FC2ブログ

「百万回の微笑みを愛の言葉にかえて」
第一章 忘却は罪?

百万回の微笑みを愛の言葉にかえて026

 ←昏い夜を抜けて205 →昏い夜を抜けて206
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

つくし司SIDE)

 あたしの言葉で、花沢類が黙り込んでしまった。
 そりゃそうだよね、こんなごくプライベートなこと、突然相談されたって逆の立場だったらあたしだって困る。
 それに、類は道明寺の親友だ。
 いくらあたしの友達でもあるって言ったって、心情的には彼の味方のはず。
 「…それって、かなり深刻な気持ちで言ってるの?」
 「え?」
 静かな口調で言われた言葉は、予想外で。
 「牧野が、それを考え抜いた結論として言ってるなら、俺がどうこう言う問題じゃない。でも、たぶん、いまの牧野は、司のことがプレッシャーになっていて、それからただ逃れたい一心なんじゃないの」
 「……」
 その通りだ。
 前々から考えていたことではある。
 今の道明寺がどんな人かはよくわからない。
 それでも、高校時代の彼とは大きく異なっていることはあたしもなんとなくわかっていたし、心配して病院まで駆けつけてくれたり、メールをやり取りしたりする彼のことは嫌いじゃないと思う。
 でも、でもだよ?
 全然、恋人だった時のことなんて記憶にない。
 それどころか、友達にさえなれる相手だといまだに思えない。
 それは道明寺個人がどうとかいうより、あのとんでもない大金持ちの、…あたしとは世界が全く別の世界の男性で、あの年で大きな会社の重役で、すごい美貌の主で…とかいろいろ、あたしにはあまりに隔たりすぎていて怖気づいていた。
 無理だよ、と思う。
 どうやって、あんな人と付き合えば言い訳?

 あたしの中で男女交際なんて、デートを重ねて微笑み合って、好きという気持ちを少しづつ大きくして、それでいつの日かは結婚…そんなごく普通のものしかイメージにない。
 「…牧野さ、あんたの気持ちわからないでもないよ。俺たちと友達だということも、最近やっと受け入れられたばかりだし。大学や、状況の変わった周囲に馴染むことが精一杯で、恋人がどうとか、司のことまで考えていられないって言うのは俺にだって理解できる。でもさ、それで本当にいいの?」
 「…いいのって」
 「司と付き合ってたのは、まあ、確かに付き合い初めは司が強引だったのもあるけど、別にあいつが無理強いしたんじゃない。あんたもあいつが好きで、あいつとつきあってたわけだよ?」
 「やっぱり…そうなんだ、よね」
 あたしなんかごく普通の女だ。
 そのあたし相手に、道明寺が無理強いする理由もなかったけど、それにしても、自分がああいう男を好きになって…というのが一番信じられなかったのかもしれない。
 いまだに心のどこかで、これは何かの冗談なんじゃないか。
 みんなで担いであたしを笑いものにしようとしてるんじゃないか、なんて。
 もちろん、類や西門さんたち、桜子たちがそんな人たちじゃないって、もう今じゃわかってる。
 でも…。
 「司が帰って来るっていうんで、急に焦りだしたんだろ?」
 「……うん」
 そのとおりだ。
 それでもいままでは、当の道明寺が身近にいないことで、言葉は悪いけど、棚上げ状態っていうか、なるようになれ、みたいな投げやりな気持ちもあって、なんとか許容できていた。
 けれど、もうすぐ道明寺が日本に帰って来る。
 そうしたら、いくらなんでも、恋人だというのなら無視できるはずもない。
 会いに来られたらどうしたらいいの?
 手を繋いだり、キスをしたり、それ以上のことなんて想像もつかない。
 それ以前に、電話でさえやっと慣れてきたのに、顔を見て何を話せばいいんだろう。
 たった一度会った時だって、あの人のあの威圧感や風貌に怖気づいてしまって、上手くしゃべれなかった気がする。
 只者じゃないよ、やっぱり。
 どう考えても、ありえないとしか思えない。
 上目使いで類を見るけど、さすがにそれを訴えかけてもわかってもらえるかどうか。
 「俺からは何もあんたに言ってやることはできない。それはあくまでも司とあんたの問題で俺が口出しするようなことじゃないからだ。でも、司の親友としては、あんたにはもっとよく考えて、あいつにもチャンスをやって欲しい。あいつのこと…ある意味よくわからないうちに切り捨てるのは、いくら憶えていないことはいえ、あまりに卑怯で残酷なことなんじゃないの?」
 「…うん」
 卑怯で残酷…胸にズシーンとくる言葉だ。
 「考えてみな?逆の立場だったらどう?」
 逆の立場?
 それってあたしじゃなくって、道明寺が記憶喪失だったら、ってこと?
 「まあ、それを言うと、あいつの因果応報、昔の報いを受けてるって気もしないでもないけど、それを言ったら話は終わるし」
 「…昔のこと?」
 「んー、それはまたいずれ話すよ。とりあえず、そういうこともろもろ、重要なことを決めるのなら、すべては司が帰ってからにしない?」
 「………うん」
 しぶしぶ頷いたけど、あの顔を目の前にして別れ話なんて、それこそあたしにできるのだろうか。
 戦々恐々、どうやって切り出すかだけでも頭がハゲるまで悩みまくりそうだ。
 かといって、そうだよね、電話で別れ話って言うのはあまりに不義理すぎる。
 …って、別れること前提に考えちゃってるよね、あたし。
 いま類に言われたばかりなのに。
 はあ~。
 それに、類に改めて言われて気が付くのも何だけど、付き合ってたくらいなんだから、あたしも道明寺が好きだったってことなんだ。
 うーん。
 やっぱり類の言う通り、ちゃんと道明寺に向き合って、彼のことをあたしがどういう風に思っていたのか、彼とどういう風に過ごして、どんなことを築いてきたのかもっと知る必要があるんだろうな。
 うん、…それは無視できないや。
 「わかった。とりあえず、今はもう考えない。勝手に決めたりもしないし、道明寺が帰ってきたら、その時にまた考えるよ」
 「そうそう。あんたが一人でよけいなこと考えると、それこそロクなことがないからさ」
 「なによ~、それ、失礼しちゃうわね」
 あたしが叩く真似をするのに、大げさに怖がって、類がちょうど配膳されたデザートで誤魔化す。
 「まあまあ。さ、デザート来たよ、それ食べたら俺に付き合ってくれるんでしょ?」
 ま、仕方ないか。
 この目の前の美味しそうなデザートの前では、なんでも許す。
 「は~い」
 元気に返事を返して、サクッとケーキにフォークを入れた。





