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「中・短編」
初恋は靴底の感触…30話完

初恋は靴底の感触06

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 あ?人が呆けてる間にこのヤロウ、何言ってやがった。
 「…いい度胸してんな、高木」
 「ハッ。すいません、すいません。後2週間ほどで社長とお別れかと思うと、寂しくて寂しくて、つい…本音じゃなくって、思っても見ないことを」
 「……」
 バカらしくて、怒鳴りつける気にもならねぇ。
 その空々しく涙を拭う真似はやめろっ。
 ハンカチがチラリとも濡れてねぇのは、見なくてもわかんだよっ!
 「とにかく、今日は会社幹部たちとの初顔見せです。一応、本社から辞令は届いたとは思いますが、村越専務が就任するはずだったのが急な人事変更ですからね。あちらにも、まだ社長に関する資料がまわりきっていないところでしょう」
 「…だったら、俺が出社するのは来週からでもいいじゃねぇかよ」
 「何言ってるんですか。抜き打ちで訪れて、会社を中からじっくり見る機会です。後になったら、都合の悪いことは隠ぺいされて、若造の社長なんてお飾りにされてしまいますよ!」
 って、お飾り上等なんだがな。
 第一、俺を一番コケにしているのはこいつの気もする。
 そうは言いつつ、まだ俺に期待をかけるのを辞めないのも今やこの高木だけ。
 なんだかんだと高木が無駄な努力を辞めねぇのも、俺という人間にまだ何かを期待してるからなんだろう。
 …かったりぃ。
 正直、そう思う。
 けど、こいつを疎み切れないのは確かなことで。
 ババアでさえ見放したこの俺に、いったい何を勘違いして夢見てんだか俺にはわかんねぇ。
 この5年間、たっぷりこの俺がどれだけやる気がなくて、適当なロクデナシかを一番間近で見てきただろうに。
 「つきましたよ」
 「…到着いたしました」
 高木が気が付くと同時に、運転手が声をかけてきた。
 やたらと横に広がった建物だな。
 NYとはまるで真逆な風景。
 「いやあ、長閑なところですねぇ」
 「…田舎だと言えよ」
 「何言ってんですか、これでも一応東京近郊なんですから、ド!僻地だなんて失礼な物言いですよ!」
 ……お前が一番失礼なんだろうが。





