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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走②

昏い夜を抜けて189

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 総二郎に連れていかれた先、そこはメイプルにほど近いマンションだった。
 場所が場所なのでおそらく億ションだとは思うが、総二郎の持ち部屋かと聞くと、そうではないという。
 「…俺も一応、隠れ家の一つや二つ持ってけど、一応お前も女の端くれだからな。さすがに俺一人のところへ、お前を連れ込むわけにはいかねぇだろ。お前だって、男一人の部屋つーんじゃ、気兼ねあんだろうし」
 総二郎の気の回し過ぎともいえず、つくしは黙って頷いた。
 以前の彼女であったのなら、友人である総二郎を疑うような物言いに同意することはできなかっただろう。
 だが、類や山崎のことがあって、たとえ信頼する相手であっても異性に警戒心というものが必要であることも学んでいた。
 エントランスからインターフォンを鳴らすと、女の声が応答に出る。
 「あ、俺」
 その一言だけで、ロックが外されたらしく、総二郎と連れ立って中ドアへと招き入れられる。
 「…ねえ、もしかして西門さんのカノジョの家?もしそうなら、あたしなんかが伺ったら悪いよ」
 「変に気を使ったりすんなよ。お前なら別に平気」
 「って、言ってもさ」
 そうこう言っているうちにエレベーターも最上階へと到着する。
 どうやら、1フロアすべてを保有しているらしく、広いエレベーターホールから見て玄関は一つだけだった。
 部屋に到着した総二郎が、再び玄関ドアわきのインターフォンを押す。
 すると、応答もせずにいきなり鍵が開けられ、中から総二郎より少し年上の小奇麗な女性が現れた。
 「いらっしゃい、総二郎君。珍しいわね、こんな時間に」
 「まあね。ちょっと、雨に降られちゃって、濡れ鼠なんだ。シャワーと着替え貸してくれる?」
 「別にいいけど。そんなに濡れてないじゃな…あら?」
 総二郎の後ろにいて死角になっていたのだろう。
 女性からはつくしが見えていなかったのだが、少し総二郎が体をズラすと、びしょ濡れのつくしに視線が止って、女性が大きく目を見開いた。
 「やだ、すごいびしょ濡れじゃない。早く、入って入って。いま、タオル持ってくるから待ってて!」
 慌てて、つくしたちを招き入れ、急いで部屋の奥へと戻ってゆく。
 「入れよ」
 「…え、でも。あたし、すごい濡れてるんだけど」
 人様の家に訪問するような恰好ではない自分の姿に、躊躇して、入るのを抗う。
 「だから、来たんだろ?こうしてみると、お前けっこうひでぇな。いったいどういう状況でいりゃ、そんな恰好になるんだよ」
 髪や衣類は水でひどく濡れて、顔や体にべったりと貼りついている。
 そして、転んで強打した膝は擦り剥け、穴が開いたストッキングの隙間からは滲んだ血が渇いてこびりつき、まさに悲惨な有様だった。
 「…下手すると、レイプにでもあったんじゃねぇかと思われんじゃね?」
 「いや、別に衣類に乱れはないつもりだけど。そう、見える?」
 「…うーん。って、まさか、そうなんじゃねぇだろうな?」
 険しい顔で見返され、肩を小さく竦める。
 「ちょっと嫌なことがあって、うかうかしてたら急な雨にやられちゃっただけ。さすがにそういうことあったら、あたしでも普通にしてられないよ」
 「まあ、そうだろうけどよ。でも、お前って変なところでやせ我慢することがあるからな」
 ごく少女の頃から知られている相手だ。
 わかりすぎるくらいにわかられている。
 けれど、逆につくしの方はだいぶ自分を立て直していた。
 こうして他人といることで意地を張り、それが支えとなっていた。
 また、会話していればよけいなことを思いだして、考えなくても済む。
 「…ボウッとしてたら、人にブツかって突き飛ばされちゃったの。雨降ってるのに地面に大の字に転がっちゃって、ちょっとショックだったかな」
 「お前な…」
 「…なんだ、総二郎、カノジョ連れて来てんだって?」
 柔らかな男の声が聞こえて、その後ろからバタバタと先ほどの女性がかけてくる。
 「お待たせ、はい、これでとりあえずざっと水分、拭っちゃって?」
 女と連れ立った男性は、どこか見覚えがある。
 サラサラの真っ直ぐな黒髪と、端正な美貌。
 五月人形を思わせる和風なその面立ちは…。
 「あれ、兄貴もいたんだ。ここしばらく忙しいんじゃなかったっけ?」
 「医者だって人間なんだから、休みくらいあるさ」
 フッと笑って、つくしへと会釈したその顔は、目の前の総二郎によく似ていた。
 「…兄貴って」
 「ああ、西門祥一郎。昔言ったことあっただろ?医者になって家を出た俺の兄貴」





