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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて204

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 部長・課長クラスのつるし上げから解放されて、つくしが自席へと戻ると、すでに就業時間に入っていたこともあって、一先ず課内の人間からの白眼視は免れた。
 電話の横にあるメモ帳には、
 『頑張って…眞子』
 や、
 『変な嫌がらせなんかには負けないで…かなえ』
などという同じフロアで親しくなった同僚たちの応援メモが残されていて、通りすがりしな課内でもわりと親しくしている戸上などが肩をポンと叩いて微笑んで行ってくれたりもした。
 なにも誰も彼もがつくしを敵対視しているわけではない。
 つくしに悪意ある者もいれば、こうして応援してくれる者もいる。
 そんな彼らの心遣いに心温められながら、とりあえず帰り支度をしかけたつくしへと、電話番をしていた同僚が声をかけてきた。
 「牧野、5番、外線。山田さんだって」
 「あ、はい」
 ざっとパソコンの脇に張り付けてある取引相手や仕事の関係者の名前を確認する。
 山田は2人。
 しかしそのどちらもここのところ手がけている仕事には関係していない。
 わざわざわざわざ電話してくる理由が思い当たらず、つくしはなんだろうと不思議に思う。
 「…はい、牧野です」
 『こんにちは。あなた、まだそこに座っているのね』
 唐突にかけられた言葉に、眉を潜める。
 そこ…というのは、具体的にいま自分が座っている自席の椅子のことで間違いないのだろうか。
 と、言うよりも。
 「あの?どちら様…」
 『私のことは、まあいいわ。あなた、恥ずかしいと思わないの?あなたみたいなどこにでもいる女が、地位も名誉もある男性を誑かして。あなたにお似合いの婚約者もいらしたわけでしょ?』
 つくしの胸の奥をヒヤリと氷が滑り落ちたような冷たい感触がする。
 直感的に、今電話の向こうの女が、自分に対して誹謗中傷のビラをアパートに貼り、会社に送りつけた…あるいはそう命じた女だと確信する。
 山田?…いや偽名に違いない。
 だが、いったい誰なのか。
 『どこに雲隠れしているのかと思えば、よりによってあの人のマンションですって!?図々しいにもほどがあるわよ。せっかく身の程をわきまえるようにって、あの汚らしい住まいにも警告してさしあげたのに。あなたったらちっとも分をわきまえないんですものっ。イライラするわっ』
 ここが会社でなければ、相手を問い詰めたい衝動に駆られながら、両手で握り締めた受話器が汗でぬめる。
 『でも、これで少しは身にしみたでしょ?いいかげん、自分に相応しい場所へお帰りなさいな。これは警告よ』
 警告…なんのだろうか。
 つくしが周囲を慮って反論できないのを、勘違いしているのか、相手の女は意気揚々と傲慢に命じる。
 『すぐにでも、あの人のマンションを出なさい。会社も辞めてしまいなさいな。どのみち、涼しい顔してそのまま居座れるものでもないでしょ?』
 「…もし、できないと言ったら?」

 小さく、ひそやかに問いかける。
 『そんなこともわからないほどバカじゃないわよね?道明寺さんとのことで懲りないくらいに強欲な人だから、言われなくっちゃわからない?』
 「…っ!?」
 『あなたが身を引かないのなら、あなただけじゃない。あなたのご両親やご兄弟、友人知人…あなたに関わる人すべてが困ることになると思うわ』





 
 気が付けばつくしはいつも乗るバスを無視して、トボトボと歩いて来てしまっていた。
 時間も早く、特に急いで帰る必要もなかったから、それで困ることがあるわけでもない。
 それにしても、普段だったらまだまだ会社での仕事に追われ、こんな風に街中を一人歩くことなんて滅多にないことで。
 だが、せっかく時間があっても、とてもじゃないが一人そぞろ歩きを楽しむ気持ちにはなれなかった。 
 「…おや、牧野さんじゃないかね?」
 だから、最初その声が自分にかけられた声だとはわからなかった。
 だが…。
 「これこれ、牧野さん」
 何度も呼びかけられて、やっと目を瞬かせて車道へと目を向ける。
 そこにいたのは、ここ数か月に何度か顔馴染になった老人で。
 「あ、倉敷会長」
 類と食べに入ったフレンチレストランが縁で知り合った、経済界の重鎮の老人だった。
 長大なリムジンの車窓を引きおろし、柔和な笑顔がニコニコとつくしを手招きする。
 「どうしたね?元気ないじゃないか。良かったら、行先まで送ってあげるから、車に乗りなさい」
 老人の言葉と共に車が停車し、お仕着せの運転手が回ってきて、車のドアを開ける。
 「あ、いえ。そんな…。えっと」
 無意識に歩いて来てしまった周囲を見回し、
 「もうすぐ駅なんで。…そのこれから帰るだけですから」
 「まあまあ。いいじゃないかね。この間、紹介した外塚さんもまた君とランチでも一緒したいと言っていたよ」
 「はは…、外塚さんがですか?あたしったら失礼があったんじゃないかってドキドキしてたんですけど」
 人の輪は広がるというが、何かと顔が広い倉敷老人とのことが縁で、雲の上の人ともいえる人たちとつくしの交友の輪も広がっていた。
 もちろん、F4というとんでもないステータスを持つ男たちと浅からぬ縁を結んでいても、その縁を自分の為に利用しようとは思わないつくしのことだ。
 どんなに凄い人と知り合いになろうと、それで何某をなそうとは思わない。
 それがある種の人々に、つくしへの興味をかきたて、あるいは彼女の人柄を好いて何かと声掛けをしてくれるようになっていた。
 それが自然、仕事に繋がることも多く、つくしの業績へも通じていた。
 以前に類が『人の縁こそ力だ』と諭したように、つくしも曲りなりとも社会人としてそれを実感するようになっていた。
 「ま、とにかく、こんなところで立ち話もなんだよ。良かったら恋の悩み以外のことなら何でも聞くから、早く乗りなさい」
 いつまでもこんなところへリムジンが停車していては、他の車の通行も妨害してしまうだろう。
 なんだかんだ言って、セレブと呼ばれる人たちは強引だと呆れながらも、つくしも気さくで快活な老人が好きだった。
 「恋の悩みはダメなんですか?」
 「…失恋ばかりでね。私の方がかえって指南して欲しいくらいだ」
 老人のお道化た冗談に、沈んでたつくしもクスリと笑わされる。
 「…じゃあ、家の近くまでよろしくお願いします」
 「家までじゃないのかね?」
 「はは、思いっきり下町ですから。道が狭くて一度入り込んだら、こんな大きな車じゃハマって動けなくなっちゃいますよ」
 車で送ってもらうことに同意していた。



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~ Comment ~

NoTitle

そうそう倉敷会長・・・先日最初から読み返しをしてて、この人また出てくるだろうなあと思いました。
きっとつくしの力になってくれるでしょうね。
それにしても類のことをあの人って言った女が、婚約者だとつくしにはわからないのでしょうか?
エスカレートする美也子。
類が知ることになるだろうに、婚約解消されるとかは全く思ってもいないのでしょうね。
早くこのタカビーな自己中女にギャフンと言わせてやってほしいです。
類はこの件を知ってどうするのでしょうか?
かなり自分の気持ちに気付いているのに・・・。
もう類はいまいちあてにならないから、総二郎かあきら、会長でもいいよ・・・に助けてほしい。
でも類つくなのは、よ~く分かってますからね。

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