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「中・短編」
秘密の司君…22話完

何度でも…I love you 10

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 寝るなと言っておいたのに、すぐに小さな寝息が聞こえて来て、つい溜息をつく。
 受け身を取ったために外傷は少なかったものの、それなりに肉体には負担だったのだろう。
 ましてや、記憶を失ってしまうほどに打撃を受けた脳の状態は伺い知ることもできず、眠ってしまった司の髪につくしはそっと触れた。
 「…柔らかい」
 泣くつもりはないのに、自分の声が妙に湿っていて嫌になる。
 指先に触れるコシのあるすべらかな癖っ毛の感触も、無防備に眠る綺麗な顔も、長い睫毛も…すべてが何一つ変わっていないのに、その心だけが大きく変じてしまった。
 どんなことがあってもつくしを愛してる。
 もう二度と忘れたりしないと誓ったその口で、『お前は誰だ』と、再びつくしへを地獄の底へと叩き落とした。
 わかってる。
 司のせいなんかじゃない。
 好きでつくしを忘れたわけでもなければ、忘れたかったわけでもないだろう。
 そう何度も何度も自分を納得させようとした。
 けれど…。
 言っても詮無きことだとわかっていたが、起きている時の司に言うことができないからつい口から零れ落ちてしまう。
 「…思い出してよ、道明寺。あたしのこと、思い出して」
 切ない気持ちとともに滲んできた涙を手の甲でグイッと拭って、両手で頬をパンッと叩く。 
 「よし!」
 今度こそ、タオルを借りるため、つくしは病室を後にした。





