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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて206

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 『先輩ですか?』
 「…うん、そう。あたし」
 電話の向こうの桜子は、どうやら一人ではないようで、誰かにどこかの外国語で話かけていた。
 …ドイツ語、かな?
 なんとなくてはあったけれど、英語ではないのはわかる。
 「ごめん、取り込み中だった?」
 『いえ、大丈夫です。珍しいですね、先輩から連絡くれるなんて』
 弾んだ声が、つくしからの電話を喜んでいくれているのを正直に伝えてくる。
 …いつもいつも不義理しっぱなしなのに。
 そう思うにつけ、桜子の自分への友情が何にも代えがたくありがたく、どうしてこんなにも思ってくれるのだろうと感謝で一杯になった。
 自分は恵まれている。
 振り返ってみれば、辛いことや哀しいこともたくさんあったけれど、少なくても友人たちには有形無形、多くの物をもらった。
 それは心の安寧だったり、優しさだったり…こうして、歓迎してくれる気持ちだけでつくしの心は軽くなる。
 「…あのね、実は相談があるんだけど」
 『私にですか?』
 「…うん、のってくれる?」
 『もちろんですよ!先輩が私を頼ってくれるなんて、本当に嬉しい』
 「…桜子」
 勇気を出して電話してよかった。
 その勇気は、倉敷老人からの影響が少なくない。
 『…人は一人では生きていけない生き物だ。君が信頼する誰かに相談してみるといい。きっと何か打開策が見いだせるはずだ』
 老人の言葉はもっともなのだ。
 もはや八方塞がりのつくしには、一人でそれを解決する力などなく、またそれをできると思うことこそ傲慢なのだろう。
 タマが言ってくれた言葉。
 『あんたが愛して、あんたを愛してくれる、大切な誰かと一緒に生きるんだよ』
 多くの時を生き多くの苦難を乗り越えてきた人生の先輩たちの言葉は、つくしの心の糧となり、彼女の凝り固まっていた頑なさを窘め、新しい力を与えてくれた。