 風呂を使わせてもらい、つくしが祥一郎の恋人の衣類を借りて人心地ついたのち…。
 内科医だという祥一郎につくしの足の手当てを丁寧にしてもらい、改めて互いの自己紹介となった。
 祥一郎は外見こそ総二郎に似ていたが、柔らかい印象の好青年で、実際、性格や雰囲気も総二郎とはかなり違う。
 温厚で物静か、女性に関しても一途なようだった。
 寄り添う女性も柔和で気さくな人で、まだ結婚はしていないけれど、同棲していて、将来を約束しあっている仲だという。
 「いつまでもグズグズしてんなって言ってんだけどな」
 「…仕方ないだろう?俺もまだ医者としてぺーぺーで、とても女房まで養える状況じゃない」
 「そんなこと言って、本当はまだ独身貴族を楽しみたいだけなのよ」
 「愛美!」
 「はは…。でも、男の人って、20才代で結婚を考えてる人って少ないですよね」
 つくしの周囲を見てみても、だいたい男性が結婚を意識しだすのは20才代後半から30才代になってからが大半だった。
 「20才代って言ってたって、けっこう俺とは年離れてるから、ギリギリだぜ?本当は愛美さんに隠れて、浮気しまくってんじゃねぇの?」
 総二郎のタチの悪い言い草に、つくしが焦って愛美の顔を伺う。
 だが、愛美はまったく気にしていないらしく、それどころか楽しそう?に祥一郎へと疑わしげな視線を向けて、あえてプレッシャーを与えた。
 「なんだよ、その目は、愛美。…医者っていうのは、修業期間が長いんだよ。女道楽の総二郎と一緒にするな」
 「本当にね。まあ、確かに今のところ、祥ちゃんを疑うようなマネされたことないし。でも、つくしちゃんの方は相手が総二郎君じゃ、気苦労が絶えないでしょ?」
 「え?あ…いえ」
 どうやら愛美の中では、つくしは総二郎のカノジョということになってしまったらしい。
 からかわれたお返しに、今度は愛美が総二郎の女性関係を突っついてくる。
 「勘弁してよ、愛美さん。そいつ、ただのダチ。俺の女じゃないし」
 「え?そうなの?」
 愛美のビックリしたような顔が、つくしへと確認を求めてくる。
 いろいろ複雑なものを抱えている家の御曹司だ。
 どう答えてよいものか迷っていたのだが、当の本人から否定されて、ホッと大きく頷く。
 「はい。あたし、高校の時の後輩なんです。それで、西門さん…総二郎さんには何かと良くしていただいています」
 「へえ、総二郎がねぇ。そういうカンケイじゃない、女のこと友達だなんて、意外だよ」
 「はは、あたしもいまだに、こんな女タラシの男と友達だなんて我ながら不思議ですもん…あ、すいません、お兄さんにこんなこと言って」
 遠慮のえの字もないつくしの物言いに祥一郎が苦笑を洩らし、総二郎がつくしの頭を掻き交ぜようと手を伸ばす。
 それを察したつくしが、首を竦め、その手を軽く叩き落とした。
 「お、牧野のくせによけるんじゃねぇよ」
 「なによ、それ、牧野のくせに…って、頭さわんなっ!」
 小競り合いになった。
 「仲いいな」
 「仲いいわね」
 半分呆れて、半分微笑ましく、子供のじゃれ合いのような二人を大人二人が見守り、小さく吹き出す。
 「仲良くなんかありません!」
 「…つめてぇな。初めての男に、それってねぇんじゃねぇの?」 
 「ええ?やっぱり、総二郎君とつくしちゃんって…」
 「ふふ、なんか思い出話でもあるのかな」
 思い当たるフシなどないのに、妙に色っぽい流し目をくれてくる男にギョッとつくしが目を見開く。
 どうせまた悪ふざけしようとしているのなんて、目に見えてわかってもいたが、カラかいカラかわれ、そんな昔からの二人の関係を知らない人が聞いたら誤解されそうなセリフだった。
 「何言ってんのよ!また、変なこと言うなっ」
 「え~、だって、俺とつくしちゃんてば、俺のうちの茶室で…」
 『茶をたてたじゃん。俺がお前に茶をたてた初めての男』…と続けようとして、
 RuRuRuRuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRuRuRuRu~。
 「…あ、俺の携帯だわ」
 気が付いた総二郎が、懐を探って、スラックスのポケットから携帯電話を取り出し着信を確認する。
 一瞬、眉根を寄せ、つくしへと視線をくれた。
 「牧野…」
 「え?」
 「類だ」





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NoTitle

ワクワク、ドキドキの展開に毎日楽しみです(^∇^)

NoTitle

つくしにはSPが付いてるから類には居場所がわかってると思ってたけど・・・。
電話で何を言うつもりなのか?
つくしをひどく傷つけて、そのせいで自分も傷ついた類がどうするのか?
こ茶子様、一日一回更新は早く続きが、早く続きがと気がひたすら落ち着きません(笑)
贅沢ですみません。
5歳児の司君も、つくしが可哀そうで気になってるんですけどね・・・。

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このお話が好きすぎて好きすぎてどうしようもありません。。。
更新を心待ちしてます。
大大大好きです!!

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