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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて193

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 「契約?」
 総二郎の眉根が寄る。
 驚愕の眼差しで類を見るつくしの顔は、堅く強張り、総二郎を振り返るのを恐れ怯えた。
 …なんで、なんで類っ。
 次に口にする総二郎の問いが怖い。
 「…来いよ、牧野」
 だが、総二郎は類の言葉を不審に思っただろうに、あえてそれを口にせず、先ほどの話題の続きを促す。
 もちろん、総二郎だとて聞きたいことはあった。
 だが、類が「契約」と口にした時の、つくしの驚愕と恐怖に満ちた…一瞬で土気色になった顔色に、その問いかけを胸に留めた。
 バカな奴だ。
 ふいに、つくしへではなく、類への憐れみが総二郎の胸に去来する。
 昔から感情を表に出すのが苦手で、人と接することに不器用だった幼馴染みの不具を思う。
 完璧な外見とステータスの裏側で、欠陥だらけの心と闇を抱き、自分の気持ちからさえも目を塞ぐ愚かな幼馴染み。
 いつの間にか、司を見ていた時と同じ目で自分が類を見ていることに気が付き、それが同じ一人の女に端を発していることの希有な縁を思う。
 大切なら、大切だということを。
 愛しているのなら、愛しているということを。
 失いたくないのなら、失いたくないことを相手に伝えなければ何も手に入るものなどありはしないのだ。
 だが、総二郎だとて、失うことを恐れ、手を伸ばすことに躊躇し、上手く人を愛せたことなどなかった。
 そんな彼が、透かし見える友の不器用さに言ってやれる言葉などあるはずもない。
 ただ、もう一人の友、つくしへの憐憫と親愛から、彼女に力を貸してやるくらいしか、いまの総二郎にやれることがなかった。
 「いいな、牧野」
 なおも言い募ると、迷ったようだったつくしも小さく一つ頷き、それを見届けた類が黙って踵を返す。
 「…じゃあ、西門さん。今日は本当にどうもありがとう」
 「ああ。手習いの日程は後日改めて電話する」
 「うん」
 「…本当にいいのか?」
 念を押す総二郎に、何をいまさら、とつくしがクスッと笑った。
 「強引に習いに来いって言っておいて、何言ってんのよ」
 「じゃねぇよ。本当に類について戻るのかって言ってる」
 「……」
 しばし黙り込んだつくしだったが、それは迷いゆえではなかった。
 人の運命にはいくつもの分岐点がある。
 そして、つくしもまた、その分岐点を何度も通り、何度も選択しての今があるのだ。
 過去を振り返ればあの時ああすればよかった、こうすればよかったと後悔しないことなどまずないが、それでも、そうやって選択し続けた自分の結果…今がある。
 いま、総二郎の差し伸べてくれる手を取らない自分を果たして、未来の自分は後悔しないでいられるだろうか。
 類の手を取ることは破滅にも等しく、昏い闇へとさらに突き進むことを意味する。
 それでも、いま類の手を取らないことは契約を無視することであり、どんなに強要されたものであろうと、それはつくしの選択だった。
 そして、たとえ口約束であろうと、契約を無視することは裏切りだ。
 いまのところ、類はおおむねつくしとの約束を守り、『契約』の範囲を逸脱していない。
 そうであれば、つくしは自ら、その契約を破るつもりはなかった。
 裏切りは罪なのだから。
 もう二度と罪は犯したくない。
 たとえこの友情に熱い友の手をとらなかったことを後悔しようと、裏切りに塗れて生きる苦しみに比べればなんということもないだろう。
 「戻る。…あたしはもう誰も裏切りたくないから」
 それは、誰のことを言っている?
 誰を思い出しての言葉だ?
 そう問いかけたい。
 だが、総二郎が問いかけたのは、
 「…あきらのことはいいのか?」
 「美作さん?」
 「ああ。あいつ、お前に求愛してっだろ?」
 あきらのことを思えば、つくしも申し訳なさに身悶えた。
 こうして類に付き従うことすら、あの優しい人を傷つけ失望させることになるだろうことをわかっていながら、つくしにはどうにもできない。
 だから、せめて。
 つくしはゆるく、首を振る。
 「…美作さんには、ちゃんとあたしの意思を伝えてるよ。どんなことがあっても、美作さんの気持ちに応えることはできない。絶対に」
 「きっついな、お前。そこまであいつに言える女なんてそうそういないぜ?」
 わざとお道化てくれる総二郎に、つくしも微かに笑みを浮かべ、大きく頷いた。
 「本当だね。あたしにはもったいなすぎる人だってことはわかってるよ。でも、ダメなものはダメなの」
 「…なんでって聞いてもいいか?」
 「言わない。だって、それは西門さんに言うべきことじゃないもの」
 苦笑する。
 「その通りだな。じゃあ…」
 司は…、そう言いかけて、やはり口に出すことはできない。
 たとえ言ったところでつくしはもう終わってことだと言い捨てるだろうし、確かにすでに過去のことだった。
 もうそろそろ、つくしも解放されていいはずだ。
 類から逃れられないのなら、せめて司からは。
 だから、話を変えた。
 「いや、…いい。それより俺んとこに手習いにくる約束忘れるなよ」
 「うん、わかった。じゃあ、あたし、行くね。また」
 総二郎に小さく手を振って、つくしは類の消えたエントランスのドアをくぐった。
 ドアは開け放たれたまま、脇には運転手とSPの堀田が控え、類はすでに車内へと消えていた。
 「お待たせしてすいませんでした」
 「いえ、中へどうぞ」
 二人に一礼され、堀田のエスコートで後部座席へと入る。
 中から、やはり類が手を差し出して、つくしを車内へと導いた。
 「…気は変わらなかったんだ?」
 「契約でしょ?あたしはあんたと確かに約束したし、あんたがあたしを裏切らないかぎりはあたしも裏切らない」
 「…どうだろう?逃げたかったんじゃない?本当は」
 「そうだね、たぶん」
 つくしは否定しない。
 「でも、もう二度と、人を裏切ることで罪を負いたくないから、たとえ自分を恥じることがあっても、誰かを裏切って後悔し続ける苦しみを負うよりいい」
 「……」
 つくしの言葉を聞いているのか、聞いていないのか。
 両手を組んだまま、目を瞑った類が、運転席に戻った運転手へと指示を出す。
 「…マンションに行って」
 雨はすでに小雨になっていた。
 だが、雨はまだ長く、今夜は止みそうもなかった。