 つくしがナースステーテョンを覗くと、時間が時間のせいか、看護師たちは奥まった控室で話し込んでいた。
 看護師と言えど、若い娘たちばかりのせいか、つくしの勤める幼稚園や学生時代の教室を思わせる雰囲気で、世間話に花が咲いているようだ。
 「…よね!もう、あんな素敵な人たちが現実にいるなんて、信じられないっ!」
 「ホント~。あれで、村木先生や、岡崎君とかと同じ性別を持った人間だとか、ありえる?」
 「ないない。もう完全に別種の生き物だわぁ~。あの方たちを見た後でうちの病院の男性陣なんか見たら、もう~恋愛とか結婚とかを考えるのが悪夢みたいに思えるよね!」
 けっこう酷いことを言いあっている。
 しかし…。
 「道明寺さん…カッコ良すぎ」
 「うんうん、素敵だよね。すっごい雰囲気がただものじゃないっていうか、芸能人でもあんなに綺麗な人いないし、スタイル良すぎ」
 「でも、あたし的には完璧すぎて近寄りがたい感じかな。意外~、しのりんはともかく、いっちゃんまで道明寺さんがタイプなんて」
 「ううん、あたしは、西門さん」
 「え~、被った、あたしも」
 「やだぁ、遊ばれちゃいそうじゃない~。あたしは花沢さんだな」
 「西門さんになら、遊ばれてもいい。でも、あたしは美作さんが一押し!」
 「中島ちゃん、甘々系美青年が好みだもんね~」
 話の内容からして、どうもF4のことを話題にしているのではないかと察せられるにいたって、つくしは声をかけるにかけられない状態に陥ってしまった。
 なまじ耳に入れてしまったために、何気なく割り入ることができなくなってしまったのだ。
 …うーん、間が悪かったな。
 別段、いまさら司や友人たちのそういった噂話に何を思うこともない。
 学生時代からしてそうだったし、大人になればなおさらのこと、女性たちの憧憬を集めるステータスを持つ男たちは、注目の的であり、常に話題の中心だった。
 けれど、いくらつくしや当の本人たちが平気でも、私情を挟むべきではない立場の看護師たちにしてみれば、患者やその見舞客の身内に噂話を聞かれるのはバツが悪いだろう。
 そうとなれば黙って立ち去るべきだと思いつつも、けっこう汗をかいて寝てしまった司のことが気がかりだった。
 …どうしよう。もうちょっと待ったら、違う話題にかわるかな?
 明日の朝になれば、お邸から司の入院グッズも届けられるし、場合によっては下の階にある売店でそろえるという手もなくはない。
 …でも、お湯で拭いてあげたいし。
 さすがに水道水で、というわけにもいかないだろう。
 迷っているうちに、話題はかなり歯に衣着せぬものになってゆき、
 「こんなチャンス、滅多にないんじゃない?」
 なんて、下世話なものとなっていた。
 「…え~?チャンスって」
 「ああいう人たちとお近づきなるチャンスなんて、そうそうないってことよ」
 「しのりんは、道明寺さん狙いなんだよね?」
 つくしは立ち去るべきか迷っていたのだが、司の名前にドキッと胸をざわめかせた。
 やだ…これじゃあ、立ち聞きしてるみたいだ。
 聞くまいとすればするほど、まるで根が生えたみたいにその場から足が動いてくれない。
 「ちょうど、担当になれたんだもん。行くっきゃないでしょ?!」
 「やだぁ、道明寺さんはさすがに敷居高くない?」
 「そんなの美作さんや西門さんだって同じじゃない。あの二人はあたり柔らかいけど、みやちゃんや、小川ちゃんも声かけられたんでしょ?」
 美作~、西門~。
 素早すぎる。
 親友の怪我で病院かけつけて、そんなに長い時間滞在していなかったのに、さすがは女好き。
 仕事が早くて、飽きれるより感心だ。
 「花沢さんなんて鼻にもひっかけてくれない感じだし」
 「まあね。道明寺さんもクールだけど、花沢さんとは違って肉食系でしょ?ああいう人ほど、女には熱いんだよね」
 「え~、もしかして遊びじゃなく、本気でアタックするってこと?」
 「あたりまえでしょ?遊ばれて、何の得もないじゃん」
 「まあ、しのりんは病棟でも1番人気でキレイだし、内科棟の伊佐美先生からもラブコールされてるものねぇ」
 「ええ?伊佐美先生って、確か○×付属大学の伊佐美教授の息子さんで、伯父様があの大病院を経営してるとかっていうサラブレッドだよね?しかも、その伯父様のところには子供がいなくって次期経営者とか言われてる人じゃん。次期理事長夫人の座はどうするの?!」
 「関係ないわよ、そっちはそっち。こっちはこっち。それに道明寺財閥夫人の方がずっとすごいと思わない?」
 なんだか、凄い話になってきた。
 看護師も一皮むけば普通の人間だ。
 そうは思うのに、嫌な気持ちが湧き上がってきた。
 やっと、動くような足を叱咤して、踵を返す。
 これ以上ここにいるのが耐え難い。
 気にしなければ何の害もないうわさ話に過ぎない。
 「でも、道明寺さんって恋人いるわよね?さっき、お見舞いに来てた」
 「え?そうなの?どっち?」
 「髪がショートの方じゃない?」
 「いや、ロングの方みたいよ。なんかそんな会話してたし、いま、まだ病室に付き添ってるよね?」
 しほりんと呼ばれていた方の看護師が、クスリと嫌な感じに含み嗤った。
 「じゃあ、楽勝よ。恋人がいたって全然平気」
 「えー?どっかのお嬢様なんじゃないの?」
 「どうだろ?フツーな感じの人だったわよ。たとえお嬢様でも、見た目もアレで、全然道明寺さんと釣り合ってなかったもの。道明寺さんの気さえ引ければ、子供じゃないんだから、恋人だかなんだかしらないけど、そんなの本人の意思でどうだってできるでしょ」
 「かなあ?」
 「それにね、あたし、勝算あるの」
 「ええ?」
 「さっき、あたし、検温に行ったじゃない?」
 「うん」
 看護師たちが乗り出す。
 「噂だと道明寺さんって恋人以外の女は毛嫌いしてるって話だったけど、全然そんな感じじゃなかったもん」




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