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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて207

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 「…え、あ~、その」
 言葉につまり、つくしはあー、うー、と意味のない唸り声をひたすら繰り返す。
 それだけでもう桜子にも、事の次第が読めてしまい、呆れて大きく溜息を吐く。
 『先輩、子供じゃないんですよ。先日も言ったじゃないですか。タイムリミットあるんだから、現実見ないでどうするんです』
 「…いやね、検査薬、買おうとは思ったんだよ?」
 言い訳じみてはいたが、それでも買おうとして買えなかった経緯や理由をなんとかわかってもらおうと桜子へと言い募る。
 『まあ、先輩が花沢さんに知られたくない気持ちもわかるし、困ってしまったというのもわかりますよ』
 四六時中SPをつけられているのでは、監視されているのと同じで、類に秘密の一つや二つ作ることさえ難しいだろう。
 監視…もしかして、本当に類はつくしを監視しているのかもしれない。
 あのクールな男に、そこまでの執着というものは桜子には想像しがたかったが、これまでの類らしからぬ行動がそれを裏付けている。
 …先輩、本当にどこまでも普通じゃない人たちを惹きつけちゃうんだから。
 一見いたって平凡で、本人も普通の幸せというものを求めているごく小市民的人間のはずなのに、どこまでも波瀾万丈な人生を運命づけられてしまっているのは、どういった運命の悪戯だというのか。
 「それでね、類に知られないように検査薬を手に入れたいんだけど、桜子にお願いできるかな?」
 つくしの話と最終月齢の時期からして、たぶん妊娠していたとしたら現在8週~12週目。
 月齢にして4ヶ月近くになっている可能性がある。
 堕胎するなら22週までは可能だ。
 だが、それにしても週数が増えれば増えるほど母体にも負担がかかる。
 12週までならば、まだ安全に中絶できる可能性も高いが…。
 『先輩、わかってると思いますけど、時間がたてばたつほど、選択肢は狭まって行くんですよ?』
 「…桜子の言いたいことって」
 それ以上は言えなくて、つくしが口籠る。
 だが、桜子まで口を濁すわけにはいかない。
 女にとってこれほどの苦痛があるだろうか。
 そうは思っても、つくしだけではない、これから生まれてくる(かもしれない)赤ん坊の人生にも関わることなのだ。
 『言いにくいことですが、中絶するならせめて12週目までに済ませてしまうべきです。確かに22週まで認められてるようですが、12週目を過ぎれば出産という形になって先輩の体に負担がかかる。もし、妊娠されているとしたら今がギリギリのところですよね?私が帰って来るのを待って、検査という形では…』
 「…生むよ」 
 『……』
 「もし…そうなら、あたしは生むよ」
 決意に満ちた声に、桜子が息を呑む。
 「自分の身さえ自分で守れない不甲斐無い女だけど、もしあたしの元へと来てくれた命なら、あたしの手でそれを奪うことなんてできない」
 『でも、一生のことなんですよ?先輩だけでなく、赤ちゃんだって』
 そして何よりも、ただの赤ん坊などではない。
 あの『花沢』の血を受け継ぐ子なのだ。
 「わかってる。安易に考えてるわけじゃないよ、でもあたしには、自分の都合で人ひとりを殺すことなんてとてもできない」
 『先輩』
 「どんなことをしても、守る。あたしのすべてをかけて育ててゆく。だから、花沢類には知られたくない。お願い、桜子、協力して」
 そんな甘いものではないということは、その世界に生まれながらにいる桜子にはつくしよりよほどよくわかっている。
 だが、類には知られたくないというつくしの言葉…そこに含まれる言外の意味に、つくしと類の関係の一端が見える。
 たとえ世間に認められない関係なのだとしても、愛し愛されてできた末の愛の結晶だと言うのなら、つくしのそこまでの頑なさは何だと言うのだろうか。
 だが、今はそこを責めたて、聞きだすべき時ではない。
 桜子にすべての事情を話す、とつくしは言ってくれたのだから。
 『もう一度、伺いますが、もし妊娠していたとして堕胎する意思はないんですね?』
 「うん」
 『…お勧めできませんが、私が帰国した後、12週目を過ぎたとしてもまだ堕胎は出来ます。今はそう決意されていますが、それでも最後ギリギリまでよく考えてください』
 「…わかった」
 桜子の気持ちはわかる。
 だから、決心は変わらなかったが、今はそう答えた。
 『…すいません』
 「桜子?」
 『先輩のことは気にしていたつもりだったんですが。私も自分のことで一杯いっぱいで』
 桜子の自責の念も深い。
 力になるつもりでいたのに、気が付けば一か月近く。
 つくしに連絡をとることも怠っていた。
 「しょうがないよ。桜子には桜子の生活があるだもん。そんなことで謝らないで?それより、おばあさん大丈夫なの?一時期は大変だったんでしょ?」
 救急車に運ばれるほどの大騒ぎだった。
 桜子にとって、祖母はもはや唯一の身内。
 その心痛もさぞや深かったことだろう。
 「こっちこそごめんね。桜子にはいつも力になってもらっているのに。あたしは何の力にもなれなくって」
 シュンとした気持ちが桜子にも伝わって、その真心が桜子の気持ちを逆に慰める。
 『私の方が連絡しなかったんですよ。先輩のそんな声を聞きたくなかったですし。先輩こそ大変な時なんですから、自分のことだけ考えてください。私の方は財力も人手も十分すぎるほどあるんですからね!』
 「はは…本当だね。ありがとう。でもいつもいつもごめんね」
 『聞き飽きましたよ、先輩のありがとうとごめんねは。本当にそう思っているなら、もう二度と勝手にどこにもいなくならないで下さいね』
 最終的にはそうなる可能性も考えていないわけではなかったから、つくしの胸がドキリと鳴る。
 何を優先するべきか。
 もう二度と、誰も裏切りたくないと思いつつ。
 もしこの胎内に、本当に命が宿っているのなら…。
 「…うん、頑張るよ。桜子」
 『先輩ったら…』
 つくしの真意は伝わってしまったのだろう。
 でも、桜子も今は何も言わない。
 『ところで、先輩、今どこにいるんですか?』






 「…司、久しぶり」
 「おお、わりぃな、急な予定の繰り上げで」
 東京で会うはずだったが、予定の前倒しで、類が東京に戻ってから会うのでは司の後のスケジュールがきついと言うことで、司が類の出張先、香港へと出張ってきた。





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