 一通り会社の説明を受け、媚び媚びのジジイどもの禿げ頭を見下ろす。
 どこ行ってもこの光景は見慣れたもので、白人のテカついた禿げ頭か、東洋人の往生際の悪いバーコードかの違いしかなかった。
 「…すいません、今度社長にお付けする秘書が、いま昼休みで食事に出ていまして」
 汗を拭き拭き、専務だとかいうオヤジが言い訳する。
 「かまわねぇぜ、どうせ、今日はあんたらに顔出しただけで、帰る予定だからよ」
 「「「はっ??」」」
 その場の人間が一斉に俺を仰ぎ見る。
 なんだよ、妙にうちそろったその顔はよ。
 「…その、これから社内をご案内しようと思っていたのですが」
 「別にいい。どうせ、出社したってハンコ押すのがメインの業務で、会社のことはあんたらが適当にやっててくれんだろ?」
 俺の答えに、横の高木がヒクヒク引き攣り、ここの連中は狐につままれたように顔を見合わせている。
 どうせ、この後、聞きしに勝るバカボンだとかそんなことで盛り上がるんだろうが、俺には知ったことじゃねぇしな。
 こんなところまで来て往復すんのも面倒くせぇが、かといってつまらねぇ雁首眺めたってなんにも面白いこともない。
 こりゃ、せいぜい週一。
 場合によっては月一にでも、来れば上出来か。
 どうせ、大した業績あげてる会社でもねぇんだろうしよ。
 「じゃ、俺は帰るわ」
 「しゃ、社長!」
 お前、何年俺に付き合ってんだよ。
 慌てて追いかけて来る高木をさっさと置いて、エレベーターへと歩み寄る。
 …3階建てとかって、エレベーターがもったいないレベルじゃねぇの?
 もちろん、2階建てだって、階段で昇降なんで冗談じゃねぇが、あまりのしょぼい社屋にさすがの俺も暗澹たる気分になった。
 「本社社長に言いつけますよ!」
 「…またそれかよ。俺がババアを恐れると思ってんのか」
 「じゃあ、椿様に…」
 「……」
 別に怖いわけじゃねぇが、姉ちゃんはこの世で唯一俺が逆らえない相手であるのは確かだった。
 「とにかく!私がここを去るまでの2週間で体裁を整えなければならないんですっ!」
 「体裁さえ整えばそれでいいのかよ」
 「まあ、社長がちゃんとやって下さるのが一番ですが、とりあえず私の最低限の役割さえ果たせば、私のキャリアに傷はつかないじゃありませんか!」
 「…お前な」
 正直者は出世できないんだぜ?
 俺もたいがい、こいつには暴言を許してきたが、フツーは上司にそんなことをズケズケ言う秘書がどこにいるっていうんだ?
 こいつもある意味、特異な奴であるのは確かだった。
 「まったく、新しい秘書にもまだ会ってないじゃないですか」
 「ちゃんと伝えておいたんだろうな?」
 「…まあ、そこは。下手な人間をつけられて、社長に脅かされて会社を辞めるハメになるのはあまりにお気の毒ですから」
 「はん」
 まあなんだかんだと言いながら、高木は使える奴だ。
 この俺を、曲りなりにとも5年間、NYで常務をやらせられたのもこいつの手腕ってやつ。
 うぜえと思ったことも限りなくあるが、俺の尻拭いも相当こなした。
 それを思えば得難い奴で、多少うるさくてもこいつがいなくなるのは不便ではある。
 どうせ、NY時代以上に適当にやるつもりだから、まあいいかとは思い直したが、だからといってあまりに面倒な奴をつけられるのも困るよな。
 とりあえず、顔を見て。
 だが、その前に絶対条件が…。
 「若い女性は不可だなんて、そんな条件つけるの社長くらいなものですよ」
 「ふん。どうせ、俺の顔と金目当ての女狐に化けんだ。ただでさえ、かったりぃのに、ベタベタ媚び売りやがったら気色悪くて、暴れたくなるじゃねぇか」
 「…だからってご自分より年下は特に厳禁だなんて条件、また変な噂たてられますよ」
 「あ?」
 「…ホモだなんて、私まで一時期、変な目で社内の人間に見られたんですからね!」
 「……」
 高木の容姿はハッキリ言って、ブ男の部類に入る。
 年齢は俺より5つしか年上じゃねぇが、横幅は二倍、身長は半分、頭頂部もこのところとみに寂しい。
 見た目も重要視されるアメリカで、この容姿はかなりのペナルティだった。
 まあ、これだけの能力がありながら、俺の秘書でい続けたのもそのせいかもしれねぇな。
 アメリカでは、容姿も重要な要素で、ハゲはともかく…特にこういうデブには厳しいお国柄だ。
 ようは自分の体調管理もできない人間は、能力も疑われるということらしい。
 大統領でさえ見た目も重視されるっていうんだから、徹底してやがるぜ。
 「まあ、いいや、ってことで、俺帰るから」
 エレベーターから降りたところで、まだブツブツ言っている高木を置いて、さっさと踵を返す。
 「って、…顔出して、それだけで帰るなんてありえませんよっ!常務っ」
 ハッと我に返った高木が追いすがって来る。
 それを軽く躱して、ニヤリと笑う。
 「常務じゃねぇって、言ってんだろ。どうせ、就任一日目で大した仕事なんてないんだから、一休みさせ…」
 なんだ?
 振り返った先、なにか黒いモンが…。
 「うわっ!?」
 ガッツーーンッ。
 なんか堅いものが思いっきり顔に当たり、思わず目に火花が散る。
 ていうか、今頬に刺さらなかったか?
 「~~~~~ってぇ」
 頬を片手で抑えたまま、視線を落とせば、なぜか…床に転がる女物の靴!
 …おい、俺の顔にこれが当たったのか?
 まさか、ヒールが刺さったとかそういうんじゃねぇだろうな。
 「………」
 「………」
 「おいっ!俺様の顔面に靴なんて投げつけやがったのは、どこのどいつだ!?」
 カッと頭に血が上ったまま、靴が素っ飛んできた方向へと怒鳴りつけた。





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