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ふぅん。

総ちゃんに手を差し伸べられて、その手を取らない女が居るとは!

こ茶子様は凄い。私、このお話は好きじゃないですが、それでも文句言いながら読んでますよ。他人の不幸は蜜の味だからかも、ですが。

こ茶子様は、このお話の「類」のキャラクターについて語っていらっしゃいますが、「つくし」はどんな女性なのでしょう。例えばあきらは、つくしに再会し、何に惹かれて求愛に至ったのかな。

何方かもコメントしていらっしゃいましたがストックホルム症候群だか、いいトシになるまで経験がなく初めての男&セレブライフで下半身にだらしがなくなってるのかよく分かりませんが、類がつくしにしたことは未来に於いて許したり、克服したり出来るようなことなのか、私にはよく分かりません。
子供なんかができた日には、その子が不憫。アダルトチルドレンの自己陶酔と憐憫の果ての「産む」決断ですものね。
桜子に会ってから、どのくらい放ったらかしなのか分かりませんが、今回の妊娠検査はネガティブと思ってます。
それにしてもこの先、類の心を手に入れて、その先にあるのは渡辺淳一先生の世界なのかな。生き恥晒すより心中の方が簡単ですものね。

こ茶子デーで、どんどんお話が読めた時は、どんどんお話が進んで「早く終わってくれるか?」なんて期待していましたが、やっと総二郎が出てきて司はこれからとなると、一体・・・。
「こんなことなら、司君。あの時やっちゃえば良かったね〜」なんて思うのは私だけ、か?

NoTitle

おお、総二郎くんの男気が爆発ですね。^^
原作で見せてくれた本当の良い男ぶりを思い出しました。

つくしちゃんのお人良しぶりには歯がゆさすら感じますが
それがつくしちゃんだと思っています。
高校生時代にはまだ通用したつくしちゃんの一途さが
大人のどろどろした世界でどのように変遷していくのか、
それともさらにパワーアップしていくのか
ハラハラしながらも見守って行きたいです。^^

またの更新を心待ちにしております。

あらら

牧野、強姦された最初の気持ち薄くなってきてません?^^;
自分にどれだけ酷いことされたのか自覚してるのかな?(笑)
やっぱ、何度も抱かれ身体馴染まされたら情もでちゃうのか・・・。
別の物語で強姦未遂でさえ苦しんで、司にすっごい怒ってた牧野と
えらい性格が違いますね^^;はは
このままだと改心した類が得するだけの「やっちゃったもん勝ち」の流れ?

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NoTitle

こんにちは〜こ茶子さん。毎日執筆お疲れ様です。
このお話って状況による制約ー貧富の差とか遠距離恋愛とかーよりも心理面の変化にフォーカスしてるようで他のお話と一線を画して面白いんですけど、この先気になるのは静との関係で。過去類で遊んじゃってたことを静が率直に向き合って反省するのか、類が大人になって流せるのか。これがクリアできればつくしもちょっと楽になりますよね〜頑張ってほしいです。。。総二郎にぶん殴られるところも見てみたいけど、そうすると司が出てくる前にノックアウトで退場になりそう。。

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