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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて190

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 総二郎の一言で、だいぶ解れていたつくしの気持ちが一気に緊張で縮こまり、視線が彼の持つ携帯電話に固定されてしまう。
 まるで、その携帯電話そのものが類であるかのように、伺うことを辞められなかった。
 つくしに一言だけ告げた後、総二郎は類からの電話へと向き直る。
 「ああ、いる」
 『・・・・・』
 「そうだ、よくわかったな」
 『・・・・・』
 「そういえばそうだったか」
 『・・・・・』
 「…って、ちょっと待て。お前、SPつけてたなら、こいつが俺と出くわした時の状況聞いてんだろ!?」
 類の方の話は聞こえないが、総二郎の応答の様子から、類がつくしのことを言ってきているのがわかる。
 固唾を飲んでそのやり取りに注視するつくしに、後ろからそっとホットティのお代わりが差し入れられた。
 「あ…」
 「まだ、電話、続きそうだから、お茶でも飲んで?」
 優しい思いやりに満ちた微笑みが、ホットティの温もりよりもさらにつくしの心を温める。
 総二郎たちの話は気になったが、類の友である総二郎はつくしの友でもあるのだ。
 つくしの意思を無視して、総二郎がつくしを類に引き渡すはずもない。
 案の定、
 「何言うつもりだ」
 眉根を怒らせながら、携帯をつくしへと差し出す真似をして、彼女の意向を伺ってくる。
 …話したくない。
 いまは、彼の声を聞きたくはなかった。
 雨の中、今彼は静とどうしているのだろうと気になった傍ら、類の言葉を聞くのが怖かった。
 何を言われるのだろう。
 何を言おうとしているのだろう、今更。
 真実をつくしに知られて、それでもなお、彼女に言いたい言葉など類にあるのだろうか。
 彼が愛した本物が傍にいるのに。
 憎しみなら彼が重ね合わせたダミーではなく、目の前の本物にぶつければいい。
 愛も憎しみも、何もかも、すべては静に起因し、そこにつくしが入り込む隙間など微塵もなかったはずなだのだから。
 だが、元々好戦的で類に対しても一歩も引いていなかった総二郎の声音が、動揺にか荒ぎ、ひび割れた。
 「…それはまり子さんのこと言ってんのか?俺が牧野に手を出すって?」
 「西門さん?」
 「類っ!てめぇっ」
 「いいよっ、電話、変わるから、貸して」
 聞いていられなくって、つくしが間に割り入る。
 何を話しているにせよ、自分のことが原因で、総二郎にまで迷惑をかけたくない。
 「…牧野」
 「いい。電話にでるだけだし。どの道…逃げてばかりもいられない、でしょ?」
 つくしらしいいいように、溜息を一つ落とす。
 「ああ。ムカつく話だったら切って、着信拒否してやればいい」
 総二郎はいったいどこまでつくしの事情を察しているのだろうか。
 弱った今のつくしには、そんな彼の憐れむ眼差しを、はねのける意気地がない。
 震える手で、つくしは総二郎の手から携帯電話を受け取った。
 そして、耳にあてた彼女に届いた類の声は、どこまでも普通で、なんの疚しさも、謝意も、優しささえもなかった。
 『まだ、俺とあんたの契約は終わってないよ』






 「は?帰る?」
 類との通話を終え、総二郎に携帯電話を返しつつ、つくしは帰る旨を伝える。
 「お休みのところ、突然お邪魔してご迷惑をおかけしました」
 丁寧に祥一郎と愛美に頭を下げるつくしを見やって、総二郎は怒りに声を荒立てた。
 「おいっ。帰るってまさか、類んとこじゃねぇだろうな」
 「…うん。いま、あたし、あそこ意外に帰るところないし」
 実際には、自分のアパートもまだ引き払ってはおらず、総二郎の兄宅に世話になるくらいなら一晩くらい弟のところへ頭を下げて転がり込むことも可能だっただろう。
 だが、もちろん、そういうことではない。
 つくしの体はつくし自身にも自由にならず、犬のように帰れと類に言われれば、帰らないわけにはいかないのだ。
 「うちはいいよ、部屋数はいくらでもあるし。君さえ良かったら、しばらくうちで泊まったらいい」
 総二郎とのやり取りで何事か察したのだろう、祥一郎が口を挟み、愛美も同意する。
 「ええ、そうよ。総二郎君のお友達なら、遠慮しないで。あきら君や…彼女のことつくしちゃんも知ってるかしら。優紀ちゃんという子も泊めたことがあるのよ」
 「え?」
 「愛美さん」
 突然飛び出した名前に、自分のことよりもむしろ驚いて総二郎を見返した。
 「…優紀って、まさか」
 「ああ、その優紀ちゃん」
 「西門さん?」
 つくしの眉根が寄る。
 「誤解すんな。彼女とは今もいい関係ってやつなだけだ。と、言っても、お互い社会人になってそうそう会う機会なんて本来ねぇんだろうけど。いま…優紀ちゃん、俺んとこでお茶教えてるんだよ」
 「……」
 「それもあって、お前を俺んとこに誘った。優紀ちゃん、お前に会いたがってんぞ」





 ピンポーン。
 インターフォンの音に、ハッとつくしが見つめ合っていた総二郎から我に返った。
 「…つくしちゃんのお迎えが来たのかしら」
 「いいよ、愛美さん。俺が追い返すから出なくって」
 勝手に迎えのものを追い払いそうな勢いの総二郎の手に縋り付いて、つくしが首を振る。
 「ホント、大丈夫。今日は帰るから。御礼には改めてお邪魔する」
 「御礼はいいわ」
 「ああ、気にしないで」
 祥一郎たちはともかく、総二郎の方は納得していない。
 「総二郎、決めるのは牧野さんだ。小さな子供じゃないんだから、お前の我を通すわけにもいかないだろう」
 「兄貴…」
 「そのかわり、何かあったらお前が力になってやればいい。力になってくれる誰かがいると思うことで、心強いこともある」
 つくしがその言葉に大いに頷く。
 「そうだよ、西門さん。西門さんがそう言ってくれることがあたしは嬉しい。今も西門さんが変わらずにあたしを友達だと言ってくれて、庇ってくれる…そのことがすっごい力になってくれてるの」
 「…牧野。お前は相変わらず」
 人に頼ることをしないつくし。
 ギリギリまで耐えて耐えて。
 強い女だけど、それだけの女じゃない。
 かつてそれで彼女を失い、後悔した総二郎には思いきれない。
 「大丈夫、無理はしないよ。どの道、このままで無視し続けたって、どうにもならない」
 ほろ苦く笑うつくしは大人になったのだろうか。
 だが、総二郎には、そうして微笑む彼女は、向かい来る運命にうちしがれ、淡く消え失せようとしている灯篭の残り火の儚さのようにも見えた。





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開き直るのか〜類め!!!

今はムカムカするけど、つくしが戻ることで類の本音が少しでもつくしに届いて、絡まった糸が解け始めますよーに!!

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