類SIDE)
 
 今は司との付き合いについては勝手に考えない…そうは思い決めても最初は中々思いきれなかったみたいで、美術館でも牧野はいろいろ思い悩んでいたみたいだった。
 まあ、趣味じゃないものを見せられて、退屈してたのもあるんだろう。
 そのうち、あまりに横で難しい顔して明後日の方向見られてるのに閉口して、それぞれの絵について講釈してあげたら、興味を示すようになった。
 「へえ?あたしからしたら、この物体はなんなんだって感じだけど、類ってこいうのが好きなんだ?」
 牧野が指し示しているのは、床から突き出た突起物みたいなものに、あっちこちが飛び出した球状の鉄っ線が天井へと向かって伸びている作品のこと。
 正直俺にしてみても、作者の意図通りに見えたことなんて一度もない。
 けれど、だからこそ面白い。
 見た人間によってその印象を変えることが。
 ある人には人生の苦悩に思えるだろうし、ある人には喜びともとれるだろう。
 またある人には、ただ意味のわからない物体にも。
 正反対の事柄やまったく思いもつかぬイメージが、芸術の中に同時に平行して存在し得ている。
 「…いや、面白いとは思うけど、好きって言うより気分転換だね」
 「気分転換?これが??」
 理解不能って顔。
 まあ、牧野は花より団子だからね。
 絵に描いた餅を見るくらいなら、実際に食べたいって人間なのはわかってる。
 苦悩をアートで指し示すくらいなら、口に出して言うだろう。
 まあ、意地っ張りだからどこまで正直に言えるかはまた別問題だけどね。
 ふむふむ、とか言いながら熱心に眺めて、作品の周りをグルグル回っている牧野がおかしい。
 あんた本当に、その作品から何かを感じ取とうとしているの?
 これって、本当は串棒付きのパイナップルなんじゃないか、とか思ってるんじゃない?





◇交流・意見交換 『こ茶子の部屋』へ
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【昏い夜を抜けて205】へ
  • 【昏い夜を抜けて206】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【昏い夜を抜けて205】へ
  • 【昏い夜を抜けて206】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク