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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走①

昏い夜を抜けて174

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 「う、嘘なんてついてない」
 上擦る声が我ながら、嘘臭くって懸命に落ち着こうと唇を舐める。
 だが、そんなつくしに自分の疑念を確信したのか、震えるつくしの体を抱きあげ、類がそのままベッドへとつくしの体を放り投げた。
 類らしからぬ乱暴な行動に、彼の酔いを知る。
 全身から噴出す汗が、恐怖以外の何物でもないと、つくしは自覚していた。
 「違う、本当に、違うの」
 心のどこかで、言い募る無駄を悟りながらも、言わずにはおれない。
 裏切ってない。
 つくしのよすがはそれ以外に何もなかったから。
 フッと嗤う類の顔は、この上なく美しく、だが温かみの欠片さえもなくて、ここのところ身近にあったつくしへの思いやりはまったく消え失せていた。
 腰砕けに後退るつくしを跨ぎ、ズリズリとベッドの上を追いかける類の顔は、まるでネズミをいたぶる猫のようだった。
 「…なに?俺が怖いの?」
 「いや…」
 カチカチと歯の根の合わないつくしは、魅入られたように類の顔から視線を離せなかった。
 どんな逆境にも…。
 かつては司の激怒にさえ立ち向かったつくしだったが、類の冷たい声音が怖くって、彼の放つ怒りの波動に立ち向かう勇気は微塵も湧いてこない。
 気が付けば、いつのまにかつくしの体はベッドヘッドにまで追い詰められ、覆いかぶさる類の唇が再びつくしの頤の下へと埋められ、強引さとは裏腹に、やはり類の手はどこまでも柔らかく、つくしの官能を引き出そうと執拗だった。
 「…ぁ、ダメッ、い、いや…、ぁあッ」
 恐怖を感じているのに、官能の波に飲み込まれそうになってしまう。
 つくしの体を知り尽くした類は巧みで、あっという間に彼女の欲望を燃え立たせてしまう。
 暴れるつくしに対して、類はあくまでも表面的には冷静で、手際よくつくしの抵抗をねじ伏せ、いきなりスカートをめくりあげストッキングの中へと手を差し入れた。
 「…平気、ちゃんと濡れてるから」
 そう言われ、羞恥に全身は燃え立つように熱いのに、なぜか心は冷たかった。
 いつもは、いつのまにか蕩かされてゆく冷たい手の感触が、なぜか厭わしく、恐ろしいものでしかない。
 それはなぜなのか。
 なんなのか、唐突に閃く。
 …ダメ。
 ダメよ。
 つくしの脳裏を貫いたたった一つの感情。
 失いたくない。
 大切な命。
 いま、抱かれるわけにはいかない。
 何も確かな確証などなかったけれど、もしかしたらこの身には小さな新しい命が宿っているのかもしれないのだ。
 頭に血が上った男の暴挙が、その命を摘み取りかねない恐怖が新たに沸き起こり、自分の身に降りかかる被虐への恐怖ではない別の恐れがつくしの抵抗に、更なる力を与えた。
 「やめてっ!いやなのっ!お願いっ、今は、今だけは許してっ!」
 死に物狂いで手足をバタつかせ、体をひねり、いつもとは異なるつくしの様子にさすがの類も何事かを感じ取り、眉根を寄せつつ、つくしから体を離す。
 そのわずかな隙間からなんとかつくいは這い出し、両手でほとんど半裸の状態に肌蹴られた胸元やスカートの裾を手繰り合わせ、全身で類への拒絶を示す。
 その拒絶が、つくしの自分への嫌悪が、類の全身を冷たく冷やした。
 だが、それは冷静さを取り戻す冷たさではなくって。
 熾火のような燻った怒りの片鱗だった。
 …つくしからの完全な拒絶。
 脅迫のもと、無理矢理従わせた時でさえも、結局つくしは類を受け入れていた。
 それなのに、あきらと会ったその後だからと言って、類を拒絶する彼女がいままでになく、ひどく 憤ろしく憎く思えた。
 喜んではいなかったかもしれなかったが、少なくても最近の彼女は、類が触れれば簡単に堕ち、愛撫すれば甘い吐息と官能で可愛く啼くばかりで、抵抗などしなくなっていたのだから。
 時に…彼を愛しているのではないかと錯覚するほどで、二人は二人なりの蜜月を少なくてもここしばらくはずっと過ごしていたはずだったのに…。
 静との再会を前に、つくしに対して距離を置き躊躇していた心が、一気に彼女への執着と…思慕を取り戻し、熱い嫉妬が彼の心を湧き立たせ狂い悶えさせた。
 冷静ではなかった。
 つくしへの慈愛と思いやりが生まれていた心が、嫉妬に冷たく閉ざされてしまった。
 「…そう、そんなに俺に抱かれるのが嫌なわけ」
 まるで周囲の温度が2,3度下がったかのような類の気配と、冷たい声音に、彼の怒りを感じ取り、つくしの顔色が真っ青に変わる。
 「じゃあ、いいよ。…俺は抱かない」
 類の声から完全に感情が消えた。
 「俺は触らないから、あんたが自分でして、俺を愉しませてよ?」





 「え?」
 あまりの類の言葉に、つくしの思考が停止する。
 いま、なんて?
 つくしの想像の中に、類の示唆する行為など当然浮かんだことすらなかった。
 「なに、今更カマトトぶってるわけ?俺と散々いろんなことしてきて、意味くらいわかるでしょ?」
 つくしの戸惑いとは裏腹に、類の声音はあくまでも冷淡で。
 それどころか、彼女の困惑と羞恥を愉しんで、冷酷な遊戯で苛もうとしている。
 「自分でしてって言ってるの。俺がいつも撫でて触って感じさせてることを、自分の手でやりなっていってるんだよ」
 「そ、そ、そんなこと、できるわけないでしょっ!?」
 あまりのことに声を上擦らせ、逆上したつくしの頭は沸騰寸前だった。
 そんなことできるわけない!
 それだけが、つくしの確固たる思いで。
 自分でするということだけでもとんでもないことなのに、それを類の目の前でやれと、この目の前の男は要求してるのだ。
 互いを愉しませる目的や、セックスの興奮を高める歓びのためなどではなく、ただつくしを恥じ入らせ、屈辱に苛むためだけに、それを要求しているのは一目瞭然だった。
 拘束されていない隙に、ベッドから抜け出そうと、急いで離れようとしたつくしの腰に腕を巻き付け、類は彼女を再びベッドへと組み敷いてしまった。
 「いいよ、俺はどっちでも。俺に抱かれるのが嫌だと言うから、代替え案を提案したのに。ちょっと、俺いま酔っていて自制が効かないからさ。確かに、いまあんたを抱くと、酷い抱き方しそうだし、ちょうどいいかもね」





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