 『わかりました。…そのことに関してはこちらでも調べてみます。私としてはおそらく、調べてみるまでもなくその電話してきた女は、花沢さんの目下の婚約者だと思いますけどね』
 「…やっぱり、そうかな」
 つくしにもわかっていたことだった。
 『婚約者と言ってもまだ結婚しているわけじゃありませんからね。花沢との力関係を考えれば、もっといい縁談が舞い込めば、あっさり切られる程度の縁です。たぶん、花沢さんやご両親に直接抗議をするようなマネをして、不興を買うことが怖かったんでしょう』
 「……」
 つくしにしてみれば、一方的に悪いのは自分や類で、婚約者の憤りも仕方のないことだと思う。
 『どうせ、先輩のことだから相手の女に申し訳ないとか思ってるんでしょ?』
 ちょうど思ったことをズバリと言い当てられて、二の句が継げずにいるつくしに呆れたような桜子の声がかかる。
 『せんぱい~。嫌がらせをされて相手に同情してどうするんですか!』
 「…そんなこと言ったって、こっちが悪いのは本当のことだし」
 『もうっ。そんな世間一般常識的なことを自分で言っててどうするんですっ。私からすれば、確かに悪いのは花沢さんだし、その相手の女に嫌がらせしたいと思う女の心理は理解できますけど、だからと言ってそれを花沢さん当人にぶつけるのならともかく、弱い立場の先輩に押し付けるのはどうかと思いますよ』
 「うーん」
 弱い強いはともかくとして、類に言えないから自分に…なのだろうし。
 だが、確かにつくしの立場としては、相手の気持ちがわかるからと言って、いまの状況にはほとほと困り果てていた。
 だからこそ桜子に相談したのだが。
 『まあ、とにかく、その女が犯人だとして、花沢さんに相談は?』
 「…出張に行ってるし」
 行っていなかったとして、何をどう切り出せばいいのかわからない。
 『先輩、こう言っちゃなんですが、花沢さんと今のような関係を続ける以上、今回のことがどういう結果になるんであれ、何度でも同じ事態にはなりえますよ』
 「うん、わかってる」
 本当にわかっていた。
 絶対に、このままの状態がいいわけがないと。
 類からの脅迫は…もしかしたら、恥を忍んで友人たちを頼ればなんとかなるのかもしれない。
 だが、契約に縛られていて、そしてそれを自分から裏切ることは仁義に反するという認識がつくしにある以上、契約続行の可否は類に依存するしかなかった。
 彼からもうつくしはいらないと、そう言われなければ彼女からは動けないのだ。
 『…そもそも、先輩があの花沢さんとそんな関係に陥っていること自体が私には信じられません』
 「そうだよね、あたしなんかがね」
 当事者であるつくしですら、いまだに信じられないのだ。
 桜子が信じられなくても仕方がない。
 が。
 『違いますよ。先輩、自己評価が低すぎ。なんで、先輩っていつもそうなんでしょうねぇ』
 「そんなこと言われても」
 桜子の言いたいことがわからない。
 『先輩は、あの道明寺さんを惚れさせて、追い掛け回らせた人なんですよ』
 「…桜子」
 司のことは話題にして欲しくなかった。
 以前のように頑なに彼のことを思い出さないようにという思いは今はもうなかったけれど、そんなことで引き合いにだすようなマネはしたくない。
 『道明寺さんだけじゃありません。美作さんにだって結婚を前提にって交際申し込まれてるんでしょ?』
 「あ~」
 すっかり忘れてたと言ったらあきらに申し訳なさすぎるだろうか?
 だが、正直、いまのつくしは一杯いっぱいで、今あることに全力を傾けることしかできず、他のことに気を回す余裕がなかった。
 『先輩はなぜか、世間で言うハイスペックな男性を惹きつける魅力を持ってる人なんですよ』
 「…なぜか、って言うのはよけいだと思うけど」
 『先輩?』
 「はい、すいません」
 お道化たつもりはなかったのだが、桜子はそうとったようで、電話の向こうの声が怖い。
 『どちらにせよ、今回のことは花沢さんに黙ってるわけにはいきません。わかりますよね?』
 「…やっぱりダメかな?」
 『当たり前です!自分の尻のハエは自分で追っていただかないと、なんで先輩がそのトバッチリ受けないといけないんですかっ!』
 結局、桜子の憤りはそこにつきる。
 「…まあ、あたしのせいでもあるし」
 『また、先輩は…もう、本当に。とにかく、申し訳ないんですけど、私あと1週間はこっち…ドイツにいなきゃならないし』
 「うん、ごめん、忙しい時に」
 今桜子は病を得た祖母の付き添いで、その道の名医がいると言うドイツを訪れていた。
 幸い命に関わるような病ではなかったが、継続的に治療が必要で、どうやらしばらくドイツ在住ということになるかもしれないらしい。
 桜子としてもドイツは幼い頃に過ごした土地。
 馴染も深く、最愛の祖母に付き添うことに否やはない。
 ただ一つの問題は、いまさまざまな苦悩を抱えているつくしの傍近くにいれないことで。
 『とにかく!遅くても再来週までには一度、帰国します。先輩、今度こそ詳しく花沢さんとの間に何があって、今のような状態になってしまっているのか聞かせてもらいますからね』
 今度はつくしから相談したことで、以前のように何も聞かない、というスタンスは辞めたらしい。
 いまさらつくしにしてみても、桜子に詳しいことを言わないでいられるとも思っていなかった。
 「…うん」
 『じゃあ、後は問題は一つだけですね』
 「うん?なんだっけ?」
 はああ、という溜息が聞こえる。
 『先輩、しっかりしてくださいよ。妊娠、結局、どうだったんですか?』





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