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 結婚2年目。
 司の本拠地NYの地へと移り住んで1年と少し。
 数々の困難をともに乗り越え、遠距離恋愛、お互いに忙しいゆえのすれ違い、さまざまなことがあった。
 それでも、互いへの想いだけを胸に、気が付けば10年。
 そして、星空の下でのプロポーズを得て、今の二人があることに、ありきたりだがつくしは幸せを感じていた。
 なのに…。
 「慰謝料はたんまりと払う。俺と別れてくれ」
 まさか、そんな言葉を突然、司から告げられるとは思っていなかった。
 だから、一瞬何を言われているのかわからず、黙り込んでしまったつくしに司は聞こえなかったのかと、もう一度繰り返す。
 「聞いてっか?六本木にあるマンションはお前の名義に変えておいた。とりあえず、邸にいるのも気まずいだろうから、日本に帰国してそっちの方にいってろよ?」
 「な、なによ、それ!?いったい、なんの冗談よっ!!」
 うわずった声は、もしかしたら、湿り気を帯びていたかもしれない。
 嘘だと思いつつ、司の表情があまりにも真剣だったから。
 「冗談じゃねぇよ、本気だ」
 真っ直ぐつくしを見つめ返す司は、けっして目を反らすことなく、だが、いつでも自信に満ちているこの男の唇がわずかに震えているのをつくしも見逃さなかった。
 とりあえず、なんにせよ、この場は引くしかなく、たとえ問い詰めても言い争いになるだけで、司が突然に突拍子もないことを言い出した理由をそう簡単に話すはずがない。
 「…あんた、本当にそれでいいの?」
 「ああ」
 「ちょっと、考えさせてくれる?」
 頷く司を見ることができず、つくしは二人の寝室を後にした。

 信じられるはずがないっ!
 昨日の夜も、その前の夜も、二人が付き合っていた独身の頃に勝るとも劣らぬ濃密な夜を過ごして、二人の愛をさらに燃え上がらせ、司のつくしへの愛情を確認したばかりだった。
 けれど、思ってみれば、ここ数週間の司の様子は変だった。
 あれほど独占欲が強く、けっして傍を離れさせない男が、突然につくしがかなり前から望んでいた友人…優紀との旅行を許したり、
実家にしばらく泊まってくればいいと勧めたりらしくないことこの上なく。
 かと思えば、元々情熱的な男だとはいえ、ここのところの二人の夜の生活は、つくしが疲労困憊になるほど激しいことも珍しくなくなっていた。
 いくらなんでも新婚当初でないのだから、つくしだって気になってはいた。
 だが、司はこうと思えばいくら問い詰めても言わないところがあるし、いざ、切羽詰ればつくしには正直に何もかも話す男でもあった。
 いつまでも隠し事を続ける男ではない。
 そう思っていた矢先の急転直下の出来事。
 いくらなんでも、『離婚』とは只事ではない。
 口を開けば嗚咽が洩れそうになる自分を自覚しながら、つくしは受話器を取り、姑・楓の秘書西田を呼び出した。

 NY道明寺が一時期、発覚した食品偽装問題で、その被害企業、消費者への賠償でかなり財政的に逼迫した状態であったことはつくしも知っていた。
 その解決策として、あるいは司の政略結婚も視野に入れた展開になることは覚悟もしていたが、司は絶対にそんな理由でつくしを手放したりはしないとことあるごとに
言い聞かせ、実際、すでに今の司に対抗し、結婚した事実上の妻を強引に離婚させるような無茶を押し通すほどの力を持った者はいなかった。
 だが、別の方面から司を窮地に陥らせる事件が発覚した。
 道明寺グループによるインサイダー取引問題。
 司は直接関与していなかった。
 だが、悪いことに独断でその事件に関与していたのは、司のかつての直属の部下で、その部下だけですべてを画策できるようなことではないことから、
司の存在が取りざたされることとなった。
 さらに、楓に始まり、司に受け継がれた独裁的なリーダーシップが、道明寺財閥内外の反感を水面下で買っていたことも、物事を悪い方向へと導いていった。
 ありていに言えば、司は陥れられたのだ。
 当然、裁判で司の関与の有無を争うこととなるが、最悪、実刑を受けることもありえる。
 アメリカは日本人の予想する以上に、インサイダー取引に関して厳罰を科す国なのだ。
 場合によっては死刑もあり得る国で、司が禁固以上の刑を受け、丸裸になることも想定しているのは想像に難くない。
 その結果の結論が…まだ結婚したばかりで、やり直しの機会がいくらでもある最愛の妻との別離であったとしても不思議ではなかった。
 強引で独占欲が強く、嫉妬深くて寂しがりや。
 だが、そんな男である司は、同時にひどく愛情深い男でもあった。
 命に代えてもと愛したつくしの為であったら、自分を闇に突き落としてでも道ずれになどしない。
 …地獄にだって追いかけるって言ってたくせに、自分が地獄に行くときには、置いていくってわけね。
 あまりに、バカバカしくて笑えもしない。
 つくしは、伝い落ちる涙をこっそりと拭った。
 「つくし様、司様の想いをどうか、どうか、ご斟酌ください」
 西田はありきたりの秘書としての忠誠心からではなく、司が幼い時より見守ってきた者としての真心を込めて、つくしに頭を下げた。
 「…ありがとうございます、西田さん。あいつは、いまでは、私が足元も及ばないくらい大きくなった男です。でも、そんな私でもあいつに
絶対に引けを取らず負けないものがあります」
 西田は答えがわかっているのか、表情の変わらない顔でつくしをじっと見返した。
 「あいつを愛すること。あいつと一緒にいたいという気持ち。あいつを守りたい心です。とるに足らない私ですが、それだけが私の真実です」
 真摯な眼差しで照れもせず語るつくしを、西田は慈愛を込めた眼差しで見つめ、そっと再び頭を下げた。

