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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走①

昏い夜を抜けて171

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 車での移動は類にとっては睡眠時間に同義のもので、窓の外を見たのは本当に偶然だった。
 とてもじゃないが、移動の時まで仕事に追われるなんて、根は怠け者の類には冗談じゃない。
 通り過ぎたカフェのショーウィンドー。
 ガラス越しに見た男女の姿が、見慣れたものだと瞬時に脳裏に閃く。
 「…牧野」
 それにあきらだった。
 あきらとつくしが二人で向かい合って、笑い会う姿に思わぬほどの衝撃を受けた。
 「…停めて」
 「は?」
 発作的に口にした言葉に自分が一番驚いて、とっさにあてた手の甲に歯を立てる。
 「いや、やっぱりいいよ。ごめん、行ってくれる?」
 停められるところを探してスピードを緩めた運転手に再度指示をだし、ズルズルと背中を深く椅子に沈めて目を瞑る。
 …見たくないものを見た。
 そうとしかいいようがない。
 つくしにはあきらともう二人で会うなと言い置いてあったはずだ。
 あきらは彼の親友であり、またつくしの友だということも慮って、類のマンションや彼の目の届く場所で会わせることに関しては大目に見るつもりでいた。
 だが、当然のことながら、今日つくしがあきらと会うことなど露とも知らされておらず、よもや彼女が類との約束を破ってあきらと会っているなどとは思ってもいなかった。
 裏切り…。
 類にしてみればそれに近く、思わぬほどに自分がショックを受けていることが一番ショックだった。
 「…女なんて信じられるもんじゃないって、わかってるのに」
 いつの間にか、つくしを他の女とは違うと買い被っていた。
 裏切りだと思うことがすでに彼女を特別な位置づけにしていたあかしであり、そんな自分を自覚し、憤る。
 いつのまにか、噛みしめた左の手の甲からは、赤い血がわずかに滲み出していた。





 「…あ、ここで」
 結局、つくしは夕食をご馳走になることは辞退した。
 美作家の女性陣が一緒にいるというのならまだしも、あきらと二人っきりというのはいかにもマズイことだと、さすがのつくしにもわかっていたからだ。
 一つには、類と約束したことがある。
 類の言い草は、『俺はあんたをあきらと共有する気はないし、面倒臭いのはごめんだから』というつくし的にはありえない失礼なもので、約束に値するものだとは思えなかったが、それでも約束は約束だった。
 それに、あきらの見合いの件もある。
 その後、あきらの見合いがどうなったのか聞いていなかったが、名のある御曹司のあきらとそうそう二人っきりのディんナーなどスキャンダルの元だという自覚はある。
 それはつくしにとってもよろしくはないことだったが、特にあきらにとってどうマイナスになるかわからない以上、安易にその好意に甘えるわけにはいかなかった。
 「なんだよ、マンションまで送るって」
 「いいよ、タクシー拾うし。美作さん本当はまだ仕事だったんでしょ?」
 カフェ前で押し問答の末に、なんとかお茶の後のデートは回避したつくしが、あきらの全身を見回し、言い当てた。
 キッチリしたチャコールグレーのWの高級スーツ姿のあきらは、いかにも仕事中の装いで、母や妹の無茶に仕方なく引っ張りだされて来たのだろう。
 よくよく見れば、通りの反対側。
 以前に見かけたあきらの秘書が、いかにもな高級車の横に立ち、つくしの視線に気が付いて一礼した。
 「目ざとい奴だな。フツーの女は気が付いても、俺とデートしたくて気が付かないフリするもんなんだぜ」
 「それで言ったら、あたしはフツーじゃないのかもね。美作さんの魅力にも惑わされない…」
 冗談で返したつもりがシャレにならなかったことに途中で気が付いて、口をつぐむ。
 困ったように上目使いで謝罪してくるつくしのそうした態度の方にマイってしまい、怒るに怒れないあきらがつくしの頭を握った拳で軽く小突いた。
 「妙なことで気にすんな。そんなことでへこたれるかよ。かえって闘志が湧くさ」
 「…美作さん」
 「お前が俺と二人でいるのを避けようとするのは、先日あった俺の見合いのせいなのか?」
 「いや、…そんなことはないんだけど」
 「ありまくりだろ?」
 読まれていたとは、バツが悪い。
 「見合いはもちろん、正式に話があった次の日には断った」
 「え?」
 驚くつくしの額に指をあて、ツンと押す。
 「当たり前だろ。お前に交際申し込んでる俺が見合いしてどうする」
 「…いや、そりゃそうかもしれないけど。でも、それとこれとは別でしょ?」
 あきらの結婚はもはや個人のレベルの話ではない。
 企業と企業の利益の追求と提携がそこには大いに含まれているというのに、子供の恋愛のように好き嫌いをさしはさむ余地はないだろう…類と同様に。
 「同じだよ。俺はお前と結婚を前提に付き合いたいと思ってるし、お袋たちもそれに賛成している」
 「え?」
 「知ってるだろ?お袋も妹たちも、お前が気に入っている」
 美作家の女性陣たちのつくしへの好意はありがたくも、十二分にわかっていたし、冗談に紛らせて何度か、あきらの嫁にならないかと誘われたこともある。
 けれどそれはあくまでも社交辞令のもので、本気でないことなどつくしはもちろんわかっているつもりだった。
 それなのに…。
 「冗談なんかじゃねぇぜ、あの人にとっては。あれでけっこう海千山千の連中の中で泳ぎ渡ってきた人だから、世間知らずなんかじゃない。そのお袋が、お前の人柄を見込んでるんだ。お袋が賛成すれば親父も文句は言わない。後は俺とお前、二人の問題だ」
 「…美作さん」
 あきらの気持ちは嬉しい。
 友として、社会人として、たくさん尊敬できるところもある。
 だが、だからと言っていまのつくしには、あきらへの恋愛感情はまったくなかった。
 いや、たとえあったとしてもつくし自身にさえも、自分の進退をどうにもできない状態で。
 そんな彼女を理解しているのか、あきらもあまり強引には出てこない。
 「…たとえ今、お前が類とどんな関係にあるにしても、お前が類といることを望んで傍にいるんじゃなければ、俺は諦めない。わかってると思うけど、俺には類に対抗する力がある。お前が望むなら、俺はたとえあいつと対立することになっても、お前を守るし助ける。もちろん、それは友としての言葉でもあるし、それで俺とどうこうしろってことでもない。それをお前にはちゃんとわかっていてもらいたいんだ」





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