FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて209

 ←百万回の微笑みを愛の言葉にかえて028 →百万回の微笑みを愛の言葉にかえて029
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「…えっとね、実はまだ外なんだ」
 『外?』
 つくしが言うその外というのが、よもや本当に単なる比喩ではなく、だだっ広い公園の一角であるなど桜子は思わず、不審げに問い返した。
 キョロロキョロっとつくしが周囲を見渡すと、いつもどおり、数メートルの距離をあけてSPの堀田の姿が見える。
 「その、ほら、電話で脅迫されたじゃない?アパートの方も解約しちゃったし、一応今月一杯はってことになってはいるんだけどね」
 『花沢さんのマンションは?』
 「戻った方がいいのかな」
 正直、つくしは途方にくれていた。
 美也子…美也子だと仮定してだが、彼女の電話の内容からして、つくしが類のマンションで同棲しているのはバレている。 
 バレているどころか、身を引けと言うのだ。
 当然、類のマンションからの退去もその意向の中には含まれていることだろう。
 かといって、アパートに戻ろうにも大半の荷物は処分してしまっていて、そこに戻るには躊躇する。
 結局、つくしの選択肢は多くはない。
 脅迫されているのを無視して類のマンションに戻るべきか。
 山崎の件や嫌がらせのことで極力戻りたいとは思えないアパートに戻るべきか。
 …ホテルや旅館に泊まるには経済的にひっ迫している。
 かといって実家に戻ろうにも、両親は今東北だ。
 確かに2,3日自宅待機せよとは会社から命じられていたが、その2,3日の為に東北に行くのでは交通費もバカにはできない。
 となると、つくしの選択しうる最良の方法とは。
 『うちにいらしてください』
 「え?」
 『私はたしかに今ドイツにいますけど、邸の方には使用人だって残ってますし、先輩が来てくださるのなら大歓迎です。何日でもうちの邸にお泊りになって下さい』
 「…いや、そういうつもりじゃなくってね。申し訳ないけど、進のところに泊めてもらおうかなって。この時間だと進もバイト中だろうから、夕方まで時間潰そうと思って」
 夕方なら、夜勤をしている可能性もある進はともかく、進の彼女もアパートに戻っているだろう。
 もしダメなようだったら、夜まで待つつもりだった。
 仕事中は携帯の電源も切っているだろうが、一応メールをしておいたのでそのうち連絡が来るだろう。
 …天気が良くってよかった。ちょっと寒いけど。
 『まさか。先輩、寒空の下、何時間も公園にいるつもりじゃないでしょうね!』
 「まあ、もっと寒くなるようだったらファミレスかファーストフードにでも入ろうとは思ってるけど、昼の間はねぇ」
 『…先輩、妊婦の自覚あるんですか?』
 「はひ?」
 『体、冷やしてどうすんですっ!?すぐに車で迎えを寄越しますから、その場所から動かないでくださいよっ』