 「話があるの、司」
 執務室で書類を片手に、険しい顔でパソコンを見つめ、時折電話を手にして激しく英語や、フランス語でやり取りしている司が仕事をひと段落させ、一息つくのを見計らってつくしは声をかけた。
 「…決心をつけたか?」
 「ええ」
 諾意だけを伝えると、朝にはあれほど強い視線で自分を見据えていた司が、揺れる眼差しを長い睫に隠し、つくしからたまらず視線を反らす。
 「そ…うか。いつ、邸を出ていくつもりだ?」
 絞り出された声は、司の思惑に相違して、力なく弱弱しいものだった。
 「私、お邸を出ない」
 司は俯けた顔を上げ、癇性に眉間を寄せる。
 「なんだと?お前、昼間、お袋に連絡して、西田に事の次第を聞いたんだろうが?」
 「聞いたよ?なに、あんたの離婚したいって、もしかして私と偽装離婚して、財産を保全したいってわけじゃないよね?」
 ガンッ!と、足で机を蹴り飛ばし、威圧するように司がその場を立ち上がった。
 「ハッ!馬鹿にすんなっ。俺がそんなセコイことすっかよっ!?」
 「そりゃあ、よかった。私も自分が惚れて結婚までした男が、そんなアホな了見持つような男でなくって一安心だよ」
 つくしの真っ直ぐな眼差しを見て、その決心を看取ったのか、司は片手で顔の反面を覆い、つくしから顔を反らした。
 「…下手すっと、禁固の実刑を食らう」
 つくしは溜息を大きく吐き出した。
 「わかるか?お前、犯罪者の女房になっちまうんだよ。俺だけなら別にいい。それが企業の経営者の責任ってやつだ。自分がヘマしたことに、なんの後悔も、不満もねぇ」
 バカ…何が後悔も不満もないだよ。自分がやったことでもないのに、陥れられて、何殊勝なこといってんの。
 内心、つくしは一人ごちる。
 だが、傲慢で我儘に見えて、司にはそんなところもある男だった。
 自分や他人に言い訳をしない。
 負けて負け惜しみを言うようなダサイ男ではなかった。
 「だから、何なのよ」
 「お前まで非難されて、つまはじきにされて、しかも、守ってやるはずの俺が傍にいれないかもしれねぇんだ」
 絞り出された言葉は悲痛だった。
 自分のことよりつくしのことを心配し、傷つけられるつくしに悲鳴を上げている。
 ホント、馬鹿。
 だから、そう言ってやった。
 「…あんた、ばっかじゃないの!?」
 つくしも迷った。
 自分が別れて、司が窮地を脱する方法があるのならば、このまま黙って別れてやるのも愛情なのではないかと考えもした。
 だが、本当に若い頃、子供のような年齢の時から互いだけを見つめ、つくしが司しか見えなかったように、嫌、それ以上に、司にはつくししか見えてこなかった。
 それならば、司がいなければ生きながらに死ぬしかないつくしがいるように、司もまたつくしがいなければ、生きたまま死んでゆくしかないのだろう。
 だったら、ともに死ななければならないというのなら、どうして敢えて、別々の場所で不幸になって死ななければならないというのか。
 たとえ、自分が司のためにならない存在に成り果てたのだとしても、決して自分からは司を捨てない。
 司が真実、自分を愛さなくなるその日まで。
 「あんた、私に父なし子を産ませる気?」
 ハッと司が顔を上げる。
 「…おまっ」
 「言いそびれていたけど、今、3か月なんだって」
 司が息を呑み、目を見開く。
 司の声は、小さくかすれていて。
 「お前…、生むつもりなのかよ」
 「当たり前でしょ?あんたの子を産まなくて、誰の子を産むっていうのよ。たとえあんたが、父親としての義務を果たすつもりがなかったとしても
私の子なんだもん。他の選択なんてあるわけないじゃん」
 下腹を大切そうに両手で押さえながら、つくしは憎まれ口を叩く。
 それでも歩み寄ることができずにいる司に、つくしから近づいて、そっと、冷えたその頬を両手で包み込んだ。
 そして、背伸びをして、羽のような優しいキスを司の唇に落とす。
 顔が近づくにつれて、目を伏せていく司の切れ長の美しい瞳が、つくしを映し出して、切なげに潤む。
 「一緒にいよう。別にあんたの体が傍にいなくったって、心がいてくれれば大丈夫。だって、私、雑草のつくしだ…」
 言い切る前に、司の腕に強く抱き込まれる。
 だが、それでもいつものように骨が軋むほどの強さではなくて、優しい、本当に柔らかい力で。
 「愛してる、つくし」
 黙って、つくしは流れ落ちる司の宝石のような涙を唇で、掬い取る。
 何度も何度も、つくしの心が司に染み入るように。
 「ずっと一緒にいよう。どこにいたって、どんなことがあったって、俺の心はお前の傍に、お前の傍だけにいる。だから、お前も…」
 一緒にいてくれ。
 司の唇がつくしの唇に重なり、徐々に二人の影は一つに溶け合っていった。



