に突き付ける。
 …顔と言っても、ファイルの向こうに隠れちまってるから、相手に見えてるんだか見えてないんだか。
 「す、すいません。わざとじゃないんです」
 震える声が、謝罪した。
 「…謝ってすめば、警察いらねぇんだよ。ああっ!?」
 「そんなぁ」
 「だいたい、顔も見せねぇで謝るとか、失礼だろッ」
 別に本当に失礼だとか思ってるわけじゃねぇッ。
 なんだか、不思議なデ・ジャブに襲われて、さっきから胸がドキつく。
 おいおい、まさかな。
 そんなわけねぇだろ。
 目の前の女は、すげぇ小さな女で、手も足もほそっこくてまるで子供みたいだ。
 …いや、そんな特徴日本人の女には特に珍しいものじゃねぇ。
 第一、アメリカだってそんなに多くはないが、社内にもいた。
 それを何をトチ狂って勘違いしてんだか、俺は自分の馬鹿さ加減を鼻で笑うために、女が顔の前に掲げたファイルに手を伸ばす。
 が…、それより一瞬早く、女がファイルを掲げたまま体を半分に折った。
 「ご、ごめんなさい。本当にすいません。その…お怪我はありませんでした…か?」
 おそるおそる上げられた顔。
 上目使いの目と俺の目が合った。
 …おい、マジかよ?
 そんな偶然、本当にあるなんて。
 目を見開いた俺が声をあげるのが早かったのか、こいつ…牧野がでけぇ声で叫ぶのが早かったのか。
 「ま…きの」
 「ど、どっ、道明寺?!」





 「と、いうわけで、牧野さんには社長のスケジュール管理他、一切の業務の補佐をお願いします」
 「はい」
 真剣な顔で、高木に対して殊勝に頷く牧野の顔を覗き見る。
 こうして改めて観察してみれば、やっぱり高校生の時とはだいぶ変わっていた。
 すげぇ、綺麗になっている。
 もちろん変わっていないところもある。
 真っ直ぐで長いサラサラの黒髪は高校時代の時のまま。
 ただ、秘書という仕事を意識してなのか、綺麗に結い上げている。
 昔は洗いざらしのままか、野暮ったい三つ編みだったのに、変われば変わるもんだよな。
 首筋に解れたおくれ毛が色っぽい。
 …って、俺どこ見てんだよ。
 誰に何を言われたわけでもないのに、思わず、ハッと視線を反らした。
 けど、すぐに見ないではいられなくなって、頬杖ついた手で誤魔化しながら、牧野を何度となく盗み見る。
 何やってんだよ、俺。
 そう思うのに…。
 「…というところで、よろしいでしょうか?社長」
 「あ?」
 「ほら、私とは違い、極力社内でのみの業務ということで」
 「……」
 何のことかと思い起こし、そういえば、よく知らねぇ奴にプライベートまで踏み込まれることの嫌さに、新しくつける秘書はあくまでも社内限定だと言い渡していたのを思い出した。
 いまさら、俺の生活態度がどうのと言っても無駄なのは高木も熟知している。
 ババアのつけた高木でさえどうにもできなかったくらいだ。
 それをたかだか子会社のにわか秘書にどうにできるものではないのは、高木もよくわかっていたのだろう、溜息一つで容易に受け入れた。
 「ですので、牧野さんは、社長が出社された時のみ、こちらの社長室の業務を受け持たれれば十分です」
 「…出社された時のみ?」
 「ええ、おそらく月に一日もいらっしゃればいい方だと思われますので」
 歯に衣着せぬ物言いに、俺はギョッと間に入り、高木の言葉を遮った。
 「バカ言ってんじゃねぇよっ!」
 牧野の軽蔑の目が痛い。
 高校時代を知ってるこいつのことだ。
 高木が行った言葉の意味をよくわかっているのだろう。
 その目が言っている…相変らずチャランポランな、バカ坊ちゃんなのね。
 かなり心臓に堪える。
 「な、何が一か月に一日だ!てめぇは仕事を舐めてんのかっ!社長たるものがブッたるんでたら、下の者にもシルシ(示しだよ、坊ちゃん)つーものがつかねぇだろ!」
 「……」
 「……」
 今度は高木の目が点になる番だ。
 「……大丈夫ですか?」
 その返答はなんなんだよ!
 俺がギロリと睨み返してやると我に返って目を瞬かせ、首を振って呆けた顔をもとに戻していたが、それでもやっぱり何度も首を傾げていた。
 …失礼な奴だな、高木。
 いや、こいつが失礼なのは今更だ。
 やっぱりお前もここに引き留めて、一生飼い殺してやるか。
 そうは思うものの、こいつが日本に残った日には、それこそ経営者生活送る間ずっと、このウザイ男との二人三脚が続くのだと思い直した。
 牧野が秘書になる必要もなくなっちまうしな。
 …いや、牧野が秘書だからどうだっていうんだ。
 そうは思うものの、つい、大人になって綺麗になった横顔を伺わずにはいれない。
 こっち向けよ!
 お前の上司は高木じゃなくって、俺だろ。
 「…ですので、…していただければよろしいです」
 「わかりました」
 「…の方はですね」
 ふっと、俺の視線に気が付いたのか、不審そうに牧野が振り返ったから、つい俺は見ていないフリを装ってしまった。





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