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「中・短編」
秘密の司君…22話完

何度でも…I love you 15

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 楓の無表情な目が、司を捕え、一瞬だけ眉根を寄せる。
 それに対する司の対応が心配で、つくしはおそるおそる司を振り返った。
 「おばあちゃんっ!!」
 野太い声で可愛らしく歓声を上げ、ベッドから飛び降りた司が楓へと殺到しかけた。
 「ちょっ!点滴」
 焦るつくしの警告に、年に似合わぬ機敏さでタマがとっさに司の体にとりつき、引き留めた。
 だが、人一倍体格のいい男の膂力は、本人の精神年齢に比例しないバカ力で小柄な老女を引きずる。
 「大人しくしないと、針が抜けて血がドバッとでるわよ!」 
 タマの力ではなく、つくしの言葉でガチンと司が固まりなんとか留まった。
 急いでつくしが司の傍らに歩みより、ピーンと引っ張られた点滴の管を直して、点滴ポールを握らせる。
 そして、背中をドンッと一つき。
 「行ってよし!」
 すでに半分後退っている楓に向かって、再び司は猪突猛進。
 喜び勇んだ司が殺到して、飛びついた。
 「おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃん」
 「…むぐ。つ、司さん」
 長身の息子の胸に抱きしめられ、背骨の向きに反った楓も相当テンパっている。
 常には冷徹な鉄の女も、20年近く冷戦状態の息子の大歓迎に、かなり衝撃を受けているようだった。
 はたで見ている分にはかなり滑稽な図で。
 女にしては長身の楓も、さらにデカイ息子の猛攻に、ブルブルと必死で両足で踏みとどまって、その体を引き離そうと両手を突っ張っている。
 「…ぷっ」
 思わず吹き出してしまい、つくしは大焦りで口を抑える。
 「ぐふっ」
 だが、さらに大きく吹き出す声に横を見やれば、顔を引き攣らせ必死で笑うのを堪えている老婆のにんまり顔と視線が合った。
 『…せ、先輩』
 『笑うんじゃないよっ、つくし!』
 おそらく声にだしたらそんなところだろう。
 そのまま放置しておくと、楓の背骨がポッキリ行くか、窒息死を免れないかもしれない。
 「ど、…じゃなくって、司っ。力緩めて!」
 司の腕に取りすがり、必死で引きはがそうととりなすつくしに、逆に引き剥がされまいと司が力を込めて楓に抱き縋りつく。
 「つくしちゃん!司の調子どう?少しは記憶…戻った?」
 楓から遅れること数分後、病室の入り口に立った椿が、母と弟の肉弾戦にギョッと棒立ちになる。
 「つ、椿さん、なんとかなさいっ!」
 「はいっ!」
 息も絶え絶えになり、やや動揺気味ではありながらも、冷静な楓の指示に椿が我に返りった。
 「ごらあああああ、このバカっ!いくら恨み骨頂のお母様が相手とはいえ、生みの母親になんてことしてんのよっ!」
 ガゴッ。
 凄い音がした。
 「お、お姉さん…」
 「いてえええええええ!!」
 思いっきり拳で頭を殴られた司がたまらず楓を解放し、床に懐く。
 両手で頭を抑えて突っ伏している様子から、相当な打撃を受けたらしく…不謹慎ながら、その衝撃で司の記憶が戻ることを一同、わずかに期待した。
 「なにすんだよっ!おばさんっ。絶対絶対、許さないからなあああっ!」
 「「「………」」」





 一応椿の一撃により、司の刹那的衝動は鎮静化したらしく、とりあえず興奮を収めることには成功した。
 楓を「おばあちゃん」呼ばわりした司だったが、普段のババアなどという悪態ではなく、どうやら真剣に祖母と誤認したらしい。
 「…そういえば、お母様のお母様、つまり私たちのお祖母様って、かなりお母様と似てらしたものね」
 母子であればよく似ているのも当たり前で、20年前のうら若き母親の姿と今の姿を重ね合わせるよりは、祖母であると認識する方が簡単だったらしい。
 「…つくしちゃん、このバカにどこら辺まで詳細を話したの?」
 涙目で頭を抑えている司を横目で見ながら、椿がつくしへと尋ねる。
 口を尖らせ、椿を睨みつけている司の頭を濡れタオルで冷やしてやりながら、つくしが引き攣りつつタマへと告げたのと同じ答えを繰り返した。
 「えっと、道明寺が今25才で、昨日、階段から転げ落ちて頭を打ったせいで、大人になっているってことを忘れてるんだよ、という風には説明しました」
 「て、ことは、私やタマさんのことは?」
 「えっと、お姉さんのこととかはまだ説明してないです。そのタマさんのことは…」
 何と言っていいのかわからず、タマを見ると…、
 「あたしのことは、一発で分かったみたいですよ」
 笑ってる顔がわずかに引き攣っていて、けっこう怖い。
 そこは椿も察したのか特には突っ込まずに、さきほどから黙っている楓を振り返った。
 その視線を受けた楓がチラリと一同に視線を配る。
 そして、上目使いで自分たちを観察する変わり果てた息子へと視線を戻した。
 その視線が、思わぬほど優しいことにつくしたちも気が付く。
 出くわした当初こそ、司の猛攻アタックを受け、彼女らしくなくかなり取り乱していたが、一息つけばいつもの怜悧さで、だが、不思議に司を突き放すような行動はとらなかった。
 『とりあえず、お坐りなさい』
 抱き起す楓の仕草は母親のもので。
 表情もいつもより柔らかく、何も知らない司を委縮させたり激高させたりしないよう、感情をセーブしているのが伺える。
 「…おばあちゃんじゃないの?」
 一同の様子に、ある程度自ら察したのか、司が口にする。
 「えっとね、実はその」
 意を決した椿が、いよいよ詳しい説明をするべきと口を開きかける。
 だが、楓がその話に割って入った。
 「私はね、あなたのお母さんの親戚なのよ」
 「「「えっ」」」
 何を言い出すのかと、つくしばかりか、椿やタマまでも楓を注視する。
 「そして、この二人の母親でもあります」
 「……」
 この、はどうやら椿とつくしのことのようで。
 そういえば、昨日の段階で、椿とつくしは姉妹で海外で暮らしていたとかなんとか、そんな話になっていたことをつくしと椿も思い出した。
 楓にそう言ったことを言った本人の椿でさえすっかり忘れていた。
 だが、まだ真実を司に告げてパニックさせるよりも、楓は椿の与太を継続することを選んだようだ。
 「今の段階で、司さんにあれもこれもと告げても理解されるわけがありません。なんといっても本人の意識が5歳児では理解力もたかがしれてるでしょう」
 本人を前に堂々とこのセリフ。
 確かに、年齢さえもが本人の認識より大人になっていることも、かなりの拒絶を引き出したばかりのところだった。
 「今、あなたのお父様もお母様もお忙しくて戻ってくることができません。椿さんもしばらく用事で家を留守にするので、私たちがあなたのことを頼まれました」
 「…頼まれたって」
 「私の下の娘をあなたの元へ置いてゆきます。彼女の言うことを聞いて、一日も早く、その頭の怪我を直しなさい」




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