(~Fin~)




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じゅり様^^

こんにちは^^

三行半…気に入ってくださって、とても嬉しいです♪
司君もつくしちゃんに惚れぬいているのだとは思いますが、そこまで惚れられれば当然、つくしちゃんだって
惚れまくりますよね^^

二人の幸福を祈りつつ、障害与えまくりのこ茶子でしたw

翔 さま^^

はは、うれしいですよ。
三行半…予想に反して?かなり好評だったようで、拍手お礼でUPした頃から、お褒めの言葉を何人かの
方からいただけました^^
今回通常ブログに下ろした際も、すごい拍手数^^;
続きを読みたいというご意見も、翔さん以外にもいただいて、すごい気分☝☝。
書こうと思えば、書けない話でもないかな?
と、ちょっと思ったこ茶子でした。

すいません、いまのところ、いろいろ抱えているためお約束できませんが、いつか~なくらいで^^;
でも、続きを読みたいと言ってくださってとても喜んでます^^!

たらお様^^

三行半…お気に召したようで嬉しいです^^
意外に?好評だったようで、拍手お礼用にUPした折も、嬉しいお言葉をいただけたお話でした。
長編はかなり頑張ってストーリーを考えているつもりなんですが、小話はまさに思い付き^^;
書き始めて辻褄あってるか、いつも不安なのですが、褒められるととても喜んじゃって、ついつい
調子に乗って次も書いちゃってますwおかげさまで、昨日拍手お礼UPしたばかりなのに、今日の拍手数…930打。あまりの驚きに絶句^^;明日か明後日あたりにまた、小話をUPしますので、よろしくご覧くださいね^^!

私も実はミンホ君最初苦手でした。けっこう独特なお顔をしていますよね。
まあ、でも、私はけっこうドラマを見ているうちに、その俳優さんにハマることが多いので、
最初はいつもそんな?感じであまり、素敵な人だとは思わないんですねぇ。
今はミンホ君、とっても素敵に思えます。
韓国版は本当に、類の出番というか、つくしとの関わり深いですよね。
私も基本的につかつくなので、漫画や日本版だと類とくっ付けたいという気持ちはあまりないのですが、
韓国版を見ていると、すっごく切なくて、類つくに走っちゃいそうです^^;
ジフ先輩(類)切なすぎ~><
おそらく韓国版で書いていたら、私、類つくでやっていましたよw
「シティーハンターinソウル」は母が蔦屋で借りていたのですが(韓ドラはもともと母がはまり、伝染させられてしまいました^^;)、その頃にはすでに漫画・花より男子に戻ってしまって、私ってけっこう一つ穴タイプなので、韓国ドラマに飽きてしまっていたので、見ていなかったり^^;母も借りてきたものの、母の好みが乙女チック?か、ドロドロ系だったため、途中挫折したらしく、どんなだったか不明。どうでしょう?萌えますか?w

たらおさんのコメがないと、とても寂しいです><
無理はいけませんが、たらおさんのコメを夢見つつw
今週も体に気を付けて、適度に!?w頑張ってくださいね!^^!
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