 「あいつに惚れた自分を信じたい。いや、信じてる」
 「ぷっ、自分なんだ」
 司の物言いがあまりに司らしくて、類はつい噴出してしまった。
 女を愛する時も、女自身ではなくって自分を信じると言い切る司がいっそ清々しくて、妬ましい。
 それならば、静を信じきれなかった自分は自分を信じられなかったとでもいうのだろうか。
 いや、自分を信じるも信じないも、あの頃の類に自分自身などというものは存在しなかった。
 まるで鳥の雛が初めて見たものを親鳥だと思うように、妄信的に彼女に執着した。
 離れたら生きていけないとでもいうように縋り付いて、…そして捨てられた。
 別に死ななかったじゃん。
 今はそう思う。
 バカみたいに静に溺れて、バカみたいに何も考えていなかった。
 ただ、そこに彼女がいてくれればそれでいい。
 その一念だったことに気が付く。
 信じるとか、信じないとか、そんな域に達してもいなかったのだ。
 そして、今、類はつくしを信じようとなどしたことがあったか。
 いつもつくしが信じられなくって、いつ彼女が自分を縛る鎖の脆弱さに気が付き逃げ出すかと戦々恐々としている。
 …信じられないのは、つくしではなく自分自身なのかもしれない。
 それを認めてしまえば、結局また再び、過去の過ち…たかが女に捨てられて虚無を彷徨う無為を繰り返さなくてはならなくなるのだろう。
 「…俺が自分を信じなきゃ、誰が俺を信じてやるんだよ」
 お前は自分を信じていないのか?
 司の目が類の心の奥底を突き刺す。
 その司の無心さが、裏切られても自分とその自分が愛した女…つくしを信じていると言い切る司の強さが妙に類の胸を射る。
 ムカつく。
 ありていにいえば、いまの彼の感情はそんなところなのかもしれない。
 自分を…その自分が愛したつくしを信じていると言い切れる司がひどく愚かしくて…妬ましい。
 「じゃあ、そのお前が信じてるんだから、牧野はそんなに上等な女だったんだって?」
 「ああ、俺はあいつ以上に惹かれる人間に出逢ったことはねぇし、たぶんこれからもねぇだろうな」
 「…俺、牧野に会ったよ?」
 「そうらしいな。三条から聞いた。…あきらがいま、あいつに交際申し込んでるってわざわざ俺に言ってきやがった」
 あきらは類にもすでに宣戦布告している。
 よもや司にまで言っているとは思ってもみなかったが。
 「それで?」
 「…その時は、この俺ともあろうものが、心にもねぇこと言っちまったな」
 ただつくしがどうしているか知りたい…それは司の本意でもあり、またそうではなくもあった。
 「心にもないって」
 「会いたいわけじゃねぇって言ったんだよ。けど、いまの俺は違う。牧野に会いたい。今の牧野に会って…」
 「…牧野は今、俺のモノだと言ったら?」
 司の言葉をあえて最後まで聞かずに、途中で遮って、類が爆弾を投下する。
 「は?」
 「牧野は今、俺の女だって言ったら、お前どうするつもり?」





◇交流・意見交換 『こ茶子の部屋』へ
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【百万回の微笑みを愛の言葉にかえて028】へ
  • 【百万回の微笑みを愛の言葉にかえて029】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

まさに迷走!!

素敵なお話を日々ありがとうございます。
毎日ハラハラドキドキ、時に悶々ジレジレと(笑)しながら楽しませていただいております。
凄い…この章、まさに迷走ですね。
私の中でこの物語は巨大なこ茶子ダンジョンと化しておりますが、誘われるまま入り込んでしまった私は只今絶賛迷走中(笑)
司くんの登場やお話の中でまだうやむやにされている妊娠の有無が”早く知りたい!どうなるの!”という気持ちを激しく掻き立て、お話全体に対するジレンマを強くさせているように感じています。
妊娠については桜子ちゃん同様”つくしちゃん何やってるの!”と思いつつも、それがゆえに色々なものがそぎ取られ、つくしちゃんの気持ちが固まってきたのだという視点もあり。
桜子ちゃんとのやり取りで最終的に彼女が何を取るのか、何を最優先するのかをハッキリと口にしましたが、その言葉で”ガンバレ!”という気持ちが一気に湧き上がりました。

類くんもね。
イライラというか焦ってるというか、何かしら戸惑ってる様子がすごくお話から伝わります。
周囲はそれを察していて、本人もある程度はわかっているでしょうに向き合おうとしないでね。
まるで子供の反抗期のように感じる時がありますが、そう思うとなかなか自分や周囲を受け入れられないでいるのも何となくわかります。
流れとして解かしたところに磨きをかけていってるような印象を受けますけども。
解かしては磨いて。
なかなかの試練ではないかと思います。
でもね。
磨いて磨いてつくしちゃんの光を受けて輝いた類くんはきっと素敵でしょうからね。
頑張って乗り越えてほしいですね。

いやぁ~私は司くんビイキなんですが見事にお話にどハマりしております(苦笑)
司くんが涙を呑むのは痛いですけど、私はその時の司くんに男らしさ司くんらしさを見い出すつもり満々でいます。
きっと惚れ直すこと間違いなしでしょう(笑)

ということで今後の展開がとても楽しみで待ちきれない思いでいます(*^_^*)
こ茶子さんは幸せなゴールに向かってお話を綴っておいでだと思いますので今はそのための試練だと思い迷走しながらも最後までお供いたします(笑)
ただどうかご無理だけはなさいませんよう。
影ながら応援しております。
長文失礼いたしましたm(_ _)m

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【百万回の微笑みを愛の言葉にかえて028】へ
  • 【百万回の微笑みを愛の言葉にかえて029】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク